外側上顆炎とは
外側上顆炎とは、肘の外側にある上腕骨外側上顆の周囲で、前腕の伸筋群の付着部に痛みが出る状態を指します。一般には「テニス肘」として知られていますが、実際にはテニスをしていない人にもよくみられます。
名前に「炎」とついていますが、現在では単純な炎症というより、使いすぎや反復負荷による腱の変性・微細損傷を含む腱障害として説明されることが多くなっています。特に、短橈側手根伸筋(ECRB)の起始部が関わりやすいとされています。
つまり外側上顆炎は、「肘の外側が痛い病名」というだけでなく、握る・持ち上げる・手関節を反らす動きで負担がかかる腱付着部障害として理解すると整理しやすい用語です。
どこでみるのか
外側上顆炎は、整形外科、リハビリテーション科、スポーツ現場、一般外来などでよくみられます。テニスのバックハンドだけでなく、工具の使用、パソコン作業、料理、育児、荷物の持ち運びなど、日常的な反復動作の中でも起こります。
患者さんの訴えとしては、「ペットボトルのふたを開けると痛い」「ドアノブを回すと痛い」「フライパンを持つとつらい」「握手のような動きで響く」といった形が典型的です。肘そのものの痛みとして始まっても、前腕の外側へ広がるように感じることもあります。
何をみているのか
外側上顆炎でみているのは、単なる「肘の痛み」ではありません。実際には、前腕伸筋群の起始部にどれだけ機械的ストレスがかかっているか、そして握る・持ち上げる・手首を反らす動きで痛みが再現されるかをみています。
特に関わりやすいのは、短橈側手根伸筋を中心とした総指伸筋群の付着部です。物をつかんだり、手首を背屈したり、前腕を回旋させたりする動きが繰り返されると、この部位に負担が蓄積しやすくなります。
そのため、安静時にはそれほど痛くなくても、作業やスポーツの特定動作で痛みがはっきり出ることがあります。臨床では、この負荷時痛の出方が重要な手がかりになります。
臨床でどうみるか
臨床では、まず痛みの場所が本当に外側上顆周囲かを確認します。肘の外側の一点が痛いのか、前腕全体がだるいのか、頚からの放散痛があるのかで見立ては変わります。
また、外側上顆炎では、手関節を反らす動きや握る動きで痛みが誘発されやすく、特に抵抗をかけた手関節背屈や中指伸展で痛みが再現されることがあります。これに加えて、日常生活での「どの作業が痛いか」を聞くことで、実際に負担になっている動きが見えやすくなります。
リハビリでは、肘だけをみるのではなく、手関節の使い方、前腕回旋、肩甲帯の安定性、道具の持ち方、作業量まで含めて考えます。局所の腱障害であっても、上肢全体の使い方が背景にあることが少なくありません。
評価で何をみるか
評価では、次のような点を整理すると実務で使いやすくなります。
- 圧痛部位:外側上顆そのものか、やや遠位の伸筋起始部か
- 誘発動作:握る、つまむ、持ち上げる、ひねる、手関節背屈で痛むか
- 抵抗テスト:手関節背屈や中指伸展で痛みが再現されるか
- 握力:痛みで把持力が落ちていないか
- 生活動作:ドアノブ、瓶のふた、フライパン、パソコン、工具作業など
- 作業量:最近、負荷のかかる動きが増えていないか
- 鑑別:頚椎由来の症状、橈骨神経関連痛、肘関節そのものの病変がないか
外側上顆炎では、画像所見だけでなく、どの動きでどの程度困るかが非常に重要です。痛みが軽くても、仕事や家事で繰り返し使う人では機能障害が大きくなりやすいため、生活背景まで含めて評価する必要があります。
臨床でよく出る問題
外側上顆炎があると、臨床では次のような困りごとが起こりやすくなります。
- 物を強く握れない
- コップややかんを持つと肘の外側が痛い
- ドアノブや鍵の開閉で痛む
- パソコンや工具作業の持続がつらい
- テニスやラケット動作で痛みが強くなる
- 痛みを避けて使い方が変わり、肩や手首にも負担が広がる
とくに問題になりやすいのは、「重い物を持つ」ときだけではなく、軽い物でも反復して持つことや、握ったまま手首を使うことです。そのため、日常では小さな動きの積み重ねが症状を長引かせることがあります。
起こりやすい要因
外側上顆炎は、前腕伸筋群への反復的な過負荷で起こりやすくなります。代表的なのは、握りながら手首を反らす動き、前腕をひねる動き、道具を繰り返し使う作業などです。
背景としては、テニスのフォーム不良やラケット設定の問題、工具の反復使用、手作業の多い仕事、加齢に伴う腱の変性、肩や前腕の筋機能低下などが関わります。特に30〜50代に多いとされますが、年齢だけで決まるわけではありません。
また、肘だけの問題に見えても、肩の安定性不足や前腕・手関節の過剰使用が続くと、局所の負荷が増えやすくなります。つまり、原因は「肘そのもの」だけに閉じていないことも多いです。
注意したい症状
外側上顆炎らしく見えても、次のような所見がある場合は別の病態も考える必要があります。
- しびれが強い
- 前腕の広い範囲にだるさや灼熱感が続く
- 安静にしていても強い痛みがある
- 外傷後から急に強い痛みが出た
- 握力低下が著しい
- 首の動きで症状が変わる
たとえば、橈骨トンネル症候群や頚椎由来の症状では、外側上顆炎と似た部位に痛みが出ることがあります。圧痛の位置、しびれの有無、神経症状の分布などを丁寧にみることが大切です。
対応の基本
対応の基本は、痛みを悪化させている負荷を見直しつつ、腱に耐えられる力を少しずつ戻していくことです。単に安静にするだけではなく、どの動作がどれだけ負担になっているかを整理することが重要です。
- 痛みを強める反復動作を一時的に減らす
- 握り方や道具の使い方を見直す
- 必要に応じてアイシングや消炎鎮痛薬を用いる
- 前腕伸筋群のストレッチと段階的な筋力練習を行う
- カウンターフォースバンドやサポーターを補助的に使う
- 肩や手関節を含めた上肢全体の使い方を調整する
リハビリでは、急に強い負荷の筋トレを始めるより、まず痛みが許容できる範囲で前腕伸筋群の負荷管理を行い、徐々に耐久性を上げていく考え方が実際的です。症状が長引く場合でも、すぐに手術というより、保存的対応の積み重ねが基本になります。
ひとことで言うと
外側上顆炎は、肘の外側に付く前腕伸筋群の腱付着部に負担がかかって起こる、使いすぎ型の腱障害です。握る、持つ、ひねる、手首を反らすといった日常動作で痛みが出やすく、負荷調整と段階的な運動療法が対応の基本になります。
関連用語
参考文献・出典
- NCBI Bookshelf: Lateral Epicondylitis (Tennis Elbow)
- AAOS OrthoInfo: Tennis Elbow (Lateral Epicondylitis)
- Merck Manual Consumer Version: Lateral Epicondylitis
- Cleveland Clinic: Tennis Elbow (Lateral Epicondylitis)
- NHS: Tennis elbow
- PMC: Lateral epicondylitis: New trends and challenges in treatment
- PMC: Lateral epicondylitis of the elbow