目標達成のフレームワークって?
目標を達成するには漠然とがむしゃらに頑張るよりもしっかりと方向性を定めて具体的に頑張る方が達成しやすいものです。
フレームワークは考え方の枠組みやシステムを指します。このフレームワークによく使われるのがSMARTの法則です。
SMARTの法則とは?
SMARTの法則とは、ジョージ・T・ドラン氏が1981年に発表した目標設定法です。
目標達成を実現させるためにドランは『Specific』、『Measurable』、『Assignable』、『Realistic』、『Time-related』という5つの成功因子で構成することを提唱しました。
『Specific』:具体的であること
『Measurable』:計測できること、数値化すること
『Assignable』:達成可能であること
『Realistic』:現実的であること もしくは『Relevant』:関連すること
『Time-related』:達成期限を設けること もしくは『Time-bound』:達成期限を設けること(意味は同じ)
このように40年以上前に作られた古い概念のシステムですが今日まで様々なシーンで活用されている優れたフレームワークでもあります。
『Specific』:具体的であること
「Specific」とは、具体的という意味で、「目標が具体的であるか」という基準で目標を立てます。
目標設定では、「誰が聞いても同じ認識を持てるほど明確な目標になっているか」が非常に重要です。
たとえば、「患者さんをよくしたい」とか「優秀なPTになる」という目標は、「何をもって患者さんが良くなったか」が人によって異なるため、明確とはいえません。
同様に優秀さもどの視点で何をもって優秀なのかを定義できなくては達成したかどうかが分かりません。
「在宅復帰率を80%超え」や「在院日数を60日以内」など、具体的であれば目標として機能します。
SMARTの法則による目標は、「Specific」すなわち具体性を持ったものでなければなりません。目標が抽象的では、目標を達成する具体的な行動も抽象的になりかねません。
そうなれば、目標達成から程遠くなるでしょう。
目標達成はゴールからの逆算で進んでいきます。
Specificな目標の具体例
たとえば、「優秀なPTを育てる上司になる」といった目標を立てたとします。
しかし、「優秀なPT」について具体的な定義がなければ、どのような側面が優秀なのか漠然としてしまいますし、具体的なアクションプランを生み出すこともできません。
- 運動器疾患に対し適切な整形外科徒手テストと評価に基づく考察が出来ること
- 接遇がしっかり出来て患者さんとの距離感が適切で信頼関係を構築できること
- 最終ゴールに向けて逆算し適当なタイミングで練習内容のステップアップが出来ること
など具体的な目標を掲げることにしましょう。この具体性は他人に目標を説明し納得できるくらい分かりやすくなければいけません。
アバウトなままか具体的に出来ているかを知りたかったら、一度自分に向き合って達成できるかどうかを尋ねてみましょう。達成できると判断出来たらそれは具体的です。
また第3者に説明しても良いでしょう。相手が首をかしげる場合はまだ漠然とした目標かもしれません。
『Measurable』:計測できること、数値化すること
「Measurable」は測定(計量)できるものです。つまりは数値化することで有効性の高い目標管理を実施していきます。
なぜこの数値化や計量的な目標が大切かというと、現状と目標までの距離感が分かるからです。
テストの目標が90点であった場合、最初は40点で現状は65点であればあと25点の距離までゴールに近づいていると言えます。
体重管理であっても、筋力やマラソンのタイムでも比較することでゴールに対して近づいたのか遠のいたかが一目瞭然です。
Measurableの目標の具体例
- 有酸素運動の負荷を40~60%HRで20分以上継続できるようになる
- 下肢筋力の一つとして膝伸展筋力体重比を30%以上に設定する
- 毎月3回以上のブログの記事を更新する
- 投稿記事を100記事書く
など数値化することで目標はより具体的でコントロールしやすくなります。また、現状の位置とゴールまでの進捗状況を知るために非常に有効です。
『Assignable』:達成可能であること
「Achievable」とは、達成可能性を意味する言葉です。
より高い成果を求めて、非現実な目標を設定してしまうとうまくいかないので注意が必要です。
目標の設定には本人にとって達成が可能なレベルかを知って作るべきです。
ここでは特に個別性が高くなるのでチームで作る目標であれば個人の能力や性格といった特性も踏まえましょう。
PT協会の部会に全て入部し全ての部会の会議と研修に参加すると目標設定してしまうと、研修日や会議の日にちや時間も被るかもしれませんし、睡眠時間やプライベートな時間も全く無くなってしまうかもしれません。
これでは有効な目標とは言えず無謀な目標となってしまいます。
Achievableの目標の具体例
- 心臓リハビリテーション指導士の試験日までの4か月を毎日1時間以上の勉強をする。もしくは毎日テキストを20pは読み込む。
- 毎日必ず、職場ですれ違う人に挨拶をする
このように目標は、達成可能な範囲で設定しなければいけません。実際にこの目標では1番目は最終目標は資格取得であれば途中で目標を変更するかもしれませんが、2つ目の目標であればまず間違いなく達成可能な目標と言えます。
自分では出来ると思っていても実際に行うと心が折れるケースも珍しくありません。まずは小さい目標を立てて自分がどの程度の目標を達成できるかを知っていくことも大切です。
『Realistic』:現実的であること
「Realistic」は現実的であることです。達成可能であっても地獄の猛特訓など自分が達成するにあたって大きなリスクを伴うものや、机上では達成できそうでも、実際には体力や時間、プライベートと仕事の両立で現実的でない場合もあります。
Realisticの目標の具体例
- 週に2回はブログの投稿記事を作成する
- 月に1回以上は研修会に参加し伝達講習会を行う。
毎日記事を更新するといった目標や休日を全て研修会に参加するなどは達成可能な目標であっても現実的ではなく、モチベーションも相当に高いものを長期間維持しなくてはいけなく現実的とは言えません。
達成可能で且つ現実的であることが求められます。
Rが「Relevant」:関連することの場合
目標を達成した先には何があるのか?何のために目標を達成するのか?
では少し考えてみましょう。自分は生理学が好きで疼痛モデルや疼痛緩和に興味がある。目標は在宅復帰率の向上と在院日数の短縮です。
その場合、疼痛が減少すれば運動量を増やすことが出来るのでこの目標は『関連』していると言えます。
また自分の価値観と目標にも関連があります。
次に在院日数が長期化するのは疼痛が強いためだった場合、疼痛緩和は在院日数の短縮に関連していると言えます。
このように目標と価値観や、目標と目的の両者の関係性が明確になることで、モチベーションの向上と維持が叶うからです。
Relevantの目標の具体例
前述したように、SMARTの法則では「組織の目標と関連づいている」ことや「自分の将来や利益に関係する」ことを示します。
個人が掲げた目標が、組織の目標に影響するか関連することで、個人の目標達成が会社の利益につながります。
目標達成が対象の社員にとってメリットがあることも重要です。「目標達成が人事評価につながる」「昇進の可能性がある」「キャリアアップにつながる」などさまざまです。
目標達成によって、得られるものがあることでモチベーションが上がり、目標達成につながりやすくなります。
『Time-related』:達成期限を設けること
Time-boundは「期限を定めた」という意味で、目標に期限があるかを確認する項目です。
この期限は具体的であることと同様に非常に重要な設定です。期限がないと目標達成が先延ばしになってしまいます。
「○○日まで」と計画を立てることで、作業への集中力があがり、業務のスピードを高められます。
この達成期限が無ければ目標に向けての具体的な行動は全て生じないと言っても過言ではないでしょう。
Time-boundの目標の具体例
- 就職後2年までに症例発表を行う。
- 半年後の海開きまでに体重を10㎏落とす。
このようにいつまでと期限を設けることで確実に目標に向かって行動する事が出来ます。
実際にSMARTを用いて目標設定をしてみましょう
良いリハビリの定義を数値化するために平均在院日数や在宅復帰率に充ててみました。
ただし具体性に関してはもう一つ、目標を達成するための課題を具体的に抽出する必要があります。
例えば疾患別のリハビリ内容で苦戦しているのかADLの達成が遅いのか、栄養状態が十分にモニターしきれていないのかなど評価と考察が必要です。
途中段階は自分の状況や目標が分かればドンドンとSMARTは進化して、より良い目標設定が出来ると思います。
最後に
今回のお話は目標達成のための思考整理法のSMARTでした。
何から手を付ければいいのか分からない人は是非参考にしてみて下さい。