肩関節周囲炎

肩関節周囲炎とは

肩関節周囲炎とは、一般に中高年にみられる肩の痛みと動かしにくさをまとめて指すことが多い言葉です。日常的には「五十肩」と呼ばれることもあり、特に明らかな外傷がないのに、肩が痛くなって上がりにくくなる状態として知られています。

ただし、肩関節周囲炎は厳密な単一病名というより、肩の周囲に起こる疼痛と可動域制限を含む臨床的な呼び方として使われることがあります。その中でも、痛みとともに自動運動だけでなく他動運動も制限されるタイプは、癒着性関節包炎(いわゆる凍結肩、frozen shoulder)として説明されることが多いです。

そのため、臨床では「肩関節周囲炎=すべて同じ病態」とは考えず、実際にはどの程度まで関節包のこわばりがあるのか、他の肩疾患が隠れていないかを見分けることが大切です。

どこでみるのか

肩関節周囲炎は、整形外科、リハビリテーション科、一般外来、接骨・整体領域など、肩の痛みを扱うさまざまな場面でみられます。特に、40〜60歳前後の人が「服を着るときに痛い」「髪を結べない」「背中に手が回らない」「夜にズキズキして眠れない」と訴えるときに疑われやすい病態です。

リハビリでは、単に肩の角度だけを見るのではなく、洗髪、更衣、整容、上の棚に手を伸ばす、後ろポケットに手を入れる、寝返りをうつといった日常動作の中で見えてきます。肩そのものの問題として始まっていても、痛みが続くことで使わなくなり、さらに動かなくなるという悪循環になりやすいのが特徴です。

何をみているのか

肩関節周囲炎でみているのは、単なる「肩の痛み」ではありません。実際には、痛みの強さ動かせる範囲自分で動かしたときと他人が動かしたときの違い、そしてどの方向に制限が強いかをみています。

凍結肩に近い病態では、肩関節を包む関節包が厚く・硬くなり、関節が滑らかに動きにくくなります。そのため、はじめは痛みが目立ち、次第に可動域制限が前景に出てきます。臨床では、特に外旋の制限が早くから目立ち、その後に外転、内旋、屈曲といった動きも制限されやすくなります。

ここで大切なのは、痛みのせいで動かせないのか、それとも関節包の硬さによって実際に動かないのかを分けて考えることです。

臨床でどうみるか

臨床では、肩関節周囲炎をみるときに、まず痛みが先か、可動域制限が先かを確認します。典型的には、最初に肩の痛みが出て、その後に徐々に動きが悪くなっていきます。夜間痛が強く、寝返りや着替えで痛みが増し、そのうち「痛いから動かせない」だけでなく「そもそも動かない」に変わっていく流れがよくあります。

また、よく知られる経過として、freezing(痛みが強く増悪していく時期)frozen(痛みはやや落ち着くが硬さが目立つ時期)thawing(徐々に動きが戻ってくる時期)の3段階で説明されることがあります。ただし、全員がきれいにこの順番どおり進むわけではなく、時期や症状の強さには個人差があります。

リハビリでは、「固いからとにかく伸ばす」という発想だけではうまくいかないことがあります。痛み優位の時期に強引な運動をすると、かえって防御的な緊張が高まりやすいため、時期に応じた見方が必要です。

評価で何をみるか

評価では、次のような点を整理すると実務で使いやすくなります。

  • 痛みの部位と性質:肩の外側、上腕外側、夜間痛の有無、安静時痛の有無
  • 可動域:屈曲、外転、外旋、内旋のどこがどれだけ制限されているか
  • 自動運動と他動運動:両方とも制限されているか
  • 終末感:痛みで止まるのか、硬い感じで止まるのか
  • 日常生活動作:洗髪、更衣、結帯動作、就寝時の姿勢、上方リーチ
  • 肩甲帯の代償:肩甲骨を過剰に持ち上げていないか
  • 他疾患の除外:腱板断裂、石灰沈着性腱炎、変形性関節症、頚椎由来の症状など

肩関節周囲炎では、関節可動域の制限が重要ですが、それだけでは不十分です。肩を上げる角度が少し改善していても、洗髪や結帯動作ができなければ機能的にはまだ困っていることがあります。角度と動作の両方をみることが大切です。

臨床でよく出る問題

肩関節周囲炎では、日常生活の中で次のような問題が起こりやすくなります。

  • 夜間痛で眠りにくい
  • 服の着脱や下着の操作がしづらい
  • 洗髪や整髪で腕が上がらない
  • 背中に手が回らず、結帯動作が難しい
  • 高い所の物が取れない
  • 痛みを避けて肩を使わなくなり、さらに硬くなる

特に問題なのは、痛みのために動かさなくなることです。安静にしすぎると可動域制限が進みやすく、逆に無理に動かしすぎると痛みが悪化しやすいので、そのバランス調整が臨床では難しいところです。

起こりやすい要因

肩関節周囲炎は、明確なきっかけがはっきりしないことも多い一方で、いくつか関連しやすい背景があります。代表的なのは、40〜60歳前後、女性、糖尿病、甲状腺疾患、肩の外傷や手術後、そして肩を長く動かさない状態です。

また、軽い肩痛があったあとに「痛いから動かさない」期間が続くと、可動域制限が進みやすくなります。脳卒中後や骨折後など、二次的に肩を使いにくくなったケースでも、凍結肩のような経過をたどることがあります。

ただし、年齢相応の肩痛すべてが肩関節周囲炎というわけではありません。同じ「肩が痛い」でも、腱板病変や頚椎由来の症状が背景にあることも少なくありません。

注意したい症状

肩関節周囲炎らしく見えても、次のような所見がある場合は別の病態も考える必要があります。

  • 外傷後から強い筋力低下がある
  • 急激に激痛が出た
  • 発熱や強い炎症所見がある
  • しびれや放散痛が強く、頚部運動で悪化する
  • 他動運動は比較的保たれているのに自動運動だけ極端に悪い
  • 安静時痛が非常に強く、全身状態も悪い

たとえば、腱板断裂では自動挙上が弱い一方で、他動では比較的動くことがあります。逆に凍結肩では、自動も他動もどちらも制限されるのが典型です。また、頚椎由来の神経根症では肩そのものよりも頚部の動きや上肢への放散痛が手がかりになることがあります。

対応の基本

対応の基本は、痛みのコントロール可動域の維持・改善を、その時期に合わせて進めることです。痛みが強い時期には、まず疼痛を少し落ち着かせて「動かせる土台」をつくることが重要です。痛みが強いのに強引なストレッチを続けると、かえって防御的に硬くなりやすくなります。

  • 痛みが強い時期は無理のない範囲で動かす
  • 生活動作の中で過度に悪化する使い方を避ける
  • 肩甲帯を含めた動きの代償を整える
  • 必要に応じて薬物療法や関節内注射を検討する
  • ホームエクササイズを継続しやすい形で組み立てる

リハビリでは、可動域訓練だけでなく、寝方、着替え方、家事動作、仕事動作の調整も重要です。良くなるまでに月単位で時間がかかることが多いため、短期的な角度の変化だけでなく、生活のしやすさが少しずつ戻っているかを追っていく視点が大切です。

ひとことで言うと

肩関節周囲炎は、肩の痛みと動かしにくさが徐々に強くなる中高年に多い病態の総称的な呼び方です。臨床では、特に痛みに続いて自動・他動ともに可動域が制限される凍結肩との関連を意識しながら、他の肩疾患との見分けと時期に応じた対応が重要になります。

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参考文献・出典

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