長橈側手根伸筋
前腕後面の最も外側にある筋であり、腱は手の甲の伸筋支帯の第2管を通過して第2指で停止。手関節撓屈を伴いながら背屈する動作で働く。手関節の近位背側では長母指外転筋と短母指伸筋の筋腹が長・短橈側手根伸筋の上方を横切るように走行し総指伸筋の深層へと進入します。この部分はインターセクションと呼ばれます。
長橈側手根伸筋の特徴
長橈側手根伸筋は手関節の背屈と撓屈に作用し肘関節では屈曲に作用します。
短橈側手根伸筋も手関節の背屈と撓屈に作用しますが停止が中指の中手骨底となるため撓屈作用は長橈側手根伸筋に比べ弱いです。
筋肉データ
項目 | 内容 | ||||
神経 | 神経支配:橈骨神経の深枝(C6~7) | ||||
起始 | 上腕骨の外側顆上稜及び外側上顆に至るまでの外側筋間中隔 | ||||
停止 | 第2中手骨底の背側面 | ||||
作用 | 手関節の撓屈、背屈、伸展、肘関節の屈曲 | ||||
筋体積 | 38㎤ | ||||
筋線維長 | 14.1cm | ||||
速筋:遅筋(%) | ーーーーーー | ||||
PCSA | 2.7㎠ | ||||
栄養血管 | 橈骨動脈 |
臨床での観点
上腕骨外側上顆炎(テニス肘)は外側上顆に起始する筋腱の付着部炎です。その疼痛の発生には短橈側手根伸筋が強く関係しています。
長橈側手根伸筋は外側上顆に付着がないため疼痛発生の引き金とはなりません。役割としてどちらも手関節の背屈を持ちますが、より撓屈作用が強いのが長橈側手根伸筋です。
外側上顆炎に対する保存療法として短橈側手根伸筋に対する個別的ストレッチングは症状改善に有効です。また、この短橈側手根伸筋の炎症や過剰な収縮・過剰な伸長は骨付着部に対するストレスとなって外側上顆炎を引き起こしす。
そのためテニスエルボーバンド(テニスの肘サポーター)は短橈側手根伸筋の収縮張力を軽減するための装具療法となります。
後骨間神経麻痺(回外筋症候群)の大きな臨床的特徴は下垂手ではなく下垂指を呈する事です。
これは回外筋に進入する前に長・短橈側手根伸筋に神経の枝が分布しその機能が失われないために起こる現象です。
肘離断性骨軟骨炎に生じる屈曲拘縮の原因として腕橈関節の関節包に接する長橈側手根伸筋は治療上重要な組織と言えます。
また長・短橈側手根伸筋はセットで覚えてしまいましょう。どちらも背屈作用がありますので長橈側手根伸筋を活用することで短橈側手根伸筋を休ませることが可能です。
そのため運動療法としても有用です。
外側上顆炎の際の運動療法
長橈側手根伸筋を活用しましょう。上記の画像を見ても分かると思いますが長橈側手根伸筋は外側上顆の上の外側上顆稜に伸びているのでこの筋群の活動を利用すれば背屈時も短橈側手根伸筋の負担を減らせます。
例えば重たいものを持つ場合は前腕回外位にするか前腕回内外中間位に指導します。これは手関節の掌屈を防ぐためです。テニス肘の記事でも書いたのですが中指伸展やトムゼンテストなど手関節が背屈する際などに疼痛が著明になるので、撓屈を使いたいですよね?
回外位なら上腕二頭筋や手根屈筋などを利用しますし中間位なら外部モーメントは尺屈方向に働くので撓屈作用の強い長橈側手根伸筋が優位に働き短橈側手根伸筋を休ませます。
テニス肘に関してはこの記事を読んで下さい
-
肘が痛い?上腕骨外側上顆炎(テニス肘)とは?その病態と治療法を説明します
上腕骨外側上顆炎とは? テニスのバックハンドストロークで発症することが多いため別名テニス肘と呼ばれるように ...
続きを見る
関連疾患
・上腕骨外側上顆炎(テニス肘)
・長橈側手根伸筋腱断裂
・後骨間神経麻痺