紫外線療法とは
光線は電磁スペクトルの1つであるが、理学療法で治療として用いられる光線エネルギーには赤外線と紫外線とが含まれる。赤外線や極超短波が組織を暖める効果を有するのに対して、紫外線は組織の光化学反応を賦活する効果を有するのでさまざまな皮膚疾患の治療に用いられている。紫外線(ultravioletray: UV)は,波長が約180〜390nmにある非可視光線で強力な化学作用を有することから化学線 ともいわれ、これは太陽光線に多量に含まれている。この太陽光線をそのままの形で治療に利用する日光療法(heliotherapy)は、とくにスイスの医師Berhard、 Rollierらによって世界的に広められ主として外傷や皮膚結核などに対して20世紀初頭まで用いられてきた。
上記の様に可視光線とX線の間に紫外線はあります。可視光線の最も波長の短い光線である紫の外側にあるので紫外線というわけですね。逆可視光線で最もで波長の長い光線の外側にあるのが赤外線です。赤外線には熱エネルギーがありますが、紫外線には熱エネルギーはありません。紫外線は上の図を見てもらえれば分かると思いますが、赤は波長が長く紫は波長が短いですよね。
波長が長い赤色は深達率が高く、紫は波長が短いので深達率は低いです。
朝日は太陽と自分との距離が近いので比較的波長の短い紫が多く伝わり雲や空も紫色に染まります。それに比べ夕日は太陽の位置と自分の位置が遠く貫通する大気の量が多いので波長の長い赤色だけが目に届くので夕日は赤いということです。
日光療法は老人ホームや老健、デイサービスなどでも行われることが多いと思います。
少しこの物理療法とは話がずれてしまいますが、まず物理療法は快刺激が重要です。日光療法は紫外線だけでなく可視光線も多く含まれるので明るくうつ病などにも有効だと言われています。
季節性うつなどもありますが、天候が悪いと抑うつ気味になりますよね?逆に明るいと爽快な気分になります。光はこのように精神運動機能にも影響を与えます。
紫外線の物理学的特性
紫外線は電磁波の1つであり、可視光線とX線との間にあって波長はほぼ180〜390nmに分布している。紫外線のうち波長が390〜290nmのものを長波紫外線あるいは近紫外線(long waveUVR or near UVR) という。別名UV-Aでごく最近まで生理学的効果はほとんどないと考えられていたが最近の研究では、とくにUV-Aの治療上の利点とは反面危険性が明らかにされている。
また紫外線のうち最も強力な生物学的作用を有する波長は290〜320nmでこれはとくにドルノ線(Dornoray)といわれる。別名UV-Bとよばれ,日焼けや加齢による皮膚変化と関係が深い。
これに対して波長が290〜180nmを短波紫外線あるいは遠紫外線(short wave UVR or far UVR) という。別名でUV-Cとよばれ殺菌効果が強い。
紫外線は波長が短いために吸収、分散などしやすく空気層、ガラス板を通過するさい波長の短いものの大部分が失われる。紫外線は強力な光化学作用を有しており、これはとくに波長の短いものほどその傾向が強い。なぜなら光子(photon)のエネルギー量はその周波数に比例するからである。
すなわち、エネルギー量をEとすると、E=hvで表せられる。ここでhはプランク定数、Vは周波数である。波長は周波数と反比例するので、たとえば200nmの波長の光は400nmの波長のそれより倍のエネルギーを有することになる。波長が短い線やX線が非常に高いエネルギーをもつのはこのためである。しかし、透過性は逆に波長の長いものほど大きいので、遠紫外線が皮膚組織に0.1〜0.5mmの深さまでしか透過しないのに出して近紫外線は0.5〜1mmの深さに達する.
光線エネルギーは体表面に達すると一部は反射され一部は組織内を通過、そして吸収される組織内へ進入したものは異なる組織境界面では屈折し、組織で吸収された光線エネルギーのみが二次的に化学的あるいは生物学的反応を引き起こす。これをグロッタス・ドレイバーの法則(Grot.thus-Draper'slaw) という。
また光線エネルギーの強さは光源と被照射面との距離の2乗に反比例するが、これは距離逆比例の法則(inverse square's law)といわれる。たとえば距離が2倍になれば元の光の強さの1/4になり、距離が1/2になれば元の強さの4倍となる。一方、光が物体に入射したときのエネルギーの強さは入射点と光源を結ぶ直線と入射点上の垂線のなす角の余弦(cosine)に比例する。これをランバートの余弦の法則(Lambert's cosine law)という。たとえば30°の角度での照射は90°での照射(直角照射)に比べその強さは約1/2となる。しかし直角照射から土10範囲の誤差ではエネルギーの強さはほとんど直角照射のときと変わらない。したがって、光源と被照射面とのなす角度の設定は目測で行っても、だいたい大丈夫である。しかし、たとえば背部のように大きな部分を照射対象とする場合、紅斑形成の程度は体表面が平坦な所より彎曲した所のほうが明らかに悪くなる。
グロッタス・ドレイバーの法則:物質によって吸収された光のみが光化学反応を起こしうるという法則。1820年にグロートゥスの提案になり,1845年にドレイパーが水素と塩素との反応に際して独立に発見したのでこの名がある。吸収されなければ光は化学反応を起こさないので日焼け止めなどで皮膚への吸収を防げば勿論日焼けもしない。
紫外線に限らず光線療法には上記の法則がすべて当てはまります。
E=hvの公式は実際にどうでもいいのですが簡単に説明するとE=エネルギーです。hはプランク定数といって光のエネルギーを計算するときに使う比例定数です。比例定数はy=axの比例関係のaに該当する部分だと思えばいいです。それがhに代わっているだけですね。v=周波数ですね。簡単に言えば光のエネルギーは周波数が大きくなると一緒に大きくなるよってことです。周波数は単位時間(一定の時間)で何回波を起こしたかということなので波長が長いと波の数は減りますし、波長が短いと単位時間で波の回数は多いので周波数は大きくなるという訳です。
紫外線は可視光線よりも波長が短いので周波数は大きく、結果として強いエネルギーを持っています。そのエネルギーが大きいからこそ殺菌作用やガンの原因にもなるわけですね。紫外線は有毒なので大量に降り注ぐと人類は死滅してしまいますが、波長が長いと貫通性が高く波長が短いと貫通性が弱いことは先に述べた通りです。
そのためオゾン層や大気に大量の紫外線がシャットアウトされて人類に丁度良い紫外線量になっています。
臨床適用
紫外線が臨床に適用される目的には大きく3つがあげられる。すなわち、皮膚の感染症それに真皮が正常状態に回復するさいに生じる一過性の皮膚剝脱や肥厚を伴う非感染性皮膚疾患の治療、そして最後にカルシウム代謝の活性化をはかる場合である。紫外線の殺菌効果はDNAの一成分であるチミニンの破壊によって説明されている。細胞内あるいは細胞外液に存在するヒスチジンはDNA破壊を抑制する働きをもつ。1940年代以降、化学療法の目覚ましい発展で紫外線を感染症に使う機会は急速に減少した。しかし褥瘡だけにはいまでも紫外線療法がよく使われている。これは前述したようにおそらく血行支配の乏しい組織には抗生物質がよく作用しない理由からである。感染性の皮膚疾患に紫外線を適用する際1つ障壁になるのは紫外線の組織への乏しい透過性である。
適応疾患
尋常性乾癬
尋常性白斑
掌蹠膿疱症
アトピー性皮膚炎
円形脱毛症
菌状息肉症
慢性苔癬状粃糠疹
悪性リンパ腫など
紫外線の効果にはビタミンDの吸収を促進します。特にプロビタミンDというビタミンDの前駆体であり、体内で化学変化を起こしビタミンDへと変化していきます。ビタミンDは小腸でのカルシウムの吸収を促進するため、くる病に有効です。紫外線はDNAの内のチミニンを破壊するため細胞を損傷します。そのため紫外線がDNAを破壊しない様にメラニンで細胞内への侵入を防ぎます。それが日焼けのメカニズムですね。猫も人間同様ビタミンDを体内で生成できないと言われています。ネコの毛づくろいには皮脂の中で紫外線を浴びた部分にビタミンDが生成されそれを摂取するためともいわれています。ビタミンDには骨へカルシウムを運搬する作用がありますので血中カルシウム濃度が高くてもビタミンDがなければ骨へと輸送できません。