炎症とは
炎症とは、感染、外傷、化学物質、物理的刺激などの有害な刺激に対して起こる、生体の防御反応です。組織が傷ついたときに、その原因を排除し、傷んだ部位を守り、回復につなげるために起こる反応と考えるとわかりやすいです。
代表的な所見として、発赤、熱感、腫脹、疼痛があり、これに機能障害を加えて「炎症の5徴」として扱われます。炎症は体にとって必要な反応ですが、強すぎたり長引いたりすると、かえって組織を傷めることがあります。
どこでみるのか
炎症は、皮膚、筋、腱、関節、内臓、血管、神経周囲など、全身のさまざまな部位でみられます。日常診療では、傷や感染部位の赤みや腫れとしてみることもあれば、関節炎、腱炎、肺炎、腸炎のように病名の一部としてみることもあります。
リハビリテーションの場面でも、術後の腫脹、オーバーユースによる局所の痛み、関節周囲の熱感、慢性的な組織の刺激など、炎症を背景にした状態は少なくありません。
何をみているのか
炎症でみているのは、「その部位に防御反応が起きているか」と「その反応がどの程度で、どれくらい続いているか」です。具体的には、発赤、熱感、腫脹、疼痛、機能障害の有無をみます。
また、急性炎症なのか慢性炎症なのかも重要です。急性炎症は比較的早く始まり、赤みや熱感、腫れ、痛みがはっきり出やすい反応です。一方、慢性炎症はゆっくり続き、見た目の変化が目立たなくても、内部で炎症が持続していることがあります。
臨床でどうみるか
臨床では、局所の見た目だけでなく、時間経過と全身状態を合わせてみます。たとえば、急に腫れて熱をもって強く痛む場合は急性炎症を考えやすく、長期間続く違和感や腫れ、組織の硬さ、繰り返す症状がある場合は慢性炎症も考えます。
さらに、炎症の原因が感染なのか、物理的な損傷なのか、使いすぎなのか、化学的刺激なのかで対応は変わります。つまり、炎症は所見そのものというより、「何が起きているかを示す反応」として読むことが大切です。
評価で何をみるか
評価では、次のような点を整理してみます。
- 発赤や熱感があるか
- 腫脹や浮腫があるか
- 疼痛の強さと出る場面
- 動かしにくさや機能障害の程度
- 急性に起きたのか、長く続いているのか
- 感染、外傷、過負荷などの原因が考えられるか
- 局所の問題か、発熱や全身倦怠感を伴うか
急性炎症では血流増加や血管透過性の亢進により、発赤、熱感、腫脹が起こりやすくなります。慢性炎症では、古典的な徴候が目立たなくても、炎症が長く続くことで組織障害や機能低下につながることがあります。
臨床でよく出る問題
炎症があると、痛みや腫れによって動作がしにくくなり、日常生活や運動のパフォーマンスが落ちやすくなります。また、痛みを避ける動きが続くと、二次的な筋力低下や関節可動域制限につながることもあります。
さらに、炎症が長引くと、単なる一時的な反応ではなく、組織の修復遅延や慢性的な機能障害の背景になり得ます。慢性炎症は、見た目に強い赤みや熱感がなくても続いていることがあるため、軽く見すぎないことが大切です。
起こりやすい要因
炎症を起こしやすい要因としては、感染、外傷、化学物質、火傷や凍傷などの物理的刺激、過負荷や使いすぎが挙げられます。さらに、長期間の有害刺激への曝露は、慢性炎症につながることがあります。
局所ではケガや摩擦、圧迫、オーバーユースがきっかけになりやすく、全身では感染症や基礎疾患が背景にあることもあります。原因が取り切れない場合、炎症が遷延しやすくなります。
注意したい症状
強い発赤、著明な熱感、急速な腫脹、安静時にも強い疼痛がある場合は注意が必要です。特に、発熱や全身倦怠感を伴う、痛みが急に悪化する、患部が急速に広がるといった場合は、局所の炎症だけでなく感染なども考える必要があります。
また、慢性炎症では症状がはっきりしないまま長く続くことがあります。軽い痛みやこわばり、繰り返す腫れ、動かしにくさが続く場合も、経過を丁寧にみることが重要です。
対応の基本
対応の基本は、まず原因を見極めることです。感染が疑われるのか、組織損傷なのか、使いすぎなのかによって対応は変わります。そのうえで、患部への負担調整、安静と活動量のバランス、疼痛管理、必要に応じた医療介入を考えます。
リハビリテーションでは、炎症が強い時期に無理を重ねないことが大切です。一方で、長引く炎症では、症状の程度をみながら機能低下を防ぐ工夫も必要になります。局所だけでなく、全身状態や生活背景も含めてみることが、炎症を悪化させないための基本になります。
ひとことで言うと
炎症は、有害な刺激から体を守るために起こる防御反応ですが、強すぎたり長引いたりすると、痛みや機能障害の原因になります。
関連用語
参考文献・出典
- 炎症(難病情報センター)
- 5. Inflammation 炎症(東京大学 獣医病理学講義資料)
- Pathology, Inflammation(NCBI Bookshelf)
- Acute Inflammatory Response(NCBI Bookshelf)
- 病理学総論 3. 急性および慢性炎症(京都大学OCW)
- 炎症・感染症(お茶の水女子大学)