黄色靭帯骨化症とは
黄色靭帯骨化症とは、背骨の後方にある黄色靭帯が骨のように硬くなり、厚みを増して脊髄や神経を圧迫する病気です。胸椎に多くみられますが、胸腰移行部を中心に、脊柱のさまざまな部位で起こることがあります。
進行すると、しびれや筋力低下だけでなく、歩きにくさや転びやすさ、日常生活のしづらさにつながります。指定難病の一つで、単なる腰痛や足のしびれとして見過ごされないことが大切な病気です。
どこでみるのか
黄色靭帯骨化症は、主に胸椎でみられることが多い病気です。特に胸椎から腰椎の境目あたりで問題になりやすく、脊髄が圧迫されることで下肢の症状が前面に出やすいのが特徴です。
臨床では、整形外科、脊椎外科、脳神経外科、リハビリテーション科などでみることが多く、下肢のしびれ、こわばり、脱力、歩行障害、間欠跛行などをきっかけに評価されます。
何をみているのか
この病気でみているのは、黄色靭帯の骨化そのものだけではなく、それによって脊髄や神経がどの程度圧迫され、どのような神経症状が出ているかです。画像で骨化の位置や大きさを確認しつつ、実際に症状と一致しているかをみていきます。
また、胸椎の病気であっても、症状としては足のしびれ、筋力低下、歩行のぎこちなさ、こわばりなど、下肢や歩行に関わる問題として現れることが少なくありません。そのため、局所の画像所見と全身の動きの両方を合わせて考える必要があります。
臨床でどうみるか
臨床では、まず「歩きにくさ」や「しびれ」の背景に脊髄圧迫がないかを考えます。初発症状としては、下肢の脱力、こわばり、しびれ、腰背部痛、下肢痛がみられ、痛みが目立たない場合もあります。
進行すると、数百メートル歩くと休みたくなる間欠跛行が出たり、さらに重くなると歩行困難に至ったりします。感覚障害や筋力低下のために、つまずきや転倒の危険が高まり、在宅生活や外出に影響しやすい点も重要です。
評価で何をみるか
評価では、次のような点を整理してみます。
- 下肢のしびれや感覚の鈍さ
- 下肢の筋力低下や脱力感
- 歩行速度、歩幅、ふらつき、転倒リスク
- 立位保持や姿勢調整のしやすさ
- 間欠跛行の有無
- 膀胱直腸障害の有無
- CT、MRI、X線での骨化と脊髄圧迫の確認
特に大切なのは、画像で骨化があるだけでなく、それが現在の神経症状の原因になっているかを見極めることです。画像所見、自覚症状、身体所見を合わせて判断することが基本になります。
臨床でよく出る問題
よく出る問題は、感覚障害と筋力低下のために、立っていると不安定になる、膝が急に折れそうになる、歩いている感覚が乏しい、といった歩行や姿勢の問題です。これにより、屋内外の移動や階段、外出が難しくなりやすくなります。
また、進行性の病気であるため、今できている動作が将来も同じように保てるとは限りません。そのため、症状だけでなく、今後の進行を見越した生活調整や転倒予防も臨床上の大きなテーマになります。
起こりやすい要因
原因ははっきりわかっていませんが、遺伝的要因、加齢、肥満、糖尿病、カルシウムやビタミンD代謝の異常、全身的な骨化傾向などが関わる可能性があるとされています。
また、他の脊柱靭帯骨化症を合併することもあり、症状の原因が一か所だけとは限りません。そのため、頚椎や他の脊椎病変も含めて全体像を確認することが大切です。
注意したい症状
足のしびれやこわばりが徐々に強くなる、歩くと休みたくなる、転びやすい、脚に力が入りにくいといった症状は注意が必要です。さらに、歩行困難が進んだり、排尿・排便のしづらさが出たりする場合は、神経圧迫が強くなっている可能性があります。
痛みが目立たないまま進行することもあるため、「痛みが少ないから軽い」とは限りません。しびれや歩行の変化が続く場合は、脊髄症状として丁寧に評価することが大切です。
対応の基本
対応の基本は、画像検査で骨化と脊髄圧迫の状態を確認し、症状の強さと日常生活への影響を踏まえて治療方針を決めることです。保存的には、安静、消炎鎮痛薬、痛みが強い場合のブロックなどが行われます。
一方で、神経症状が強い場合や進行している場合には、手術で骨化部を除去し、神経の圧迫を減らす治療が検討されます。リハビリテーションでは、感覚障害や筋力低下に応じた歩行練習、姿勢調整、転倒予防、環境調整を行い、症状の進行や生活機能の変化に合わせて支援していくことが重要です。
ひとことで言うと
黄色靭帯骨化症は、背骨の黄色靭帯が骨化して脊髄を圧迫し、しびれや歩行障害を起こす進行性の病気です。
関連用語
参考文献・出典
- 黄色靱帯骨化症(指定難病68)(難病情報センター)
- 068 黄色靭帯骨化症(厚生労働省)
- 黄色靱帯骨化症(指定難病68)Q&A含む解説(難病情報センター)
- Ossification of the ligamentum flavum(PMC)
- 感覚障害を呈した黄色靭帯骨化症に対する理学療法(J-STAGE)
- 靱帯骨化症(前縦靱帯、後縦靱帯、黄色靱帯)(札幌秀友会病院)
- 胸椎黄色靭帯骨化症(東京脊椎クリニック)