通所リハビリの卒業って何?
ます、リハビリテーションは、身体的、精神的、社会的に最も適した生活水準の達成を可能とすることによって、各人が自らの人生を変革していくことを目指し、且つ時間を限定した過程であると定義されています。(国連、障害者に関する世界行動計画、1982年より出典)
・自分自身が参加して行うもの(自主性が大切。依存はNG)
・時限的なものである(卒業がある)
無目的なリハビリはダメですし、何らかの理由をつけても漫然としたリハビリはダメだということです。
介護保険法第1条
この法律は、加齢に伴って生ずる心身の変化に起因する疾病等により要介護状態となり、入浴、排せつ、食事等の介護、機能訓練並びに看護及び療養上の管理その他の医療を要する者等について、これらの者が尊厳を保持し、その有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう、必要な保健医療サービス及び福祉サービスに係る給付を行うため、国民の共同連帯の理念に基づき介護保険制度を設け、その行う保険給付等に関して必要な事項を定め、もって国民の保健医療の向上及び福祉の増進を図ることを目的とする。
介護保険法第4条
国民は、自ら要介護状態となることを予防するため、加齢に伴って生ずる心身の変化を自覚して常に健康の保持増進に努めるとともに、要介護状態となった場合においても、進んでリハビリテーションその他の適切な保健医療サービス及び福祉サービスを利用することにより、その有する能力の維持向上に努めるものとする。
通所リハビリの卒業を支援する仕組み
通所リハビリの卒業を支援する仕組みとはどんなものがあるのでしょう?
卒業に向けた支援では生活に根付く具体的な練習や卒業後の移行先の提案が重要となります。
通所リハビリの卒業・終了を目指す制度の変化
平成27年度に行われた介護報酬改定においてはリハビリテーションマネジメントの強化や心身機能、活動、参加のバランスのとれたリハビリテーションの充実が図られました。
また現状では更に令和3年度介護報酬改定に伴い、リハマネ加算はA・Bと変更されました。また、生活行為向上リハビリテーション実施加算の算定加算なども変化しており、より加算を取りやすく変化しています。社会参加支援加算は移行支援加算へと変化しています。
①リハビリテーションマネジメント加算の変化
②生活行為向上リハビリテーション実施加算の新設
③社会参加支援加算の新設
以上の3つがポイントとなります。
いずれにおいてもSPDCAサイクルに基づいたかかわりが重要視されている。
①リハマネ加算Ⅱの新設
介護支援専門員や他のサービス事業所を交えた「リハビリテーション会議」の実施と情報共有の仕組みの充実を評価して作成されました。
②生活行為向上リハビリテーション実施加算の新設
ADL・IADL、社会参加などの生活行為の向上に焦点を当てた新たな「生活行為向上リハビリテーション」として、居宅などの実際の生活場面における具体的な指導等において、訪問と通所の組み合わせが可能な新たな報酬体系を導入。
③社会参加支援については
リハビリテーションにおいて、社会参加が維持できるサービス等に移行するなど、質の高い通所・訪問リハビリテーションを提供する事業所の体制を評価。
①や②の算定要件となっている「リハビリテーション会議」では開催を通してアセスメントとリハビリテーション計画を見直しそれを多職種で共有・支援し本人や家族の同意を得る事またその説明と同意は医師が行う事と定められています。
リハマネ加算は事業所内の会議だけでなく、外部の関係者や本人・家族とも話し合いをすることで『本当に望まれていること』を目標にサービスを提供する計画を立てることが出来る。
また実際場面においてデイケアのみで全ての要望に応える事は出来ません。
例をあげてみましょう。
例)買い物に行きたい
デイケアの対応:歩行能力の獲得
・安定した歩行形態の提供(シルバーカー・杖など)
・歩行パラメーターの向上(歩行速度やストライドの向上)
・歩行安定性の向上(バランス能力の改善や不整地歩行など)
・長距離歩行の獲得(6分間歩行距離の延長や最大連続歩行距離など、もしくは休憩をはさんだ歩行距離など)
・段差昇降(筋力や横向きでの昇降や後ろ向きの降段など実際の方法も含めて)
・二重課題(買うものを探したり周囲の状況を把握する。人を避けたり、荷物を持って移動するなど)
・買い物(金銭管理や本当に使うものかの判断、購入後に使用できる環境も考えて)
このように課題(タスク)を分解することで実際の場面に即した練習内容を提供できます。
しかし、実際にはデイケアの課題もあります。
雨が降ればタクシーやバスを使うかもしれません。
バスの形状やステップによっては昇降が困難かもしれませんし、金銭管理や現場での動きを確認しなければいけません。
デイケアでの練習はあくまで想定した内容に即した運動なので、実際にスーパーに買い物に行ったり、囲碁・将棋教室に通ったり、電車やバスを利用する練習を行うことはありません。
勿論、生活行為向上リハビリテーションによる屋外活動などもあるかもしれませんが、マンパワーが不足しがちなデイケアでそこまで実践する時間を確保するのは大変難しいのも事実です。
そこで、訪問リハビリとの協力体制があればどうでしょうか?
機能訓練や動作訓練をデイケアで達成し、生活機能訓練を訪問リハビリで行うなど分業することで丁寧なサービスとなります。
デイケアの卒業への課題とは?
一つはサービス業をする上で安定した収入を得るために『抱え込み』が生じることだと思います。
リハビリの目的が社会への還元であり、閉じこもりの予防や社会への繋がりという点ではデイケアは適していると思います。
しかし実際にはこの『抱え込み』があると思います。
私自身よく言われたのは『達成できない目標を立てて卒業をさせない』『リハビリが無くなったらまた歩けなくなりますよ・・・拘縮が・・・などなど』
他にもケアマネさんから『一旦利用開始したら、ずっと要られると思っていました』
ご家族から『良くなったら介護度軽くなるからあんまり元気にしないで下さい』
などなど、PTになってから本当に色々な言葉をいただきました。
ここから分かることは何でしょうか?
卒業するには本人、家族、ケアマネ、事業所のスタッフ、リハスタッフなどの多くの同意を得ることが必要だということです。
では、振り返って考えてみましょう。
本当に抱え込みは必要なのでしょうか?
卒業が可能ということは社会に繋がるシーンを増やした結果です。良い成果だと言えます。
リハビリ効果があるデイケアとずーっと漫然としたリハのデイケアがあったらどちらに行きたいですか?
どちらのデイケアに自分の大切な家族を預けたいと思いますか?
ただし、家族やケアマネとしては色々と面倒なことがあるのも事実です。
ではどうしたらスムーズに事が進むでしょうか?
次のサービス提供場所を一緒に探してはどうでしょうか?
デイサービスや訪問リハビリ、地域の健康教室やサロンなどの互助サービスはどうでしょうか?
リハスタッフが一緒に探せばケアマネさんやご家族は幾分か楽な気持ちになると思います。
また他のサービス提供者との連携はデイケア側にも大きなメリットだと思います。
社会が再び障害者や要介護者を受け入れる体制ができればこれぞリハビリの真骨頂だと思います。
卒業への取り組みをどうしていくか
悪い例
・漫然としたリハプログラムの提供
・ゴールの見えないプラン
・事業所の都合による卒業宣言
・『期間です』という強引な説明
結果として卒業後も特に本人の生活が変化しない
良い例
・卒業の概念の説明(これはステップアップだというポジティブな考え方)
・卒業までのスケジュールの作成
・計画のSPDCAサイクル
・関わる全ての方が合意し納得できる卒業
・役割分担し他職種で係る
・進捗状況の共有
・自主練習などリハビリを卒業していく習慣性を身に着ける
・困ったことになれば卒業してもいつでも戻ってきてよいという受け皿
卒業したらもう知らないわけじゃないですよね?
再びリハが必要なれば戻ってきていいんですよと言えば勇気をもって卒業しやすくなります。
見捨てるのではなく背中を押しているだけです。
ですが、ここで一つ大事なことを書きたいと思います。
リハビリにとって一番いい状態とは何でしょうか?
それはリハビリが必要ない状態です
そりゃそうですよね?
リハビリ前置主義って聞いたことありますか?
この記事の最後にこれだけ書いておきたくて(;^ω^)
リハ前置主義という考えがあります。
リハ前置主義は、リハにより障害の程度をできるだけ軽減して、その状況で必要な介護を提供すべきという「手順」を示しています。
そうでないと、本来必要でない介護が与えられ、本人が自ら行う機会が閉ざされてしまうからです。
https://www.mhlw.go.jp/shingi/2007/03/dl/s0312-9d-05.pdf
このURLで見れます。私たちはリハビリの色々な可能性や側面を見て色々な考え巡らしますよね?
願わくばより多くの方がその人らしく生きられるように力になれたら嬉しいですよね(*^^)v