位置覚(深部感覚)
位置覚とは、自分の手足や関節がいまどの位置にあるかを感じ取る感覚です。深部感覚のひとつであり、視線を向けなくても指や足の向きがある程度わかるのは、この感覚が働いているためです。位置覚は、姿勢を保つ、立つ、歩く、物をつかむ、手を目的の場所へ運ぶといった動作の正確さを支える重要な感覚です。
深部感覚には、位置覚のほかに運動覚や振動覚などが含まれます。臨床では、位置覚の低下があると、筋力があるのに動作が不正確になる、閉眼すると立位や歩行が不安定になる、足の置き場所がわかりにくくなるといった問題として表れます。
位置覚(深部感覚)とは
位置覚は、筋、腱、関節、靱帯などから入力される情報をもとに、身体の一部がどこにあるかを把握する感覚です。一般には深部感覚、あるいは固有感覚のひとつとして扱われ、運動の方向を感じる運動覚と密接に関係しています。
この感覚が保たれていることで、人は視覚だけに頼らずに身体を操作できます。反対に位置覚が低下すると、動きがぎこちなくなったり、見ながらでないと手足を使いにくくなったりします。
どこでみるのか
神経学的診察、脳血管障害後の評価、末梢神経障害の評価、感覚性失調の確認、歩行や立位バランスの観察、上肢の操作性の確認などでみます。とくに、暗い場所で不安定になる、閉眼でふらつく、視線を外すと手足をうまく使えないといった場面では、位置覚の低下が関与していることがあります。
また、日常生活では、足を強く踏みしめるような歩き方、手の届き方のずれ、食事や更衣などでのぎこちなさとして気づかれることもあります。
何をみているのか
位置覚をみるときは、患者が関節の位置変化を感じ取り、その向きや位置を正しく答えられるかを確認しています。単に感覚があるかどうかではなく、どの程度正確に位置を識別できるかが重要です。
さらに、位置覚は動作のなかでも確認されます。立位での荷重の偏り、歩行での足の置き方、上肢の到達のずれ、閉眼時の不安定さなどは、位置覚低下の手がかりになります。そのため、ベッド上の感覚検査だけでなく、実際の動作場面でどう表れるかも大切です。
臨床でどうみるのか
臨床では、手指や足趾の関節を軽くつまみ、上下どちらかにわずかに動かして、患者にその向きを答えてもらう方法がよく用いられます。一般には末梢の関節から確認し、必要に応じてより近位の関節へ広げて評価します。
- 指や足趾を他動的に動かしたときに、上か下かを答えられるか
- 左右差がないか
- 末梢ほど障害が強く出ていないか
- 目で見ているときはできるが、閉眼で不安定にならないか
- 立位や歩行で足の置き方が不正確になっていないか
位置覚が低下している患者は、視覚で代償していることがあります。そのため、見ながらならできるが、目を閉じると急に不安定になる場合には、深部感覚障害を疑います。
評価でみるポイント
評価では、関節位置覚の正確性に加えて、関連する深部感覚や動作への影響をあわせてみます。神経学的には位置覚と振動覚を併せて確認することが多く、リハビリテーションでは立位、歩行、荷重、上肢操作のなかでの使いにくさも重要です。
- 関節位置覚:動かされた関節の位置を正しく識別できるか
- 運動覚:どちらの方向に動いたかを感じ取れるか
- 振動覚:同じ深部感覚系として障害がないか
- 閉眼時の安定性:視覚代償が外れたときに不安定にならないか
- 動作の正確性:足の置き直し、踏み外し、上肢の過大・過小運動がないか
- 障害部位の推定:末梢神経、後索系、中枢神経のどこが関与していそうか
必要に応じて、立位での荷重感覚、歩行中の足の運び、上肢の到達動作などを観察し、感覚障害が機能障害にどうつながっているかを整理します。
臨床でよく出る問題
- 閉眼で立位や歩行が不安定になる
- 足の接地位置がわかりにくく、踏み外しやすい
- 上肢の到達動作がぎこちなくなる
- 筋力はあるのに、動きが不正確になる
- 視覚に頼りすぎて、見ていないと動作が崩れる
- 感覚性失調のような不安定さが出る
起こりやすい要因
位置覚障害は、深部感覚受容器、末梢神経、脊髄後索、視床、大脳皮質感覚領域など、感覚経路のどこかに問題があると生じます。臨床では、末梢性の障害か中枢性の障害かを意識して評価することが大切です。
- 末梢神経障害
- 脊髄後索の障害
- 視床や大脳皮質感覚領域の障害
- 感覚入力低下に伴う感覚性運動失調
- 長期の活動低下や異常運動パターンによる感覚の使いにくさ
注意したい症状
閉眼でふらつく、暗い場所で歩きにくい、足を強く踏みつけるように歩く、視線を外すと手足をうまく使えない、目で確認しないと操作しにくいといった症状は注意が必要です。麻痺や筋力低下が目立たなくても、位置覚障害だけで動作が大きく崩れることがあります。
また、転倒しやすい、上肢の動きが大きくずれる、姿勢が安定しない場合には、位置覚だけでなく他の深部感覚や神経学的所見も含めて評価する必要があります。
対応の基本
対応では、まずどの部位でどの程度の位置覚障害があるかを整理し、日常生活のどの動作に影響しているかを明らかにします。そのうえで、視覚など他の感覚を活用しながら、適切な位置関係や荷重を学習していくことが基本になります。
- 感覚検査だけでなく、立位や歩行など実際の動作でも評価する
- 視覚フィードバックを使って動作のずれを修正する
- 荷重練習や関節位置の再学習を段階的に行う
- 転倒リスクの高い場面を把握して環境調整を行う
- 原因となる末梢・中枢神経障害の評価と治療を並行する
位置覚障害では、患者自身が「どこがずれているか」を自覚しにくいことがあります。そのため、繰り返しの感覚入力と、視覚や聴覚を含めた外的フィードバックを活用しながら動作を整えていくことが重要です。
ひとことで言うと
位置覚とは、自分の手足や関節がどこにあるかを感じ取る感覚であり、姿勢保持、歩行、上肢操作を正確に行うために欠かせない深部感覚のひとつです。
関連用語
参考文献・出典
- Neurologic Exam - StatPearls - NCBI Bookshelf
- 深部感覚障害を有する患者への理学療法評価と理学療法の考え方(J-Stage)
- Assessing proprioception: A critical review of methods(PMC)
- Joint position sense and vibration sense: anatomical organisation and assessment(PMC)