Constraint-Induced Movement Therapy(CI療法)とは
Constraint-Induced Movement Therapy(CI療法:強制使用療法)とは、脳卒中後の片麻痺に対して、健側の上肢の使用を制限し(ミトンなどで覆う)、麻痺側の上肢を集中的に使用させる訓練法です。学習性の不使用(learned non-use)を解消し、脳の可塑性を利用して麻痺側の機能回復を促すことを目的とします。米国で開発され、日本では保険診療として生活再建型短期集中上肢機能外来が整備されています。
どこでみるのか
回復期リハビリテーション病棟・脳卒中外来・リハビリテーション科で遭遇します。臨床現場では、①慢性期の片麻痺に対する集中訓練の選択、②麻痺側の手の不使用が定着した患者の評価、③健側使用を減らす訓練の実施、④在宅復帰後の機能維持の支援、⑤訓練の適応判断(時間・機能の基準)などの場面でCI療法が問題となります。患者訴えは「麻痺側の手が使いにくい」「健側の手だけで済ませている」「もっと手が使えるようになりたい」などで、不使用の実態と適応を判断する視点が求められます。
何をみているのか
着眼点は、①適応の基準(麻痺側の手・指の運動機能が一定以上あること)、②発症からの期間(対象時期の基準)、③健側の使用状況(習慣的な不使用の程度)、④麻痺側の運動機能(関節可動域・随意運動・手指の伸展)、⑤学習・理解・意欲(課題への参加)、⑥安全面(痛み・痙縮・骨折のリスク)、⑦日常生活での使用状況、⑧家族・環境の支援です。CI療法は「集中訓練」であるため、適応判断と安全確保の視点が最重要です。
臨床でどうみるか
具体的には、健側の上肢にミトンなどの制限具を装着し、起床時の大部分を麻痺側の上肢使用に充てる生活制限を設定します。訓練は、麻痺側の上肢を実際の生活課題で使用する「シェイピング(課題を少しずつ難しくする)」を中心に、1日6時間・10日間程度、集中的に構成します。安全性の管理として、疲労・痛み・代償動作(体幹の代償など)を観察し、必要に応じて制限時間を調整します。訓練後の効果は、実際の生活での使用量(Motor Activity Log的な評価)と手指の機能検査で確認します。日本の保険診療では実施条件が定められており、適応判断は医療者側の評価が重要です。
評価で何をみるか
CI療法の評価では、適応・機能・安全を確認します。
- 麻痺側の運動機能 - 手・指の随意運動
- 発症からの期間 - 適応の基準
- 健側の使用状況 - 不使用の程度
- 日常生活での使用量 - 実際の使用頻度
- 痛み・痙縮 - 安全の確認
- 理解・意欲 - 課題への参加
- 環境・家族の支援 - 訓練後の継続
これらは相互に関連します。適応基準を満たすかを早期に判断し、訓練中の安全と効果の両面から制限・課題を調整することが、評価を正確にする核心です。
臨床でよく出る問題
CI療法に関連して臨床で生じやすい問題は以下の通りです。
- 制限具の装着の抵抗 - 不快感・煩わしさ
- 麻痺側の痛み・疲労 - 訓練の負荷超過
- 課題の難易度の不適合 - 達成感の低下
- 日常生活での使用の定着不足 - 効果の持続
- 適応の誤判断 - 基準の見落とし
- 家族・環境の理解不足 - 支援の欠如
これらは相互に影響します。痛みや不快感が訓練への参加を落とし、達成感の不足が意欲を下げ、不使用に戻る悪循環が生じます。課題を適切な難易度に調整し、生活での使用を定着させる工夫を続けることが、問題整理の核心です。
起こりやすい要因
CI療法の効果を左右しやすい背景には以下があります。
- 習慣的な不使用 - 学習性の不使用
- 麻痺の程度 - 残存機能の量
- 発症からの期間 - 適応の時期
- 加齢・合併症 - 回復力への影響
- 痛み・痙縮 - 訓練の制約
- 意欲・心理的要因 - 参加の持続性
これらは重複して効果を左右します。麻痺の程度だけでなく、不使用の習慣と意欲が成果を大きく左右します。機能と心理を組み合わせて捉えることが、判断の鍵です。
注意したい症状
CI療法で見逃せないサインがあります。
- 訓練中の強い痛み - 負荷超過の確認
- 著しい疲労 - 訓練の持続性
- 手指の腫脹 - 肩手症候群の合併
- 制限具による皮膚の問題 - 圧迫の確認
- 意欲の急な低下 - 心理面の確認
- 効果の停滞 - 課題設計の見直し
これらはさらに精査と早期対応に直結します。痛みや腫脹では直ちに訓練の調整を要し、意欲低下では心理面の支援を優先します。訓練前後の状態を毎日確認し、変化を見逃さないことが、安全確保の基本です。
対応の基本
CI療法への対応は、適応・実施・定着の三層で組みます。
- 適応の判断 - 基準・期間の確認
- 集中訓練の実施 - シェイピングの設計
- 安全の管理 - 痛み・疲労の観察
- 効果の評価 - 使用量・機能検査
- 生活への定着 - 家族・環境の支援
- 継続の設計 - 訓練後も続ける形
CI療法は「集中して使う」ことによって脳の可塑性を引き出す訓練であるため、適応判断を崩さず、生活での使用を定着させることが最重要です。訓練終了後も継続計画を持ち、効果を長期的に保つことが、最も重要な実践です。
ひとことで言うと
CI療法とは、健側の使用を制限して麻痺側を集中的に使わせる訓練法で、不使用の解消と脳の可塑性の活用が目的です。適応判断と安全確保を守り、生活での使用定着まで支援することが基本です。
関連用語
参考文献・出典
- 【2026年版】CI療法(CIMT)とは?脳卒中リハビリ最新
- 脳卒中患者の上肢に対するCI療法(constraint‐induced(コクラン)
- CI療法(生活再建型短期集中上肢機能外来)
- 2 脳卒中後の上肢麻痺に対する集中的アプローチ―CI療法―(J-STAGE)
- CI療法におけるシェーピングとトランスファーパッケージ
- CI療法とは|脳卒中の上肢リハビリテーションとしての有効性
関連記事
- 片麻痺とは
- 脳血管障害とは
- Brunnstrom Recovery Stageとは
- FIMとは
- 痙縮とは
- 肩手症候群とは
用語集へ戻る
『し』用語集へ戻る