長掌筋の概要
前腕前面の中央を走る手関節屈曲(掌屈)筋。上腕骨から起始し、手掌腱膜に停止する二関節筋です。長掌筋の腱は拳を握りながら掌屈させたときに手首の中央に浮き出ます。
手関節掌側で観察される長掌筋腱は他の屈筋腱を確認するうえで重要なランドマークとなります。
長掌筋腱の橈側には橈側手根屈筋腱、尺側には浅指屈筋腱があり、更にその尺側には尺側手根屈筋腱が走行しています。
長掌筋が先天的に欠損している例は比較的多くその欠損率は4~16%と言われています。
長掌筋の特徴
長掌筋は手掌筋膜に緊張を与えつつ手関節の掌屈に作用します。また肘関節の屈曲ならびに前腕の回内にも補助的に作用します。
長掌筋腱をランドマークに周囲の構造を覚えておきましょう。
筋肉データ
項目 | 内容 | ||||
神経 | 神経支配:正中神経(C7~T1) | ||||
起始 | 上腕骨内側上顆(共通屈筋起始部) | ||||
停止 | 手掌腱膜 | ||||
作用 | 手関節の掌屈、前腕の回内と屈曲の補助 | ||||
筋体積 | 10㎤ | ||||
筋線維長 | 7.1cm | ||||
速筋:遅筋(%) | ーーーーー | ||||
PCSA | 1.4㎠ | ||||
栄養血管 | 尺骨動脈 |
臨床での観点
長掌筋は手関節屈筋の一つであるが、欠損例においても特に機能障害を呈することはないので臨床的には手関節屈曲の補助筋と言えます。
長掌筋腱は非常に長い腱を有しており陳旧性肘関節不安定症例に対する再建材料としてまた屈筋腱損傷、伸筋腱損傷では断端部に大きなギャップが生じた場合などの移植に用いられます。
内側型投球障害肘では長掌筋の筋腹に強い攣縮と圧痛を呈する例が多いです。
関連疾患
・長掌筋断裂
・正中神経麻痺
・投球障害肘
・屈筋腱損傷
・伸筋腱損傷
・陳旧肘関節不安定症