身体運動学とはなにか?
今回は出来るだけ簡単にわかりやすく運動学を説明していきたいと思います。
身体運動学(キネシオロジー)の語源はギリシャ語のkinesis(動き、運動)とology(学、研究)に由来します。
今日の英語は色々な国の言葉を取り入れており医療英語はギリシャ語やラテン語に由来した言葉が多いのが特徴です。
運動学は解剖学(人体の構造)と生体力学(人体の運動性)の合体したものです。
あの有名なレオナルド・ダヴィンチとミケランジェロも解剖学や生体力学を学び後に解剖学者アルビヌスにも影響を与えました。
そうしてできたのがこれです。
余談となりますが、あのミケランジェロやレオナルド・ダヴィンチは非常に解剖学に精通しており、その詳細さから黄金比ともいえる美しい彫刻や絵画を作り上げました。
ダヴィンチは遺体を買い取り、解剖したことで有名です。これにより詳細な解剖学に基づいた絵を描いたと言われています。
正直メチャクチャ怖いですが、天才というものはこういうものなのでしょうね。
続いてミケランジェロです。ヴィンチに非常にライバル心を抱いていただけあり見事な作品を残しています。
狭義の意味での『運動学』とは?
狭義の運動学(kinematics)は身体の動き、操作をそれぞれ生ずる力やトルクの視点抜きで説明する力学の1分野です。
生体力学では身体という用語は体全体または個々の骨などの部分や体節を漠然と説明するために用いられます。
一般的に運動には並進(トランスレーション)回転(ローテーション)の2種類があります
並進はある体の部分が他の部分と平行に動きます。この際に直線的に動くことと曲線的に動くことがありますがどちらでも並進と言えます。
歩行時の頭部の運動は上下しているので重心の移動に対して曲線的に並進していると言えます。
見てもらえると分かると思うのですが頭部は概ね進行方向に対してカーブしながら並進(トランスレーション)していますね。
回転(ローテーション)とは剛体がある点を中心に円を描く運動です。
剛体は簡単に言うと骨です。回転する中心は関節を意味します。この回転の中心を回転軸といいます。
このように人間は関節運動はすべて回転運動をしており、重心や固定された他の身体の部分は並進運動します。
並進運動の中で曲線的な運動として歩行時の頭部位置を表しましたが、ボクシングのストレートパンチや相撲のすり足は直線的な並進運動です。
直線の運動は最短距離で動くので素早い運動がや無駄のない動きで古武術などには多用されています。
逆に曲線的な並進運動はどうでしょうか?非常に大きな運動量をもつので素早くはありませんが、ダイナミックで反動を利用することが出来るので大きな力を持ちます。
すり足よりも普通に歩く方が大きなパワーを持ちますし、すり足の方が関節の回転運動が小さく並進運動も直線的なので動きを読みにくくいというメリットもあります。
骨運動とは?運動面について知ろう
運動面 (プレーン・オブ・モーション)
骨運動(オステオキネマティクス)は人体の3つの基本的平面(矢状、前額、水平面)を基準とする骨の動きを表わします。
矢状面は頭蓋の矢状縫合と平行で左右に分け、前額面は冠状縫合と平行で前後に分け、水平面は水平で上下に分けます。
腕を横に広げるような運動は前額面上の運動で正面からみた動きになります
腕を前後に振る運動は矢状面の運動で横から観察する動きになります
台ふきのように床と水平に動く面は水平面です。上か下から観察する動きです
関節自由度とは?知っているようで忘れがちな関節自由度を知ろう
関節自由度とは関節に許された独自の運動の数です。
3次元空間に対応して関節の角運動の自由度は最大3つです。肩関節は3つの運動面に対応して3つの角運動の自由度をもちます。
手関節は2つの自由度を許され肘関節は1つだけです。
自由度は関節に許された角運動の面の数を指します。
厳密な工学的視点からは自由度は角運動に加えて並進にも適用されます。
すべての滑膜性関節は若干の並進を有しており、それは自動的には筋、他動的には関造の自然な弛緩性から生まれます。
わずかな他動的並進は副運動(アクセサリーモーション)と呼ばれ、3つの運動方向に定義されます。
その方向は3つの回転軸に対応し、肩関節では上腕骨は他動的に並進し、その方向は前後、内外、上下です。
多くの関節で、とくに膝と足関節では並進の量が靱帯の健常さを確認するテストとして用いられています。
副運動の詳細はまた別の記事で書いていこうと思います。
基本的には上記の運動面をいくつもつかで関節自由度を数えるのですが、麻痺の場合などはこの関節自由度を足して数えたりします。
股関節では屈曲-伸展軸、内転-外転軸、内旋-外旋軸の3自由度、膝関節は屈曲-伸展軸の1自由度、足関節は底屈-背屈軸、回内-回外軸、内転-外転軸の3自由度が基本となっています。
下肢全体で7自由度の制御を行っています。(下腿の内外旋ととる足部の内外転と、とるかで自由度を下腿1度、足部2度と数えても7度です)
このように関節自由度が高いということはそれだけ関節の制御が難しいことを意味します。
麻痺の場合は装具で関節自由度を奪いますので、ある程度関節自由度が減少しぎこちない動きとなりますがその分だけ制御は単純化します。
運動性と安定性は反比例しますので麻痺などで運動性が低下している場合はこの関節自由度を少なくすることで支持性を高めていると言えます。
今回の記事では運動学について書きました。
理学療法士以外にも学生や一般の方にもわかりやすく