歩行

歩行とは~歩行の基本的知識と観察による歩行分析~

歩行とは

歩行とは主に脚を利用して荷重をかけながら推進方向へと移動する手段を指します。人類は直立二足歩行ですが、他の多くの動物は四足歩行を行います。類人猿などでは手として前脚が発達しており、歩行時に拳を作るようにして手を利用して四足歩行の様な歩行をします。

これをナックルウォークと言いますが、直立に立つことが出来る動物でも完全に二本の脚で歩行するのは人類だけということですね。

人間の歩行は他の動物とは違い完全直立二足歩行ということで他の動物とは全く異なる形態で歩行をします。また、歩行は個人や文化的側面、心身の状況によってその歩容を変化させます。

①個人的要因

身長や下肢長、上肢のスイングなどによってストライドや歩行率が変化します。

②文化的側面

昔の日本人は、なんば歩きという上肢の振り子と下肢のスイングを同側で行うことで骨盤の回旋である『ひねり』を少なくした歩行をとっていました。また袴ではすり足を行いますし、剣道や相撲の様になんばの動作が基本となっている歩行もあります。またモデルであれば脚を長く見せるように歩隔の小さな歩行もありますね。

③心身の状況

脚長差や麻痺などによる跛行や中殿筋力の低下によるトレンデレンブルグ歩行もありますが、嬉しいときは視線は上を向いて床反力が大きくスキップに近くなっていきますし、落ち込んでいるときは視線は下を向いて床反力の小さな『トボトボ歩き』がみられます。

歩行はこのように様々な要因や様式美をもつ運動ですが、理学療法としては正常歩行や健常歩行、異常歩行の勉強がメインになりますね。

次は各用語について説明したいと思います。

歩行の用語

ステップ長(step)

一歩の歩幅(片足の踵接地地点から反対側の踵接地地点までの距離)

ストライド長(stride)

左右の歩幅を合わせた長さ。運動器の機能能力と観察肢ならびに反対側の単脚支持期と遊脚期の時間的長さに対して状況を推測できる。正常なストライド長の平均は約1.4mであるが、身長比で変化します。

ストライド長=歩行した距離(m)×2/要した歩数

歩隔(step width)

左右の踵の中心間の幅

足角(toe angle)

足の長軸の進行方向に対する角度。歩行時の歩隔は進行方向に対し直角に計測され標準地は5~13cmである(Whittle,2001)静かに立っているときは足の長軸は進行方向に対してそれぞれ7°外旋している。この足の軽度外旋(toe out angle)は歩行の時も見られます。

歩行速度

m/s(m/秒)で表されることが多く、平均速度などは1.4m/秒ないし84m/分が多く採用されている。また経済速度の指標などでは時速3.8~4.2㎞/時なども利用されます。

このように歩行速度は秒速、分速、時速で表されます。日本の文献などでは秒速が多く用いられますが、文献によっては分速もよく見られます。これはケーデンスとの互換性の良さからよく使われるそうです(歩数/分)

歩行速度(m/秒)=距離(m)/時間(秒)

ケーデンス

1分間当たりの歩数のことです。両下肢は歩行の際に振り子のように下肢長と反比例したある決まった周期(ケーデンス)で振れます。これは一般的に小柄な人ほど大きな(多い)ケーデンス(歩行周波数)で歩くことを意味している。標準ケーデンスは約120歩/分であり、ケーデンスの正常範囲は年齢、性別、脚長や精神状態で幅広く変化しますので100~130歩/分程度だと言われています。

ケーデンスは基準となる歩行距離がとれない場合や時間がないとき、患者が1分間も歩けない際にも産出することが出来る。任意の時間を少なくとも10秒以上歩行してもらい歩数を数えることで採用できます。この方法は100%正確でないにしても臨床的に有効です。

ケーデンス(歩数/分)=数えた歩数×60/歩数の数え始めから数え終えた時間(秒)

歩行速度はケーデンスにストライド長を乗じた値を2で割ったものです。したがってこれらの3つ内2つが分かれば残りも算出できます。

歩行速度(m/分)=(ケーデンス×ストライド長)/2

ストライドタイム

ストライドタイム(2つの歩数が要する時間を秒で表したもの)=120/ケーデンス(歩数/分)

1分間の歩行が困難な場合には代替として10秒間歩数をカウントします。

歩数の数え始めから数え終えた時間(秒)×2/カウントした歩数

歩行速度(m/秒)=ストライド長(m)/ストライドタイム[2歩分の時間(秒)〕

標準ケーデンスは約120歩/分です。それはストライド(2歩)が1秒かかっていることを意味します(Whittle2001,kirtley2002)

ストライド長を確定するための方法

①水性フェルトペンを患者の両方の踵へテープで固定し、1歩ごとに床に印がつくようにする。

②足の裏にタルクパウダーを付けるか、インクをしみこませた両面テープ付きフェルトを固定する。そして足跡を計測する

ランチョ・ロス・アミーゴ方式の歩行周期の各相の名称

ランチョ・ロス・アミーゴ方式の歩行周期の英和略語

歩行周期の各相の役割

立脚期の相の流れ

遊脚期の相の流れ

第1相 初期接地(イニシャルコンタクト):歩行周期の0%

 

歩行周期の終わりと始まりはイニシャルコンタクトで定義されます。主に踵が地面に接触する瞬間です。(ヒールコンタクト)このタイミングにおける関節のポジションが衝撃の吸収の度合いを決定します。

この相の役割

立脚期をヒールロッカーで始められる脚のポジションにしておくこと

黒い線は床反力の線です。イニシャルコンタクトのタイミングでは床反力線は膝関節の前方を通るため膝は外部モーメントによって伸展します。(伸展モーメント)また足関節の回転軸の後方に床反力線が通るので足関節には底屈モーメントが発生します。股関節も同様に矢印を直上の床反力線から引っ張ると分かりますが屈曲モーメントが入ります。体幹は股関節の屈曲に伴い前傾する力が働いています。上記の図でも外部モーメントを赤い矢印で示しています。しかし、このままでは体幹の正中位保持は困難ですので筋が内部モーメントとして働き外部モーメントと拮抗します。

このイニシャルコンタクトが歩行においては非常に重要です。

第2相 過重応答期(ローディングレスポンス):歩行周期の0~12%

 

始まり:初期接地で始まる

終わり:反対側の脚が地面から離れた瞬間です。この相では体重が素早くほぼ真っすぐに伸ばされた脚に移ってくきます。

これは1回目の両脚支持期です。

この相の役割

衝撃緩衝

荷重を受け継ぎつつ安定性を確保

前方への動きのキープ

 

第3相 立脚中期(ミッドスタンス):歩行周期の12~31%

 

左図:ミッドスタンス早期(MSt,early)右図:ミッドスタンス後期(MSt,late)

始まり:反対側の脚が地面から離れた瞬間(トゥオフ)

終わり:観察肢の踵が床から離れた瞬間(身体重心は前足部の直上)

この相の役割

地に着いた足を支点とした前方への動き

脚と体幹の安定性の確保

第4相 立脚終期(ターミナルスタンス)歩行周期の31~50%

始まり:観察肢も踵が離れた瞬間

終わり:反対側のイニシャルコンタクト。この相と共に単脚支持が終わる

この相の役割

身体を支持足よりも前へ運ぶこと

 

 

第5相 前遊脚期(プレスイング):歩行周期の50~62%

 

始まり:反対側のイニシャルコンタクト

終わり:観察肢の爪先が床から離れた瞬間。この相は2回目の両脚支持期です。

この相の役割

観察肢のイニシャルスイングの準備

第6相 遊脚初期(イニシャルスイング)

 

歩行周期の62~75%

始まり:観察肢のつま先が床から離れた瞬間

終わり:両側の下腿が矢状面で交差した瞬間

この相の役割

床から足を離すこと

観察肢を前に運ぶこと

第7相 遊脚中期(ミッドスイング):歩行周期の75~87%

 

始まり:両側の下腿が矢状面で交差した瞬間

終わり:遊脚肢(観察肢)の下腿が床に対し直角になった瞬間

この相の役割

観察肢を引き続き前に運ぶこと

観察肢の十分なトゥクリアランスの確保

第8相 遊脚終期(ターミナルスイング):歩行周期の87~100%

 

始まり:観察肢の下腿が床に対し直角になった瞬間

終わり:観察肢の足が床に触れた瞬間(イニシャルコンタクト)

この相の役割

観察肢を前に運ぶことの終了

観察肢の立脚の準備

 

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