ウェルニッケ失語とは
ウェルニッケ失語は、失語症の代表的なタイプのひとつで、主にことばの理解がうまくいかなくなる状態です。感覚性失語とも呼ばれます。発話そのものは比較的なめらかで、よく話しているように見える一方で、内容がかみ合わなかったり、ことばの言い間違いが多くなったりするのが特徴です。
耳が聞こえない、口やのどが動かないために話せないという問題ではなく、脳の言語に関わる領域の障害によって起こる言語機能障害です。多くは左半球の言語領域の損傷でみられます。
どこでみるのか
ウェルニッケ失語は、脳梗塞や脳出血のあと、頭部外傷、脳腫瘍、脳炎などのあとにみられることがあります。特に、会話は流暢なのに内容が通じにくい、相手の話の理解が難しい、読み書きも乱れている、といった場面で気づかれやすいタイプです。
急性期病院、回復期リハビリテーション病棟、外来、在宅支援の場面など、コミュニケーションのズレが生活に影響しやすいところでよく問題になります。
何をみているのか
評価では、単に「話せるかどうか」ではなく、言語機能全体をみます。特に重要なのは次の点です。
- 発話は流暢か
- 話しことばの理解ができるか
- 物の名前を言えるか
- 聞いたことばを復唱できるか
- 読めるか
- 書けるか
- 自分の言い間違いに気づけるか
ウェルニッケ失語では、発話の量が多くても、理解・命名・復唱・読字・書字に障害が出やすく、錯語や新造語が混じることがあります。
臨床でどうみるか
会話の場面では、質問に対して一見すらすら答えているようでも、内容がずれていたり、話題と関係の薄いことばが続いたりすることがあります。相手の指示や説明の理解が難しいため、日常会話だけでなく、診察やリハビリの説明、服薬や生活指導にも影響しやすいのが特徴です。
また、本人が自分のことばの誤りに気づきにくいことがあり、周囲から見ると「たくさん話しているのに通じない」という形で現れることがあります。
評価で何をみるか
失語症の評価では、標準化された検査が用いられます。代表的なものとして、標準失語症検査(SLTA)やWAB失語症検査(日本版)があります。これらは、失語症の有無、重症度、タイプ、経過の把握に役立ちます。
加えて、脳画像検査で病変部位を確認し、脳卒中など原疾患の評価とあわせて全体像を整理します。ウェルニッケ失語では、左半球のウェルニッケ野や、その周辺から後方の上側頭回に関連する病変が典型的です。
臨床でよく出る問題
- 相手の話が理解しにくい
- 自分では話せているつもりでも内容が伝わりにくい
- 音の言い間違い、意味の取り違え、ことばの置き換えが多い
- 質問への答えがずれやすい
- 復唱が難しい
- 読字や書字にも障害が出やすい
- 病識が乏しく、自分の誤りに気づきにくい
起こりやすい原因
もっとも多い原因は脳卒中です。そのほか、脳腫瘍、頭部外傷、脳炎などでも起こります。ことばの理解を担う左半球の言語関連領域が障害されることで生じます。
注意したい症状
急に会話がかみ合わなくなった、本人は普通に話しているようなのに意味が通らない、簡単な指示が入らない、文字を読んでも理解しにくい、といった変化が急に出た場合は、脳卒中などの可能性もあるため注意が必要です。
特に、片麻痺、顔のゆがみ、ろれつの異常、意識の変化などを伴うときは、早急な医療対応が必要です。
対応の基本
まずは原因となった病気の治療が優先されます。そのうえで、言語聴覚士による評価とリハビリテーションを行い、残されている力を活かしながらコミュニケーション手段を整えていきます。
実際の支援では、次のような工夫が重要です。
- 短くわかりやすい文で話す
- 一度に多くの情報を伝えすぎない
- 身振り、指差し、絵、写真、文字などを併用する
- 伝わったかどうかを確認しながら進める
- 本人の発話量だけで理解度を判断しない
会話が成立しにくいからといって、理解や反応を決めつけず、使いやすい伝達方法を一緒に探していくことが大切です。
ひとことで言うと
ウェルニッケ失語は、流暢に話していても、ことばの理解と内容の正確さに大きな障害が出る失語症です。会話量だけでは判断できず、理解・命名・復唱・読字・書字を含めて全体的にみることが重要です。
関連用語
参考文献・出典
- 失語症とは | 済生会
- Aphasia - StatPearls - NCBI Bookshelf
- ウェルニッケ失語のリハビリテーション - J-STAGE
- 失語症 - 国立病院機構 鳥取医療センター