人間の進化と歩行について
人間と他の類人猿の最大の違いは何か?そうです『直立二足歩行』ですね。
他にも体毛や筋力、言語能力、知能など違いはたくさんありますがホモサピエンスである我々、人類は形態的に二足歩行に完全にシフトしています。
よく言われているのは人間の知能が高いのは『手』を使えるからというものがあります。確かにその通りでですがサルもゴリラもオランウータンも手は使いますよね?
ですが何故人間の『手』は特別なんでしょうか?
答えは他の類人猿はナックルウォークを使って四足で歩行するので『前脚=手』なのです。
これにより歩行時以外の際にのみ『手』として利用することが出来ましたが歩行時は『前脚』に戻ってしまいます。
しかし、人間は『完全直立二足歩行』を手に入れたので移動中も手を使えますし脚にすることがないのでより巧緻動作ができる『手指』の機能を手に入れました。
また、言語能力も脳の発達に大きな貢献を果たしていますが、これにも二足歩行が関与していると考えられています。メリーランド・バルティモア・カントリー大学では『ウォーキートーキー理論』(Robert Provine 2000)と呼ばれる理論を唱えています。
簡単に説明すると人間の祖先は直立して歩くことができた後で会話能力を得たというものです。
ヒトの笑い方は素早い音響の繰り返しであり、細かく刻まれた呼気からなっており母音に似た音が断続的に声帯を通って発せられているが、チンパンジーの笑いは『のこぎりで木を切るような音』であり激しい呼気と吸気の連続で成り立っているというのです。
それはチンパンジーの骨格が肺と声帯を利用した複雑な発声を妨げているからであると言っています。
四足歩行動物は前脚や姿勢によって肺や声帯の形状が変化するのでオオカミの遠吠えなどは必ず天を仰いで吠えますよね?この様に二足歩行に進化したことで人間は肺や声帯を移動に制限なく使用できるようになりました。また直立したことで気管や気管支それに肺も下降しました。喉頭の位置も下がり咽頭腔が広くなり発声が可能となったのです。
サルと人間は上の図のように骨格が大きく変化しています。フルモデルチェンジしていますね。他の類人猿は上肢が長く地面につきそうなほどですが人間は足に対して上肢は短いです。これも類人猿がナックルウォークしているため脚として利用する必要があるからです。また骨盤も人間に比べ非常に前傾しており四足歩行に適した形となっています。
胸郭の構造も大きく異なっています。四つ這いで移動するためにサルやゴリラは胸郭が大きく下向きになっても内臓を保有しやすいですが、人間は直立姿勢を形成するために内臓は下方に移動し胸郭もコンパクトになっています。
内臓を正面に向けるということは非常にリスキーな選択です。なぜ人間はこの様に進化したのでしょうか?
人間の進化した理由は?
進化もあまり分かっていないことが多く何のために進化したのかは誰にも分かりません。
ウィルスによる突然変異でDNAが変異した結果として色々な進化を起こしたのか?(ウィルス進化説)それとも近い染色体の生物が交配した結果に形態の異なる生物が生まれたのか?(雑種強勢やハイブリッド)自然淘汰で環境に適した生物の特徴だけが色濃く顕現したため進化が起きたのか?(自然淘汰説)
分かっているのは生物として脆弱性が高くなる進化を人間は選択して(勝手に起きたのか)現在は地球で大繁殖していることです。
では人間の進化のメリットは何だったのでしょうか?
それはつまり直立二足歩行ができるメリットと考えても良いでしょう。
①背が高くなるので遠くまで見える
敵が来たときに素早く逃げれるようになるには、なるべく早く遠くから発見できたほうがいいですよね?
では最初から大きく進化すれば良かったじゃないか?
そうです大きな類人猿は実際にいました。
ギガントピテクス(大型類人猿、 身長約3m、体重約300 - 540kg)
あまりにも大きいので食糧不足で滅んでしまいました。また大型生物は繁殖が少ないので容易に滅ぶことが多いです。ネズミや虫は絶滅しないですよね。
②遠くまで歩ける
実際にこれが一番重要だと思います。人間は逆さ振り子運動によって非常に効率的な歩行を獲得しました。これによって長距離の移動を可能としました。
食糧難や天災、天敵の出現から逃げるためにも、獲物を長時間追いかけるためにも、この歩行の効率化は最重要事項だったと思います。
マサイ族には1日の狩りで40㎞~70㎞の移動をする記録もありますし、日本でも飛脚が1日で40㎞以上歩いたという記録があります。
これにより自分たちに有利な環境を探せる大きなメリットができました。
③手が使える
二足歩行を行うことによって前脚が手に進化したので投擲力と道具を扱うことが出来ました。また手指機能の発達は大脳を巨大に発達させました。
大脳は人間らしさの象徴ですので創造性や想像性を司どっています。手が使えることは道具を作り出したりそれを使用することを可能としたため知能も大きく向上しました。
また投擲は人間に最も足りなかった攻撃力を与えました。遠距離攻撃と素手以上の破壊力です。
③言語の獲得
最初の方に書きかましたがウォーキートーキー理論ですね。胸郭や肺の運動が前脚から解放されたので歩行中にも自由に発声が出来るようになりました。
また内臓器が直立二足歩行により肺や気管支も下方へ移動し咽頭腔が拡大したため舌の運動範囲も広がり、口唇や頬、声帯も他の動物に比べ自由度が上がりました。
これにより複雑な音を出せるようになったことで『会話』が可能となりました。会話は社会的動物へと人間を進化させます。
一人で出来なくても大勢あつまれば出来ることは増えます。
ここまで読んでいただいてありがとうございます。
また進化に関しては手指機能と知能や咬合力と歩行能力など面白い相関関係のお話があるので、今後も記事を書いていきたいと思います(;^ω^)