自分の身長はどこまで伸びる?子供の身長は?
まずどの程度の身長まで伸びるのかを予測してみたいと思います。
この身長予測は色々な国で行われてきましたが日本ではこの様な式が用いられています。
男子 (両親の身長の合計+13cm)/2
女子 (両親の身長の合計-13cm)/2
実際にはこの身長の値から上下に9 cm程ばらつきます。
そんなにバラついてもいいの?と思いますが大体上記の式に収束されます。ただし環境要因で大きく変動しますので諦めちゃいけません!
私の周囲の30名程度に聞いたら誤差は1cm~3cm程度が多く、男子はほぼこの式に当てはまる人が多かったです。
引用:Ogata, Tsutomu, Toshiaki Tanaka, and Masayo Kagami. "Target height aいnd target range for Japanese children: revisited." Clinical Pediatric Endocrinology., 2007年 16巻 4号 p.85-87,
身長と運動の関係とは?止めてしまう?
別の記事でも書いたのですが身長と運動は相乗効果があり、発育期に応じた適度な運動は身長を伸ばすために有利です(*^^)v
特に骨成長を促すのには筋肉を鍛えることや荷重することは必須だと言えます。
論文からの参考
.成長期における運動は骨密度及び骨強度の増加をもたらし骨成長の促進に効果的であるという報告が多い(Bourrin et al., 1994; Hind et al., 2007)
運動は骨組織に対し刺激を与え、その刺激によって骨は量およびその形態を変化させることが出来る( Wolff, 1892)
骨成長は遺伝因子に加え,生活習慣の影響も大きく受けることが指摘されている(Chesnut et al.,1991)
その一つに運動の要因があげられる.運動によるホルモン分泌など全身性の変化は間接的に骨に作用する
Borer らは,走運動を行わせたハムスターにおいて成長ホルモン( Growth hormone: GH)の分泌量増加に伴う骨長軸成長の促進を観察している( Borer et al., 1977)
GH は下垂体前葉から分泌され,直接的および間接的に骨や筋などに作用し成長を促進する
骨の長軸成長はとくにこの成長因子の作用が影響している(須田ら,1985).
また,運動は腸管からのカルシウム吸収量を増加させることも報告されている(Yeh et al., 1989; Zittermann et al., 2002)
カルシウム代謝の維持にも貢献していると考えられる.
下垂体からの成長ホルモンの放出が多ければ高身長となりますが、成長ホルモンにはあらゆる組織を成長・修復する機能がありますので、過度な運動は筋の発達にばかり使われ骨成長に回らない場合もあります。
実際に運動しない子供と運動する子供、本格的なアスリートの子供では適度に運動する子供が最も成長が著しかったです。
もっとも、環境要因には栄養状態や睡眠がありますし、遺伝的要因も合わせることは出来ないのでかなりの数の比較か双子での研究が有用なのですが、この研究は難しいですよね(;^ω^)
骨への機械的負荷(メカニカルストレス)が骨の成長を促す
運動がなぜ身長を伸ばすのか一つは前述した成長ホルモン(GH)ですがもうひとつはこの機械的刺激です。
荷重など物理的刺激は骨に直接的に作用します。骨への機械的負荷は主に筋収縮と荷重による運動時の衝撃がメインとなっており骨成長の大きな要因です。
この骨成長は長軸方向への成長だけでなく横軸の骨の太さや密度にも影響します。成人してからは主に骨密度に影響しています。
骨は外的および 内的な機械的負荷(メカニカルストレス)に対しその外形および内部構造を変化させることにより適応することが知られている( Wolff et al., 1892)
軸圧負荷( Dodds etal., 1993)たわみ負荷( Raab-Cullen et al., 1994)機械的負荷の増負荷により骨量が 増加することが報告されている。
反対にラットの尾部懸垂(Bikle et al., 1994)不動化(Jee et al.,1993)無重力(Bikle et al., 1994, Westerlind et al., 1995)による機械的負荷の減負荷に対して骨量の減少が報告されています。
一酸化窒素(NO)分泌およびプロスタグランジン(PG)産生を介して骨量が増加すること、またその際に骨細胞において転写調節性DNA結合タンパク質(c-fos)およびインスリン様成長因子(IGF-I)の mRNA の発現が促進されることを示した(Chambers et al.,1994)
このように上記の様な反応として骨への機械的負荷(メカニカルストレス)は局所的に作用するホルモンやサイトカインの液性因子の変化が報告されています。
骨の成長を促す運動や負荷量は?
運動の骨成長に対する影響は その種類や強度によって異なります。一般的に荷重負荷の小さい水泳運動では荷重負荷のかかる運動よりも骨量獲得の効果が小さいです。
反対にジャンプやスクワットのような運動の方が荷重骨の骨量増加に有効であることが示されています(Notomi et al., 2000; 2001; Westerlind et al.,1998)
このように骨成長にとっては骨への荷重やメカニカルストレスは骨成長に有意であると認識されていますが、その一方で、その運動強度によっては骨に負の影響を与えることも示唆されています。
成長期の実験動物においては高負荷の運動が骨量の減少や骨の形態変化に影響を及ぼすことが報告されています(Forwood et al., 1993; Iwamoto et al., 1999; Notomi et al., 2001;Westerlind et al., 1998)
骨量だけでなく骨の長さの成長に対する運動の効果についても、運動は促進的に作用する(Borer et al., 1977; Chvapil et al., 1973)という一方で抑制的に作用する(Kiiskinen et al., 1978; Matsuda et al., 1986)
という報告もあります。これは運動する時期と運動強度、運動頻度、栄養状態などが関係すると考えられています。
その運動強度の適度とは?
骨の健康のための身体活動や骨の長軸への成長には骨に衝撃の加わるジャンプなどの要素があります。
適度な強度の運動とはレジスタンストレーニングであれば 1RM の 60%以下であること。
1週間に少なくとも 3 日で 1 回 10~20 分を 2 セット程度が望ましいとしています。American College of Sports Medicine(Kohrt et al., 2004)
運動が及ぼす負の影響の強度とは?
週に 15~20mile(24㎞~32㎞) 走る選手の骨密度は高いが、それよりも走行距離が多い選手では骨密度が低下する傾向であったことを示しました (Macdougall et al.,1992)
またBass らは成長期の女子体操選手を対象に身長の伸びを調査したところ,運動を行っていない対照群と比較して身長が低値だったことを示しています(Bass et al., 2000)
また 、これらの報告では同時に運動群における栄養素等摂取不足が観察されており( Eliakim et al., 1998; Caine et al., 2001)
実際のスポーツ現場においては運動トレーニン グによる影響だけではなく、運動負荷に対して十分な栄養が足りていないことも骨成長の抑制に影響していると考えられいます(Genazzani et al., 2005)
骨の成長に必要な栄養とは?
タンパクとコラーゲンの摂取は骨成長に必須です
まずはタンパク質について書きますよ~
慢性的なたんぱく質不足は骨の成長に負の影響を与えることが報告されています。
Orwoll らは成長期のラットを用いた実験で低タンパク質摂取が成長の遅延に関しての報告(Orwoll et al., 1992)
また Likimani らは低タンパク質摂取が骨塩量の減少をもたらすことを報告しています( Likimani et al., 1992)
低タンパク質摂取が骨に及ぼす影響の原因には IFG-I 分泌の抑制(Yahya et al.,1990)
代謝性アシドーシスを引き起こす(Viteri et al., 1983) それが骨吸収を亢進させること( Reidenberg et al., 1966; Barzel et al., 1969)などが考えられています。
骨吸収:破骨細胞が骨を壊して古い骨細胞を代謝させる運動
骨形成:骨芽細胞により新しい骨細胞を骨に作り出すこと
IFG-I(インシュリン様成長因子)筋肉や骨の成長を促進するホルモン
これらのことから成長期における骨成長のためにはタンパク質摂取量を十分に確保することが必要です。
実際にヒトにおいてタンパク質摂取量と骨量の関係を検討した横断研究では両者の間に正の相関関係が示されています(Chevalley et al., 2008)
次はコラーゲンについて書きます
コラーゲンは,皮膚,血管,腱,歯などほとんどの組織に存在するタンパク質で生体を構成する全タンパク質の約 30%を占めます。
骨は骨基質にミネラルが沈着して形成されます。
骨基質はコラーゲンと非コラーゲン性タンパク質で構成されているが,骨基質の約 90%がコラーゲン構成されています。
そのためコラーゲンは骨の石灰化の基質として重要な役割を果たしています( 藤 本 1994)
さらにコラーゲンは骨芽細胞や未分化の前骨芽細胞 の足場としての役割を果たしています(Shimizu et al., 2001; Mizuno et al., 2000)
まとめ
①身長は遺伝と環境で決定される
②環境は運動と栄養で決定される。(睡眠などの生活習慣は別の記事で書きます)
③環境次第では身長は遺伝要因よりも大きく成長できる
④運動負荷や運動種目が重要である。(ジャンプや階段昇降など骨への長軸負荷、1RM の 60%以下であること。1週間に少なくとも 3 日で 1 回 10~20 分を 2 セット程度が望ましい)
⑤身長を伸ばすならタンパク質とコラーゲンが大事
長々と書きましたがここまで読んでくれてありがとうございました(>_<)
また読んで下さいね