熱傷リハビリ
熱傷リハビリとは、熱傷(やけど)を受けた患者に対して、創傷治癒の促進、関節拘縮や瘢痕拘縮の予防、ADL・QOLの回復を目的とした理学療法・作業療法を中心とするリハビリテーションの総称です。熱傷は皮膚の損傷にとどまらず、深部組織、関節、筋肉にも影響を及ぼし、長期にわたる機能障害や整容的問題を引き起こすため、早期からの計画的な介入が重要です。
臨床では、どう見つけるか、何を評価するか、どう対応するかの3つの視点で整理すると理解しやすくなります。熱傷の深度・範囲、創傷状態、関節可動域、瘢痕形成、ADL能力を一体としてみることが大切です。
熱傷リハビリとは
熱傷リハビリは、熱傷を受けた患者の機能回復と社会復帰を目指すリハビリテーションです。熱傷は受傷直後から瘢痕成熟期まで長期間にわたるため、急性期・回復期・維持期それぞれの病期に応じた介入が求められます。
リハビリの目標は、関節拘縮・瘢痕拘縮の予防、筋力・持久力の維持・向上、ADL能力の再獲得、心理的サポート、職業復帰・社会参加の支援など多岐にわたります。特に顔面・頸部・四肢関節周囲の熱傷では、瘢痕による拘縮が生じやすく、早期からのポジショニングや可動域訓練が不可欠です。
どこでみるのか
熱傷リハビリは、救命救急センター、熱傷専門病棟、一般病棟、外来、回復期リハビリテーション病棟、在宅など、受傷から社会復帰まで幅広い場面で実施されます。
臨床では、受傷直後の急性期から介入を開始し、植皮術後、瘢痕形成期、瘢痕成熟期と段階的にみていきます。また、重症熱傷患者では集中治療室での全身管理中から、呼吸リハビリや体位管理を行うこともあります。
何をみているのか
熱傷リハビリをみるときは、熱傷の深度・範囲、創傷の治癒状態、関節可動域、筋力、瘢痕の性状、疼痛、浮腫、ADL能力、心理状態、整容面の問題をみています。
単に創傷が治るかどうかだけでなく、関節拘縮の発生リスク、瘢痕の肥厚・拘縮の進行度、日常生活への影響、患者の心理的負担まで含めて総合的に評価することが重要です。
臨床でどうみるか
臨床では、熱傷の深度分類(I度、II度浅達性・深達性、III度)、熱傷面積(体表面積の%で表すBSA: Body Surface Area)、受傷部位、合併症の有無を確認します。
- 熱傷の深度と範囲を評価する
- 創傷の治癒過程を観察する
- 関節可動域制限の有無と程度を確認する
- 瘢痕の肥厚・硬さ・色調を評価する
- 浮腫や疼痛の状態をみる
- ADL動作における制限を把握する
- 心理的な問題(不安、抑うつ、PTSD)を確認する
- 栄養状態や全身状態をチェックする
熱傷の深度が深いほど、また関節をまたぐ部位の熱傷ほど、拘縮のリスクが高まります。顔面・頸部・手指・腋窩・膝窩などは特に注意が必要です。
評価で何をみるか
- 熱傷深度:I度、II度浅達性・深達性、III度の分類
- 熱傷面積:9の法則やLund-Browderチャートで評価
- 受傷部位:顔面、頸部、体幹、四肢、手指など
- 創傷治癒状態:上皮化の進行度、感染の有無、植皮の生着状況
- 関節可動域:各関節のROM、拘縮の程度
- 筋力:MMT、握力、持久力
- 浮腫:周径測定、視診・触診
- 瘢痕評価:Vancouver Scar Scale(VSS)、肥厚・硬さ・色調・柔軟性
- 疼痛評価:VAS、NRS、安静時痛・動作時痛
- ADL評価:FIM、Barthel Index、具体的な日常動作の可否
- 心理評価:不安・抑うつ尺度、PTSD症状の有無
- QOL評価:SF-36、Burn Specific Health Scale(BSHS)
- 整容面:顔面の瘢痕、色素沈着、関節変形による外観変化
臨床でよく出る問題
- 関節拘縮・瘢痕拘縮による可動域制限
- 瘢痕肥厚、ケロイド形成
- 慢性的な疼痛、掻痒感
- 浮腫の持続
- 筋力低下、全身持久力低下
- ADL動作の制限(更衣、整容、食事など)
- 心理的問題(不安、抑うつ、PTSD、ボディイメージの変化)
- 職業復帰の困難
- 整容的問題による社会参加の制限
起こりやすい要因
熱傷リハビリで問題が生じやすい背景には、以下のような要因があります。
- 熱傷が深達性II度以上で深い
- 熱傷面積が広範囲(20%以上のBSA)
- 関節をまたぐ部位の熱傷
- 早期リハビリの開始が遅れた
- 不適切なポジショニングや固定
- 感染症の合併
- 栄養状態の不良
- 患者の協力が得られにくい(疼痛、不安、認知機能低下)
- リハビリ実施環境の不備
注意したい症状
- 関節可動域の急速な低下
- 瘢痕の著明な肥厚や硬化
- 強い疼痛や掻痒感の持続
- 創部の感染徴候(発赤、腫脹、排膿、発熱)
- 植皮部の壊死や剥離
- 深部静脈血栓症(DVT)のリスク
- 呼吸機能の低下(胸部熱傷の場合)
- 精神症状の悪化(不眠、フラッシュバック、引きこもり)
これらの症状がみられる場合は、速やかに医師や看護師と連携し、治療方針の見直しやリハビリプログラムの調整が必要です。
対応の基本
対応では、急性期から長期フォローまで、病期に応じた介入を行います。早期からの関節可動域訓練、ポジショニング、圧迫療法、ADL訓練、心理的支援を総合的に実施することが基本です。
- 急性期:適切なポジショニング、早期の関節可動域訓練、呼吸リハビリ、褥瘡予防
- 植皮術後:植皮部の保護と適切な時期からの可動域訓練再開
- 回復期:積極的な可動域訓練、筋力増強訓練、ADL訓練、圧迫療法・装具療法
- 維持期:瘢痕管理(圧迫衣類、シリコンシート)、ストレッチ、QOL向上のための支援
- 心理的支援:傾聴、情報提供、必要に応じて心理士や精神科医との連携
疼痛管理、感染予防、栄養管理も並行して行い、多職種チームで包括的に支えることが重要です。
リハビリの視点
熱傷リハビリでは、「拘縮予防」と「早期離床・ADL獲得」が2本柱です。瘢痕形成は避けられないため、いかに機能的な瘢痕にとどめるか、関節可動域を保つかが鍵となります。
また、熱傷患者は身体的苦痛だけでなく、外見の変化や社会復帰への不安を抱えています。リハビリ専門職は、機能訓練だけでなく、患者の心理面にも配慮し、希望をもって回復に向かえるよう支援する姿勢が求められます。
長期的な視点では、瘢痕が成熟するまで1〜2年以上かかることもあり、継続的なフォローアップと患者教育が欠かせません。
ひとことで言うと
熱傷リハビリとは、熱傷による機能障害を最小限にし、関節拘縮・瘢痕拘縮を予防しながら、ADL・QOLの回復と社会復帰を目指すリハビリテーションです。
関連用語
- 熱傷深度分類
- 瘢痕拘縮
- 植皮術
- 圧迫療法
- Vancouver Scar Scale
- 関節可動域訓練
- ADL訓練
- ボディイメージ
参考文献
- 熱傷診療ガイドライン(改訂第3版) - 日本熱傷学会
- 熱傷診療ガイドライン〔改訂第3版〕 - Minds ガイドラインライブラリ
- 重症熱傷患者に対するリハビリテーション - J-STAGE
- Rehabilitation in adults with burn injury: an overview of systematic reviews - PubMed
- A Narrative Review of Outcomes in Burn Rehabilitation Based on the ICF Framework - PMC
- What score on the Vancouver Scar Scale constitutes a hypertrophic scar - PMC
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