小円筋(ローテーターカフ:回旋筋腱板)
teres minor muscle
(テレス・マイナー・マッスル)

小円筋の概要

前額面上で棘下筋の下で大円筋の上方に位置する筋肉。この筋は、大円筋、小円筋、上腕三頭筋長頭の3者によって取り囲まれる三角形の隙間は内側腋窩隙triangular spaceと呼ばれ、ここを肩甲回旋動静脈が通っている。また大円筋、上腕二頭筋長頭、小円筋、上腕骨の4者によって囲まれる四辺形の隙間は外側腋窩隙quadrangular spaceとよばれる。ここは腋窩神経と後上腕回旋動脈が通っている。

ルーズショルダーの原因の一つに小円筋のを含むローテーターカフの機能低下がある。

小円筋は腱板を形成する4つの筋群の一つでである。

小円筋の関節包側の線維群は関節包の後下方部に直接付着しています。また近年の研究で小円筋は大結節後縁下部に面で停止する上部筋束と外科頸に線状に停止する下部筋束があることが分かってきました。

また小円筋は起始から停止部に捻じれて走行しているため後方から観察すると棘上筋側の(上側)の起始部は停止部では下部筋束になり起始部が遠位部(下側)の線維は停止では上部筋束となります。

ここの表現は字だと分かりづらいと思うのでイメージしてもらえると助かります。

 

小円筋の特徴

小円筋は挙上位における骨頭の安定化とともに90°屈曲位での外旋に作用します。

小円筋は肩関節外旋時の後方関節包の挟み込みを防止するとともに挙上における関節包の緊張を高め骨頭を支持します。

一見すると紡錘状筋に見えますが1つの短い筋内腱を有する羽状筋であり、筋内腱は筋外腱のほぼ中央に移行しています。

筋線維束の走行から上部線維、下部線維の2部位に分けられるが、その筋体積、生理学的筋断面積の大きさに一定の関係は示されないのでどちらが大きく作用しているのかは断定できません。

小円筋は棘下筋と同様に外旋作用を持ちますが、外転に伴いその作用は低下することが報告されています。(Otis,1994)

走行的には90°外転位では水平外転に若干の作用を有すると考えられます。しかし付着部が短いので大きな作用とはなりません。

羽状筋の特徴は収縮する距離が短かく動的な運動に寄与するよりも強い収縮力で安定性寄与する筋肉なのでローテーターカフにぴったりな形状だと言えます。

ローテーターカフ(回旋筋腱板)とは

ローテーターカフは、肩甲骨に起始し上腕骨に停止する肩甲下筋、棘上筋、棘下筋、小円筋の総称である。肩関節の内旋・外旋をもつことが語源(rotator:回転するもの)。

薄い腱が上腕骨頭を覆うように停止していることから回旋筋腱板とも呼ばれ棘下筋を除く3つの筋は深層に隠れています。

これらの筋には上腕の回旋だけでなく肩関節をひきつけて安定させるという重要な役割もあります。

肩関節は他の関節と異なり強い靱帯を持たない。従って可動域が大きい代わりに安定性が低いという問題があります。

ローテーターカフは上腕骨頭が肩甲骨から外れないように引き付け他の関節における靱帯のように振舞う

肩関節は筋によって保護された関節といえます。

3筋(小円筋・棘下筋・棘上筋)の停止部にあたる上腕骨頭の大結節は三角筋に覆われています。

筋腹や起始部も僧帽筋に覆われているが棘下筋の筋腹のみ表層にあります。

ローテーターカフの4つの筋のうち肩甲下筋のみ肩甲骨の前面から起始し上腕骨を引き付けています。

またそれぞれの腱板の厚みは約6mm程度だと言われています。

 

棘上筋:上腕骨頭を関節窩に直接圧迫します

肩甲下筋、棘下筋、小円筋:上腕骨頭に下向きの並進力を生みます

棘下筋、小円筋:上腕骨頭を外旋する

筋肉データ

項目 内容
神経 神経支配:腋窩神経(C5-C6)
起始 肩甲骨後面の外側縁
停止 上腕骨の大結節下部、肩関節包
作用 肩関節の外旋・安定化
筋体積 39㎤
筋線維長 5.7cm
速筋:遅筋(%)  -------
PCSA 6.8㎠
栄養血管 肩甲上動脈、肩甲回旋動脈

臨床の観点

投球障害肩では小円筋の圧痛、痙縮ともに強い例が多く後方部痛の一要因です。また棘上筋の単独断裂例における腱板筋群の萎縮を検討した研究では棘下筋・肩甲下筋には萎縮が出現するのに対して小円筋には萎縮が生じにくいことが分かっています。

肩甲上神経麻痺では肩下垂位、90°外転位の外旋筋力は著明に低下するが90°屈曲位での外旋筋力は小円筋の作用により保たれるのが特徴です。

関連する疾患

・肩関節周囲炎

・投球障害肩

・腱板損傷

・腋窩神経麻痺

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