異常筋緊張

異常筋緊張(痙縮・固縮など)

異常筋緊張とは

異常筋緊張とは、筋肉の張りや抵抗の出方が正常とは違っている状態を指します。筋緊張が高くなりすぎる場合もあれば、逆に低くなりすぎる場合もありますが、臨床でよく問題になるのは筋緊張亢進です。代表的なものとして、痙縮、固縮、ジストニアなどがあります。

患者さんの訴えとしては、「手足が突っ張る」「動かしにくい」「力が入っていないのに硬い」「曲げ伸ばしすると引っかかる」「勝手に変な姿勢になる」といった形で表現されることが多く、動作、介助、更衣、整容、歩行、痛みなどに影響します。

どこでみるのか

異常筋緊張は、ただ筋肉を触って硬いかどうかを見るだけでは判断できません。安静にしているとき、他動的に関節を動かしたとき、自分で動こうとしたとき、歩行や起き上がりなどの動作中にどう変化するかをみます。

また、上肢と下肢で出方が違うことも多く、脳卒中後では上肢屈曲パターンや下肢伸展パターンとして目立つことがあります。一方、固縮では上下肢ともに一定した抵抗として触れやすく、歩き方や姿勢全体に影響することがあります。

何をみているのか

異常筋緊張をみるときに大切なのは、「筋肉が硬い」という見た目だけで終わらせないことです。神経学的な筋緊張異常なのか、関節拘縮や筋短縮などの二次的な硬さなのか、痛みや不快刺激に反応して一時的に高まっているのかを分けて考える必要があります。

痙縮は、上位運動ニューロン障害に関連してみられ、素早く伸ばしたときほど抵抗が強くなりやすいのが特徴です。これに対して固縮は、主に錐体外路系の障害でみられ、ゆっくり動かしても速く動かしても一定した抵抗として感じられます。つまり、異常筋緊張をみることは、病変の性質や部位を考える手がかりにもなります。

臨床でよく出る問題

異常筋緊張があると、次のような問題が出やすくなります。

  • 関節が動かしにくい
  • 更衣や整容、移乗で介助しにくい
  • 歩行がぎこちなくなる
  • 足が引っかかりやすい
  • 手が開きにくく、衛生管理が難しい
  • 痛みや疲れやすさが出る
  • 異常姿勢が固定しやすい
  • 拘縮や変形につながる
  • 転倒リスクが高くなる

症状の程度はさまざまで、わずかな突っ張り感として出ることもあれば、関節がほとんど動かせないほど強い抵抗として出ることもあります。日によって変動することもあり、同じ人でも時間帯や体調で印象が変わることがあります。

起こりやすい要因

異常筋緊張の背景には、中枢神経系の障害が関わることが多くあります。痙縮は脳卒中、脳性麻痺、脊髄損傷、外傷性脳損傷、多発性硬化症などでみられやすく、固縮はパーキンソン病などの錐体外路障害でみられやすい所見です。

また、もともとの神経障害に加えて、痛み、皮膚トラブル、巻き爪、褥瘡、便秘、尿閉、尿路感染、装具の不適合、不良姿勢、疲労、精神的ストレスなどが筋緊張をさらに高めることがあります。急に痙縮が強くなったときは、こうした誘因が隠れていないかを確認することが大切です。

評価でみるポイント

異常筋緊張の評価では、次のような点を確認します。

  • 安静時の姿勢や肢位
  • 筋の張り方や左右差
  • 他動運動での抵抗の強さ
  • ゆっくり動かしたときと速く動かしたときの違い
  • 可動域のどこで引っかかるか
  • 痛みの有無
  • 随意運動時の共同運動や異常姿勢
  • 歩行や立ち上がりでの影響
  • 関節拘縮や筋短縮の有無
  • 介助のしやすさ、生活への影響

痙縮では、速く動かしたときに急に「カクッ」と抵抗が出る catch を触れやすく、速度依存性がポイントになります。固縮では、関節可動域の全体にわたって一定した抵抗が続きやすく、鉛管様、あるいは振戦を伴うと歯車様に感じられることがあります。

評価尺度としては、痙縮の臨床評価で Modified Ashworth Scale(MAS)がよく用いられます。ただし、MAS は他動運動への抵抗をみる簡便な指標であり、痙縮そのものを完全に表しているわけではありません。必要に応じて Tardieu Scale や動作観察と合わせてみることが実践的です。

注意したい症状

新たに急に筋緊張が高くなった、これまでより明らかに突っ張りが強くなった、強い痛みを伴う、発熱や意識変化がある、排尿や排便の異常を伴う、急な筋力低下や感覚障害があるといった場合は、単純に「いつもの痙縮」で済ませないことが大切です。背景に感染、尿路トラブル、深部静脈血栓、新たな神経障害などが隠れていることがあります。

また、筋緊張の問題に見えても、実際には拘縮や関節の器質的な硬さが主体であることもあります。無理に伸ばすと痛みや損傷の原因になるため、神経性の抵抗と組織性の硬さを分けてみる視点が必要です。

対応の基本

対応では、まず何がその人の生活で困りごとになっているのかを明確にします。筋緊張そのものをゼロにすることが目標ではなく、痛みを減らす、介助しやすくする、歩きやすくする、装具を使いやすくする、拘縮を予防するといった具体的な目標に沿って考えることが大切です。

保存的な対応としては、ポジショニング、姿勢調整、ストレッチ、関節可動域練習、装具やスプリントの調整、動作練習、不快刺激の除去などがあります。痙縮が強い場合は、ボツリヌス毒素療法、内服薬、髄腔内バクロフェン療法などが検討されることもありますが、医学的治療を行ってもリハビリテーションでの継続的な介入は重要です。

また、急な悪化では便秘や尿路感染、皮膚トラブルなど、治療の前に誘因を取り除くことが有効なことも少なくありません。現場では「硬いからすぐ伸ばす」ではなく、「なぜ今日強いのか」を先に考えることが実践的です。

ひとことで言うと

異常筋緊張は、筋肉の張り方が異常になった状態で、痙縮なら速度依存性、固縮なら一定した抵抗という違いをみながら、生活への影響と背景要因をあわせて考えることが大切です。

関連用語

参考文献・出典


関連記事: 痙縮 / 固縮 / 拘縮 / パーキンソニズム

「い」の用語集へ戻る

Copyright© rehabili days(リハビリデイズ) , 2026 All Rights Reserved Powered by AFFINGER5.