コールドパックとは
市阪されているコールドパックは、シリカグル(silicagel)を防水加工製のビニール袋に詰めたものであり身体の部位の大きさに合わせられるようにさまざまなサイズのものが揃えてある。通常専用の冷却器あるいは冷凍庫のなかに入れー5〜0Cくらいになるまで十分冷却して患部に適用する。しかし、コールドパックは使用頻度が高いので汚れやすい。したがって、いつも清潔に保つよう心がけるべきである。コールドパックではアイスバッグと比べ皮膚温度はそれほど急激に低下しない。しかし、温度変化が穏やかであるため寒冷療法を嫌う患者には適している。
またコールドパックは冷凍しても硬くならないので身体の形状に割と適合させやすく、しかも軽いので水を多量に含むホットパックのように血行を阻害するようなことはない。加えてビニール製の袋が丈夫であるため、アイスバッグのように破損することはまずないので20〜30分間はほぼ一定の温度を維持できるのが特徴である。
1人の患者の治療が終わり、ふたたび別の患者に使えるようになるまでには少なくとも20〜30分間冷凍庫で冷却する必要がある。
理学療法の寒冷療法の中では比較的使いやすい部類に入ると思います。熱エネルギーは高いところから低いところに移動するので冷たいものを当てればそれだけで患部を冷やすことが出来ますが、温度だけでなく比熱や熱伝導率、接触面積などが重要です。
冷たい氷などで冷やすと凍傷のリスクも上がりますし、患者さんによっては不快感を示すこともあります。物理療法では快刺激であることが重要です。
冷却時間が長時間必要なものは温度変化が少ないということなのでそれだけ不快感も少ないです。しかし、効果が低いという訳ではありません。その分だけ接触面積を増やすことで十分な寒冷療法を得られます。
実施方法
①冷却装置の温度がー10C前後に維持されているかチェックする
②パックは冷却装置(あるいは冷凍庫のなかで)で少なくとも2〜3時間冷却されていること
③タオル、シーツなど必要なものを用意しておく
患者への対応とチェック
①患者にこれからの手順と注意を説明するが、この際、特に治療中における皮膚感覚の変化、異常が生じた場合我慢しないで必ずセラピストに告げるべきことを強調する
②患部のチェック:パックをあてる皮膚の感覚が正常かどうかをチェックする。すなわち、温度覚、痛覚をチェックする。また患部の血行状態、傷の有無などもチェックしておく。患者によっては寒冷刺激に過敏な反応を呈するものがあるので注意する。どんな場合でも凍傷にかかった部位に対する寒冷療法は禁忌である。
③患部に濡れたタオルをあてる。患部は露出させ、患者の衣服が濡れないよう必要に応じてシーツ等で保護する。ついでタオルを水で湿らせ余分な水を絞り、患部にあて、その上から適当な大きさのパックを均等にあてる。この時、患者の患部にきちんとパックがあたっているかどうか確認するとよい。
④パックの上から乾いたタオルあるいはシーツをあてパックを固定する。
治療後のチェック
①パックとタオルを患部から除きパックを冷却装置に戻す
②患部をタオルでふき乾燥させる.。この際、患部に異常がないかどうかチェックする
冷凍庫で2時間から3時間の冷却時間が必要ですので、それなりの個数を用意しておく必要がありますが、コストが安いので比較的容易に準備できます。
また冷やすだけで使用できるので管理もお手軽で使い勝手のよい物理療法だと思います。
臨床適用
コールドパックがとくに関節可動域の改善に有効であったという報告はRockfellerによりなされている。彼によると、コールドパックによって痛みが軽減し関節可動域が増加した。これはとくに寒冷療法と運動療法を併用した患者群に著明であった。一方Lorenzeらはコールドパックを筋スパズムや痛みの軽減,あるいは痙性緩和を目的として冠動脈障害を含む45名の片麻痺患者に用いた。その結果、大半の患者に症状の軽減がみられたが、1名の患者にコールドパック後に心電図異常を認めた。冠動脈に対する収縮が寒冷療法にあるという確実な報告は無いが重篤心疾患への利用は十分な注意が必要である。
寒冷療法にはRICE療法:Rest(安静)・Icing(冷却)・Compression(圧迫)・Elevation(挙上)の際に使用するアイシングの他にも二次的血管拡張作用による血流確保とそれに伴う筋スパズムの改善などの亜急性期~慢性期での使用もありますので患者さんの適応方法の幅を温熱以外にも持てるのは意義があるともいます。
特に怪我だけでなく運動後の冷却は筋疲労を改善させ関節腫脹や動脈への使用は熱中症の予防にも使えます。コールドパックの柔らかさのおかげで首や腋窩、大腿部などの曲線にもフィットしやすいので効果も高いです。