温熱療法 物理療法

ホットパック:hot packs

ホットパックとは

伝導熱を利用した温熱療法のなかで最も使用頻度が高いものです。

シリカゲルやベントナイトを木綿の袋でパック状にしたものを熱水(8090C)に十分浸したのち、バスタオルなどにくるみ患部に置いて温める。シリカゲルは吸水力が大きい(吸水後は約3倍の重量になる)うえに、30分以上の熱放出が可能である。

これらの特徴から、ホットパックは多くの場合湿熱療法(moist heat) として用いられる(湿熱ホットパック)。パックをビニールでくるみその上からバスタオルを巻く方法は蒸気や水蒸気を遮断することになるため乾熱療法(dry heat)になる。

乾熱性のホットパック(エレクトロホットパック)にはニクロム線などに通電し熱産生を起こさせパック状にしたものもある。電気が必要であるのでコンセントの位置やホットパック装置に患者がついている必要があるため使い勝手は湿熱ホットパックには劣るが衣服が濡れないので一長一短はある。

熱の伝導効果を考えると、湿熱が乾熱よりもすぐれている。水や水蒸気の伝導率は空気よりも大きいので同一温度のホットパックであれば、生体への熱伝導は湿熱のほうが乾熱より大きくなる。恒温浴(ハイドロコレータ)からホットパックを取り出しバスタオルでパックを810枚重ねにして患部に処方する湿熱、とパックをビニールで包んだあとにバスタオルを重ねる乾熱の温度変化の相違は次のとおりである。

湿熱温熱療法は乾熱温熱療法よりも温度の伝導が高いことがこの研究でわかる。

余談:エアコンで暖かくなったり涼しくなるのは空気が温まったり冷えたりしたからではありません。これは壁や天井が温まったり、冷えたことによる放射熱によるものです。

下記にありますが、空気の熱伝導率は非常に低く空気自体が温度変化している部分はわずかです。その証拠に窓を開けて換気しても10数秒後に閉めても直ぐに元の部屋の温度に戻ります。

お風呂に入るときも同様に空気が温まることはほぼないので冬の寒い日には壁にお湯をかけてみましょう。あっという間に壁が温まり放射熱で部屋全体が温まります。

乾熱ホットバックの外層温度は湿熱の場合と比較してそれぞれの時間経過で高い値を示しているが、乾熱によるタオル10枚めの温度は湿熱の10枚めのときに比べ著しく低くなり、乾熱のタオル3枚めの温度は湿熱10枚めの温度に相当するこの結果は熱伝導の違いにより生じた現象で、パックをビニールで覆う乾熱に比べ湿熱の熱伝導が大きいことを示唆している。

また、生体に両ホットパックを用いたときの結果では、パック施行時の皮膚温(乾熱3枚め、湿熱10枚めの温度比較)ではタオル枚数の違いがあるにもかかわらず、乾熱に比べ湿熱が高くなっているが、パック除去後の皮膚温は逆転している。

理学療法学 第16巻第 5 号(1989年)より引用

この皮膚温逆転は、下着に相当するタオルが水分を吸収した結果生じた現象で、篠原らは気化熱と水の熱伝導率の大きさにより湿熱ホットパック除去後の皮膚温の低下を引き起こしたと解釈している、彼らはこれらの結果から、湿熱ホットパックを用いるときは、衣服の上からあてるべきではないこと、乾熱ホットパックではタオル枚数を減らすことを強調している。

気化熱:ボイル-シャルルの法則であるとおり物体の温度は密度が薄くなると温度が低下します。分子の熱運動によって温度が高くなると分子の運動量が増加し衝突回数が増えるのですが、体積が増えると分子の衝突回数が減少するので温度は下がるのが理由です。水は蒸発して気化すると約1000倍の体積に広がりますが、熱エネルギーは保存されているので同じ質量でも体積が1000倍になればそれだけ熱は拡散され低下します。そのためホットパックの部分がビニールで閉じていても水蒸気が漏れていて衣服が湿っていると乾燥する際に気化した熱は低下するので周囲から熱を奪ってしまします。

濡れた手に息を吹きかけると蒸発するので涼しいですよね。この理由で冷えてしまうんですね。

またこの論文ではかかれていませんが、熱深達率が湿熱の方が高いので血管拡張作用が大きくなり放散熱が大きかった可能性も考えられます。

適応

(1)疼痛:打撲、捻挫、関節拘縮、リウマチ、変形性関節症、腱鞘炎、腰痛など(いずれも急性期は禁忌となる)

(2)筋スパズム(いわゆる肩こり)

(3)痙性(局所の筋痙性緩解)

禁忌

(1)あらゆる疾患の急性期

(2) 悪性腫瘍

(3)出血傾向の強いもの

(4) 知覚麻痺

注意すべきこと

火傷:低温火傷の危険性があるのでタオルの枚数が少ないと危険である。また知覚鈍麻や接触皮膚面の血流低下でも火傷のリスクはあがる。皮膚の許容限界温度は44℃である。

皮膚疾患:湿疹や水虫などは温熱により悪化することがある。

脱水症:2か所以上の実施では脱水リスクがあるので事前に飲水しておくか飲料水を用意すると安全である。

実施後の冷え:血管拡張作用もあり実施後は急速に温度低下するので発汗部位はタオルで拭いて衣服を着用することが望ましい

塗布薬のかぶれ:湿布や塗布薬の上から温熱療法を行うと薬品の深頭率が上昇し、かぶれなどの原因となる。

温熱作用には血管拡張作用があるため、皮下の毛細血管も拡張してしまい薬品の吸収量を増やしてしまいます。結果として皮膚がかぶれる原因にもなります。同様に服薬処方もアルコールと摂取すると血管が拡張しているので効き目が強くなってしまい、医師の想定する効果が得られなくなるので大変危険です。

生理学的作用

(1) 温熱作用

大腿前面の湿熱ホットパック施行前の皮膚温は約31℃、20分後のパック除去時の皮膚温は約41℃でありその差は10℃になる皮膚表面温度は約8分で最大となり約42℃である。また、身体部位により皮膚温が異なり頸部、腰部の皮膚温は膝部より約3℃高いが、ホットパック施行後の最高皮膚温は3部位ではほとんど変わらず41℃前後である。

つまり熱勾配により元の皮膚温に影響なくホットパックにより一定の温度までどの部位での上昇するということです。下がり幅の時間的変化は血管の表面積や皮膚の表面積、発汗による気化熱により異なります。

ホットパックの施行後20~25分で皮膚温が急激に減少するため、その施行時間は約20分が適当とされる。

深達度に関しては1~2cmの深さにある筋組織は温度上昇まで時間がかかり最高温度まで達するのに15分以上かかる。さらに3cmの深さにある筋では最大温度上昇でも1℃以下との報告がある。(福井)特に脂肪組織が多いところでは周囲の組織に比べ脂肪の比熱が低い(0.59cal/g.K)ため熱が脂肪に集中し筋組織に伝導しにくくなる。以上の事からホットパックは深部筋の温熱効果は弱くリラクゼーションや表面の筋スパズムへの対応と除痛がメインとなることが多い。

(2)血流の増加

皮膚内の血流は2倍以上に上昇する。これは血管拡張作用のあるヒスタミン様物質が分泌され毛細血管が拡張するために生じる。

(3)痙性の減弱

皮膚の受容器を加熱するとγ線維の活動低下を引き起こすことにより一過性に筋緊張の低下をもたらすと解釈されている。(α-γ連関の抑制)

(4)鎮痛

痛覚閾値が温熱により上昇すると考えられている。(ゲートコントロール)

 

 

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