大円筋の概要
脇の下に位置し、広背筋などと共に脇の下の後腋窩ヒダを形成します。
また広背筋を補助する働きをするため、大円筋は『広背筋の小さなヘルパー』とも呼ばれています。
大円筋は肩甲下筋の分かれたものであると言われています。
さらに、同じ原基(分化するまえの細胞)から生じる広背筋と遺伝的にも密接に関係しています。まさに広背筋のヘルパーですね。
大円筋、小円筋、上腕三頭筋長頭の3つの筋によって取り囲まれる三角形の隙間は内側腋窩隙(triangular space:TS)と呼ばれ肩甲回旋動脈・静脈が通っています。
また大円筋、上腕二頭筋長頭、小円筋、上腕骨の4つによって囲まれる四辺形の隙間は外側腋窩隙(quadrilateral space:QLS) とよばれます。ここは腋窩神経と後上腕回旋動脈・静脈が通っています。
大円筋と広背筋は下角より遠位の走行がほぼ一致しているため十分な鑑別が必要です。
QLSの図
TSの図
大円筋のポジションによる作用の変化
大円筋の作用は肩関節の伸展・内転・内旋です
大円筋は90°屈曲位では内旋と伸展に作用します。
90°外転位では内旋と内転に作用します。
ポジション | 作用 |
90°屈曲位 | 肩内旋・伸展 |
90°外転位 | 肩内旋・内転 |
大円筋の特徴
後方から体を見た特に正に逆三角形を作る腋窩の張り出した部分はこの大円筋のボリュームです。
そのためボディメイクなどでは特に意識される筋肉ですね。
広背筋の小さなヘルパーと呼ばれるだけあって、バックの筋肉中でも最大の面積を誇る広背筋を鍛える動作では、ほぼ同様に大円筋も鍛えることになります。
肩甲上腕関節の内転動作からも特に強く使用するのは、ロッククライミングなどで上腕を外転・挙上位の状態から伸展・内転するときには特にこの筋肉は働きます。
この際に働く筋肉のフォースカップルは肩甲骨をある程度可動・固定させる必要がありますので肩甲骨の下方回旋などで内転動作をサポートする菱形筋などとの協調動作が必要です。
大円筋のフォースカップル
大円筋は肩甲上腕関節の内転に対して広背筋や菱形筋と協調して肩甲骨の下方回旋を伴いながら肩関節の安定した運動に寄与します。
筋肉データ
項目 | 内容 | ||||
神経 | 神経支配:肩甲下神経(C6-C7) | ||||
起始 | 肩甲骨の外側縁・下角 | ||||
停止 | 上腕骨の小結節稜 | ||||
作用 | 肩関節の伸展・内転・内旋 | ||||
筋体積 | 231㎤ | ||||
筋線維長 | 14.8cm | ||||
速筋:遅筋(%) | ーーーーーー | ||||
PCSA | 15.6㎠ | ||||
栄養血管 | 肩甲下動脈、肩甲回旋動脈 |
臨床での観点
肩関節周囲炎では大円筋の圧痛、痙縮ともに強い症例が多く可動域制限の原因となる。
また棘下筋のストレッチをする際に上腕の角度を棘下筋の延長線上にポジションし水平内転させることでストレッチできますが、大円筋が短縮して外転制限が起きているときは先に大円筋のストレッチを行う必要があります。
関連する疾患
・肩関節周囲炎
・投球障害肩
・肩甲下神経麻痺