物理療法 電気療法

TENS(経皮的電気刺激療法)

 

TENSとは

1965年にMelzackとWallが門制御理論を提唱して以来、電気刺激による除痛法(stimula-tion produced analgesia: SPA)として経皮的末梢神経電気刺激法(tracccalnerve stimulation: TENS) が脚光を浴びるようになりました。

その最大の効果は鎮痛効果です。 TENSがどのように痛みを抑制するかについてはこれまで多くの研究報告がなされています。そのなかでも神経性および生化学的鎮痛機序が有力だと言われています。

TENSの臨床効果

(1)過分極性および脱分極性ブロック

神経の形質膜は通電しない状態でも膜の内外で陰陽イオンが対峙する電気的2重層を形成しています。

これは形質膜における分極(poralization)という現象です。フルーガー(Pfluger)は神経に通電すると陰極の興奮性が高まり、陽極下では逆に興奮性が低下することを見出しました。

前者は陰極電気緊張(catelectrotonus)、後者は陽極電気緊張(anelectrotonus)とよばれています。この現象は形質膜の透過性が変化することによる分極の増減によって生じます。

すなわち、陰極の直下では分極が消失する脱分極の状態になるため興奮性が高まり、陽極直下では逆に分極が高まる過分極の状態になるため興奮性が低下する。この陽極直下で起こる電気緊張による興奮性の低下を過分極性ブロックと呼びます。

フリーゲル(Pfliigel)はその後、陰極においても強い電流を流すか弱くても長時間通電すると興奮性が低下することを見出しました。

この現象は陰極抑圧(cathodal depression)と言いますが、これを脱分極性ブロックと呼んでいます。

TENSによって電極下に生じた電気緊張(ブロック)は上行してくる疼痛インパルスの伝導を途中で遮断することになります。

細胞膜の内外には電解質が不均一に分布しています(内側はK+が、外側はNa+濃度が高い)

細胞膜が興奮していないときの膜電位を静止膜電位といいます。このとき、膜の内側はマイナスに、外側はプラスの電位となっています。(これを分極といいます)

こういう状態で安定しているのが細胞の通常の状態だと思ってください。その際になんらかの刺激によりチャネルが開くとこの細胞膜の中と外のイオン濃度が変化します。(イオンの移動)

このイオンの移動により膜の中と外の電位差が生じます。これが電気が発生している状態です。

膜が刺激を受けると、Na+に対する透過性が増大し、Na+は細胞内に流入する。プラスイオンが細胞内に流入するので細胞内はプラスに傾く(分極から脱出するという意味で脱分極)。

K+チャネルが開くと、K+は細胞外に流出する。プラスイオンが流出するので、細胞内はマイナスに傾く(再び細胞膜の中がマイナスに戻るので再分極)。

こういった電気の刺激が生じることで上行性の疼痛の刺激を邪魔(ブロック)します。

(2) ゲートコントロールセオリー

1965年、メルザック(Melzack)、ウォール(Wall)らは興奮が一次ニューロンから二次ニューロンに入る前のシナプス前抑制による鎮痛機序を仮説として提唱しました。

この機構は脊髄後角内で膠様質中の膠様質細胞(substatia gelatinosa cell:SG-cell) から痛みのインパルスを伝導するトランスミッションセル(T-cell)に対してシナプス前抑制をかけているという説です。

SG-cell自体は常にT-cellに対して門を閉じるように働いているが、細い直径の神経を伝導してきた疼痛インパルスはSG-cellに抑制的に働くため門を開こうとするが、そこへ太い直径の神経線維に電気刺激を与えてやるとそのインパルスはSG-cell に対して促通的に働くため疼痛インパルスに打ち勝って門の閉じた状態になります。

疼痛刺激が細い神経に伝わるのに対し、触覚や他の刺激は太い神経に走ります。基本的に神経は太いほうが伝導速度が速いです。

太い神経のSG細胞を刺激してT細胞に対してゲートを閉じるので『痛いの痛いのとんでいけー』で痛みが抑制されるわけですが、これが電気刺激でも発生します。

(3) 內因性疼痛制機構

TENSの内因性疼痛抑制機序についてもこれまで多くの研究報告がなされてきました。

1971年ゴールドステイン(Goldstein)が初めて中枢神経内にオピオイド受容体の存在を明らかにして以来、この受容体に結合する多くのオピオイドペプチドも脳組織から分離されるようになりました。

その代表的物質としてエンドルフィン、エンケファリンなどが知られています。

TENSを行うと脳脊髄液中のオピオイド物質が増えることなどが報告されており、この内因性オピオイド物質がTENSによって放出され中枢神経系および脊髄における疼痛伝達経路に抑制をかけることが考えられています。

オピオイド物質はモルヒネなどの鎮静作用のある麻薬です。エンドルフィンなども脳内麻薬として知られており強い疼痛緩和作用があります。

グラップラー刃牙でも出てくるエンドルフィンもこの作用で除痛し一過的な心理的限界(力を発揮する限界)を突破することも出来ます。この鎮静作用は非常に強力です。

 

 

 

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