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どうして筋肉痛になるのでしょうか?【筋肉痛のメカニズムを知ろう】

 

なぜ筋肉痛が起きるのでしょうか?

久しぶりに運動したり普段よりもハードな運動をすると筋肉痛になりますよね?

まず筋肉痛には2種類があります。

ひとつは『即発性筋痛』もう一つは『遅発性筋痛』です。

通常皆さんが感じる筋肉痛は後者の遅発性筋痛が圧倒的に多いと言われています。

 

即発性筋痛とは

運動時間中に疼痛が出現するものが即発性筋痛です。過負荷により細胞膜が損傷したり、乳酸と一緒に賛成される水素イオンにより急激に酸性に傾く事(アシドーシス)により

アシデミア(酸性状態)となりアシデミア特有の問題点が生じることで疼痛が生じます。

アシデミアが生じると

(1)ATP依存性3Na+/2K+交換ポンプの停止とATP依存性H+/K+ポンプによる細胞内から細胞外へのK+移動による高カリウム血症(Na, K-ATPaseの生理機能)

(2)心筋では活動電位の低下、β受容体減少に伴うカテコラミン不応性、Ca2+の感受性低下に伴う収縮力低下

(3)解糖系酵素の活性低下による糖代謝阻害から高血糖

(4)アデニル酸シクラーゼ阻害から細胞内情報伝達物質であるcyclic AMPの減少

(5)神経系ではグリア細胞腫脹など細胞機能障害とCa2+チャネル透過性低下による興奮性シナプス伝達抑制

このように,アシドーシスは代謝,膜輸送,膜コンダクタンス,細胞内情報伝達などで細胞機能障害を引き起こします。

 

pHの中性は7で人間の体液のpH=7.40±0.05なので弱アルカリ性です。なので筋肉痛が起きて酸性に傾くと言っても弱アルカリから中性に近いアルカリやほぼ中性に近くなることがほとんどです。

 

(1)~(5)を簡単に説明させてもらいます。

アシドーシスは酸性に傾くことを指しておりアシデミアは細胞や血液が酸性になった状態を指します。

(1)のNa, K-ATPaseの生理機能とは細胞のサイズや筋収縮を正常に働かせるための機序だと思ってください。これが破綻すると収縮不全や強縮が生じて正常な筋収縮が出来ず、細胞の体積が膨張し細胞膜が破壊され疼痛が生じます。

(2)も(1)と同様で心筋に生じることで全身の倦怠感や重だるさ、易疲労性につながります。

(3)も解糖系回路の不順からエネルギー生成効率が低下し倦怠感や中枢性疲労(気力低下)などを引き起こします。

(4)cyclic AMPは細胞内のセカンドメッセンジャーとして情報伝達を担っています。主にリン酸化を促して細胞の活性を高めるのですがホルモンなどの情報を細胞表面でキャッチして細胞内に働かせる役目です。アドレナリンやグルカゴンはこのcyclic AMPを伝って働きます。つまりはこの働きが低下することで神経やその他の細胞の活性が低下してしまいます。

(5)これも4と同様です。グリア細胞の活性が低下することで神経や脳細胞の働きは分化、神経促通に働きが低下します。

 

遅発性筋痛とは

 

一般的に筋のマイクロダメージにより炎症が生じ、炎症物質(疼痛物質)が生じることで痛みとして知覚します。主にヒスタミンが疼痛物質の主として働くのですがこの疼痛が30分以上続く場合は炎症が長引く原因がありますのでヒスタミンの閾値を下げて長時間作用するようにブラジキニンが放出されヒスタミンの作用が活性されます。

ヒスタミンの作用

細胞が損傷を受けると、組織周辺の肥満細胞や血中の好塩基球が、ヒスタミンを放出します。 放出されたヒスタミンにより、血管拡張、発赤、発熱、腫脹、疼痛が引き起こされる。

この炎症反応により、その部位に他の免疫細胞やタンパク質等が集まり、細胞および組織の損傷回復が促進される。ここがまさに炎症反応のメインな作用ですよね。

筋肉痛が生じると白血球があつまり活性酸素を作り出して細菌を殺したり損傷部位のクリーニングをします。活性酸素は酸素毒で病原菌を殺しますが毒性が強く細胞自身も傷つけるので遅発性筋痛が長引きます。

また年齢によっても異なり若い人は活性酸素抵抗が高く、高齢者は低いので高齢者ほど筋肉痛が長引く原因となっています。子供は筋肉痛が翌日治ったりしますもんね。

余談ですが年を取るほど筋肉痛が遅くなるというのは迷信で年齢に関係ありません。

因みにこの筋損傷はネガティブな動作(遠心性収縮)で強く生じます。いわゆるブレーキ動作です。アクセルであるポジティブ(求心性収縮)は筋の起始停止が近づいていくので筋収縮力に応じて筋が近づいて緩みますが、ネガティブは全張力(静止張力+活動張力)が大きくなるので筋が損傷しやすいです。

このまま筋肥大の話に移行したいところですがそれはまた別の機会にお話ししたいと思います。

乳酸原因説の否定

これも長らく神話として疲労や筋肉痛の悪玉として語られてきましたが、現在は善玉として知られています。

元々は疲労状態や筋肉痛がある状態の際に筋中の乳酸濃度が高くなりますのでこれが原因ではないかと考えられていました。

ATポイント、LTポイントなどいわゆる嫌気性代謝閾値での乳酸が生じるタイミングで神経応答が低下し筋収縮や出来ず疲労困憊になることから昔から乳酸は悪玉扱いされてきました。

ただしこれは間違いでした。疲労時に多いから乳酸悪者⇒乳酸取り除いたら回復?⇒余計に悪化⇒乳酸増加させよう⇒疲労回復⇒疲労や筋肉痛を助けててるんじゃね?⇒乳酸善玉

こんな流れがあります。実際に乳酸はピルビン酸い変化して好気性のTCA-cycleに入り再びATPに還元され最後は水と二酸化炭素になるので最後の最後まで筋肉に役立ってくれます。

ただし乳酸産生時の水素イオンは上述したとおり筋肉痛の原因です。

今後は乳酸に感謝して筋トレしましょう(笑)

筋肉痛の対応・対策について

まず最初に筋肉痛は決して悪いことではないと理解してください。痛みがあるのは人間の保全のために無理しすぎない様に働いている証拠です。それに白血球やヒスタミンの働きで浸透圧が生じパンプアップする時も細胞膜はパンパンに膨れてケミカルストレスとして筋肉を発達させるトリガーになります。

別に筋肥大に必ずしも筋肉痛は必要ないですが分かりやすい合図でもあります。ただし筋肉痛があまりにひどいと翌日の活動に支障がでますので対策が必要です。

疼痛がでる最初のころは冷やしてください。その後は入浴などで温めて血流を確保してください。血流が良ければヒスタミンなども拡散されますし疼痛も減弱されます。

また活性酸素は酸化ストレスで傷つけるので抗酸化物質であるビタミンCやE、ポリフェノールも効果的です。

他にも軽めの運動をすることで筋ポンプ作用を活かして炎症物質を拡散させるのも良いでしょう。運動後のクールダウンやストレッチは重要です。

参考文献

Marsh JD, et al:Am J Physiol. 1988;254(1 Pt 2):H20-7.

Orchard CH, et al:J Physiol. 1991;436:559-78.

 Drapeau P, et al:J Gen Physiol. 1988;91(2):305-15.

Na, K-ATPase の反応機構とNa, K-ATPase をターゲットとする薬物;北海道歯学雑誌, 38(1), 16-27

最後に

ここまで読んで下さりありがとうございます(;^ω^)

いつものご愛読に心から感謝します。

私は筋肉大好きで筋肉の話が一番記事の書くペースが速いのですが、今後も色々なリハビリテーションや理学療法に関する事、健康に関することを書いていきたいと思います。

今後もよろしくお願いします。

 

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