アイソメトリック運動とは
アイソメトリック運動とは、筋肉に力を入れて収縮させながらも、関節は動かさずに行う運動です。英語では isometric exercise と呼ばれます。筋肉の長さや関節角度を大きく変えずに力を発揮するため、痛みがある時期やリハビリ初期でも取り入れやすい方法として使われます。
どんな場面で使うのか
アイソメトリック運動は、けがや手術のあと、関節を大きく動かすのがまだ難しい時期や、痛みを強く出さずに筋活動を入れたい場面で使われます。完全な安静だけでは筋力低下が進みやすいため、患部を守りながら筋力維持や再開のきっかけを作る方法として用いられます。
何をしているのか
この運動では、筋肉は収縮していますが、関節運動はほとんど起こしません。たとえば、壁を押す、一定の姿勢を保つ、反対の手で動きを止めながら力を入れる、といった形で行います。関節を大きく動かさずに筋に刺激を入れられるため、低負荷で始めやすいのが特徴です。
臨床でよく出る場面
理学療法では、疼痛がある時期、術後早期、腱や関節に過度な負担をかけたくない場面、筋力低下を予防したい場面などで使われます。自宅で行いやすく、器具なしでも実施できることが多いため、セルフエクササイズとして指導されることもあります。
- 術後や受傷後の早期
- 関節を大きく動かすと痛いとき
- 筋力低下を予防したいとき
- 腱や関節への負荷を抑えたいとき
- セルフエクササイズを始めたいとき
- 低負荷で運動を再開したいとき
代表的な例
代表例としては、プランク、壁押し、壁にもたれて行うスクワット姿勢の保持、肘を90度で止めて行う上腕二頭筋の保持、反対の手で抵抗をかけながら手関節を動かさずに力を入れる運動などがあります。いずれも「力は入るが、関節はほとんど動かない」ことが共通しています。
やり方の目安
一般には、痛みのない範囲で軽くから中等度の力を入れ、数秒間保持して繰り返します。リハビリでは、まず短い保持時間から始め、症状をみながら回数や保持時間を増やしていくことが多いです。痛みがある場合は、力の入れ方を弱めて調整しながら行います。
注意したいポイント
アイソメトリック運動は関節をあまり動かさないため始めやすい一方で、強く力みすぎると痛みや筋緊張が増すことがあります。そのため、痛みのない範囲で行うこと、無理に最大 effort で行わないこと、症状が増悪する場合は負荷を下げることが大切です。息を止めず、自然な呼吸を続けながら行うことも重要です。
- 痛みのない範囲で行う
- いきなり強く力を入れすぎない
- 症状が増える場合は負荷を下げる
- 保持時間は短い時間から始める
- 息を止めずに行う
- フォームが崩れない範囲で行う
評価でみるポイント
理学療法評価では、どの筋を狙っているのか、関節を動かさずに力が入れられているか、痛みなく実施できるか、代償動作が出ていないかを確認します。また、保持時間、疲労の出方、左右差、日常生活動作へのつながりも合わせてみていきます。
- 狙った筋に力が入っているか
- 関節が余計に動いていないか
- 痛みの有無
- 代償動作の有無
- 保持時間と疲労の出方
- 左右差
- 呼吸が止まっていないか
- 動作につながる使い方になっているか
注意したい症状
運動中に強い痛みが出る、しびれが出る、力が急に入らない、腫れや熱感が増すといった場合は、単に運動負荷の問題だけでなく、損傷や炎症が強い可能性もあります。症状が続く場合や悪化する場合は、医療機関や担当療法士に相談することが重要です。
対応の基本
アイソメトリック運動は、関節を守りながら筋活動を入れられる点が強みです。ただし、それだけで終わるのではなく、症状や回復段階に応じて、アイソトニック運動や実際の動作練習へつなげていくことが大切です。リハビリでは、まずアイソメトリック運動で痛みや筋活動を確認し、その後に関節運動を伴う練習へ段階的に進めていくことがよくあります。
ひとことで言うと
アイソメトリック運動とは、関節を動かさずに筋肉へ力を入れる運動であり、痛みがある時期やリハビリ初期にも使いやすい筋力トレーニングの方法です。