壊死とは
壊死とは、細胞や組織が強い障害を受けて生きた状態を保てなくなり、不可逆的に死んでしまった状態を指します。けが、血流障害、感染、炎症、化学物質、圧迫など、さまざまな外からの強いダメージによって起こります。
日常会話では「組織がだめになること」くらいの意味で使われることもありますが、医療ではもう少しはっきりした意味があります。単に元気がない、弱っているという段階ではなく、その部分の細胞や組織が回復できないレベルまで障害された状態を壊死と呼びます。
壊死は体のどこにでも起こりうります。皮膚や皮下組織でみられることもあれば、骨、筋、内臓、血管の先にある組織などで起こることもあります。障害の場所や原因によって見え方は大きく異なりますが、共通するのは「その部分の組織が生きていない」という点です。
どこでみるのか
壊死は病理学の言葉ですが、臨床でも非常によく出てきます。たとえば次のような場面でみられます。
- 血流が悪くなった部位の皮膚や足趾
- 褥瘡や難治性創傷の壊死組織
- 感染が進行した軟部組織
- 虚血によって障害された骨や関節周囲
- 梗塞を起こした臓器の一部
- 重症の炎症や外傷を受けた組織
リハビリや看護の場面でも、壊死は決して珍しい言葉ではありません。創部の観察、除圧、感染管理、歩行や荷重の調整、生活環境の見直しなど、日常の支援とつながる場面が多くあります。
何をみているのか
壊死をみるときは、単に「黒い」「悪そう」といった見た目だけではなく、その組織がなぜ壊死したのか、どこまで広がっているのか、周囲にどのような影響を与えているのかをみています。
- 色調の変化(黒色、褐色、黄白色など)
- 乾いているか、湿っているか
- 悪臭、滲出液、感染徴候があるか
- 周囲の発赤、腫脹、熱感、疼痛があるか
- 境界が明瞭か、不明瞭か
- 壊死の深さや広がり
- その部位の血流や圧迫の有無
病理学的には、壊死にはいくつかの型があります。代表的には、虚血性の障害でみられやすい凝固壊死、脳や感染巣でみられやすい液化壊死、結核などで知られる乾酪壊死、膵炎などに関連する脂肪壊死などがあります。一般の臨床現場では型の名前をそのまま使わないこともありますが、背景を考えるうえでは役立ちます。
臨床でどうみるか
臨床では、壊死を「局所の問題」としてだけでなく、「全身状態や基礎疾患の結果として起きている現象」としてみることが大切です。たとえば同じ足趾の壊死でも、背景が血流障害なのか、感染なのか、糖尿病や圧迫の影響なのかで対応は変わります。
また、壊死は見た目の問題だけではなく、その先に痛み、感染、機能障害、切断リスク、生活範囲の縮小などを引き起こします。大腿骨頭壊死のように、壊死そのものの時点では症状が目立たず、壊死した部位がつぶれてから痛みや機能低下が出てくる病態もあります。
一方で、創部の壊死では、壊死組織が残っていることで創傷治癒が進みにくくなり、細菌が増えやすい環境になることがあります。そのため、単に傷を保護するだけでなく、血流、感染、圧、栄養、全身状態まで含めた見方が必要です。
評価で何をみるか
評価では、壊死の性状と背景因子の両方をみます。
- 壊死の範囲、深さ、進行速度
- 疼痛の有無と程度
- 出血、滲出液、悪臭の有無
- 周囲組織の炎症や感染の徴候
- 血流障害の有無
- 圧迫、ずれ、摩擦などの局所要因
- 糖尿病、動脈硬化、ステロイド使用、喫煙などの全身要因
創傷では、壊死組織が残っていると深さや本来の創面が正確に判断しにくいことがあります。そのため、壊死組織の状態を見極めながら、必要に応じてデブリードマンを検討し、評価を更新していく視点が重要です。
また、骨壊死のように画像評価が重要な病態では、症状だけではなく、どの範囲に壊死があるか、圧潰が起きているか、関節機能へどの程度影響しているかをみていきます。
臨床でよく出る問題
壊死があると、局所だけでなく生活全体にさまざまな問題が出やすくなります。
- 創傷治癒が進みにくい
- 感染が起こりやすい、または悪化しやすい
- 疼痛や悪臭で生活の負担が増える
- 荷重や動作が制限される
- 歩行能力や移動能力が落ちる
- 入浴、更衣、外出などの日常生活に支障が出る
- 重症では切断や大きな手術が必要になる
特に下肢の壊死では、血流障害と感染が重なると急速に悪化することがあります。創部の変化だけをみていても十分ではなく、発熱、全身倦怠感、炎症反応、循環状態などもあわせてみる必要があります。
起こりやすい要因
壊死を起こしやすい要因には、局所要因と全身要因があります。
- 虚血・血流低下
- 感染
- 強い圧迫や持続的なずれ
- 外傷や熱傷
- 炎症や血管障害
- 糖尿病、動脈硬化、喫煙
- ステロイド使用やアルコール多飲
たとえば骨壊死では、血流障害が重要な要素とされます。特発性大腿骨頭壊死症では、ステロイド使用、アルコール、喫煙などとの関連が知られています。皮膚や足部の壊死では、糖尿病、末梢動脈疾患、圧迫、感染の組み合わせが問題になりやすくなります。
注意したい症状
壊死そのものが静かに進むこともありますが、次のような所見があるときは注意が必要です。
- 皮膚や組織の黒色化、灰白色化
- 急な疼痛の増悪、または逆に感覚低下
- 悪臭や膿性の滲出液
- 発赤、腫脹、熱感の拡大
- 発熱、全身倦怠感
- 歩けない、荷重できない
- 創が急速に深くなる、広がる
また、骨壊死のように初期には症状が目立たず、組織の破綻が進んでから痛みや機能障害が出るものもあります。症状が軽く見えても、背景に進行性の障害が隠れていることがあるため、経過の見方が重要です。
対応の基本
壊死への対応は、「壊死そのものをどうするか」と「なぜ壊死したのかをどう是正するか」の両方が必要です。局所処置だけでは十分でないことが多く、血流、感染、圧、栄養、全身管理を組み合わせて考えます。
- 原因の評価(虚血、感染、圧迫、外傷など)
- 壊死組織の管理
- 必要に応じたデブリードマンの検討
- 感染コントロール
- 除圧や荷重調整
- 血流改善や基礎疾患の治療
- 栄養・全身状態の立て直し
創傷領域では、壊死組織の除去は治癒を進めるうえで重要な選択肢ですが、いつ、どの方法で行うかは全身状態や出血リスク、血流状態をみながら判断されます。壊死があるからすぐに除去すればよいとは限らず、むしろ血流不良が強い場合には慎重な見極めが必要です。
リハビリでは、患部保護、ポジショニング、移乗や歩行方法の調整、装具やフットウェアの工夫、再発予防の生活指導などが重要になります。壊死を起こした部位だけでなく、その人が生活を続けられることを目標に支援していく視点が大切です。
ひとことで言うと
壊死は、血流障害や感染、圧迫などで組織が回復できないレベルまで傷んで死んでしまった状態で、原因評価と局所・全身の両面からの対応が必要です。
関連用語
参考文献・出典
- NCBI Bookshelf: Necrosis Pathology
- 京都大学OCW:病理総論 2. 細胞の損傷、適応と細胞死
- 東京大学OCW:傷害と組織反応,代謝性疾患
- 日本老年医学会:褥瘡治療の実際 ①創を評価する
- 日本皮膚科学会:創傷・褥瘡・熱傷ガイドライン
- 難病情報センター:特発性大腿骨頭壊死症(指定難病71)
- 難病情報センター:特発性大腿骨頭壊死症(指定難病71)