平行棒内歩行練習とは
理学療法士なので歩行訓練は色々と行うと思いますが、実際に行うにあたり、何を目的として行っているかが大切だと思います。
ここでは平行棒内で出来る歩行練習について説明していきたいと思います。
通常歩行(手すり使用)
ここでは免荷が必要な方やバランス能力低下状態の方の歩行練習として行います。
慣れてきたら平行棒に軽く触れる程度に歩く事で免荷装置としての平行棒からバランサーとしての機能に変化します。
その後更に慣れれば手で触れずに歩行して、いざというときの安全装置として利用するのもいいかもしれません。
メリット:歩行開始時には免荷機能、バランスの担保、転倒予防の安全装置として機能
注意事項:歩行状態が改善し長距離歩行できる方には距離が短すぎるので卒業が必要。
大股歩行(手すり使用)
歩幅を向上させることが目的の場合は大股歩行を安全に行うために平行棒は効果的です。
大股歩行ができない場合はその原因により使い方を変更できるのも良い点でしょう。
例えば下肢筋力が弱く大腿四頭筋や、中殿筋の筋力が弱い場合は免荷する必要がありますので平行棒での支持が必要です。
また股関節の可動性が悪く、ダイナミックストレッチを目的に行う方はしっかり把持して出来るだけ大きく動く事が重要だと思います。
逆に側方バランスを鍛えたいのなら安定性限界を超える為にも平行棒に触れないように指導していざというときの安全装置をして考えた方が良いでしょう。
アッパースイングで体がスウェイバックしないようにしましょう。
メリット:単脚支持時間の延長、股関節のダイナミックストレッチ、側方バランスの向上
注意点:目的に応じて方法を考えて行いましょう。大きく足を出すことで遊脚期に体幹が後方に傾かないように後ろ足を大きく残すように指導しましょう。
横歩き
これもよくある練習だと思います。
中臀筋をトレーニングするために使います。
ここで注意するポイントは体幹が前傾していないか?それとつま先の向きが外に開いていないか?
の2つだと思います。
体幹が前傾しすぎると平行棒に対する上肢支持率が高くなり下肢に十分に負荷がかかりません。
また股関節屈曲位では中殿筋は使用しづらく、大腿筋膜張筋などの代償が大きくなりますのでその点は注意が必要です。
つま先が外に向くということは股関節が外旋していますので、横歩きの際は進行方向に対して腸腰筋などを使用してしまう股関節屈曲運動に変化してしまうので股関節は正中位もしくは内旋位でつま先を内側に向けるように指示すると丁度正中位程度になりやすいです。
メリット:側方へのステップ動作なので特に外転筋を使えます。また実際に使用場面の多い動きでもあります。
注意点:股関節の外旋位では腸腰筋で代償してしまうこと。平行棒との距離が近すぎると支えづらく、離れると前傾し上肢支持率が上がりやすいです。
腿上げ(ニーアップ)
これも色々と考えさせられる歩き方ですね。目的としては遊脚側の腸腰筋を鍛える効果に一見して見えますが、それ以外にも単脚支持時間の延長にも使えますし、姿勢をまっすぐに正中位を保持して腿上げをすると多裂筋と腸腰筋のフォースカップルが働き、ヒップ・ランバーリズムという対側性運動リズムの形成に役立ちます。
注意点は体幹が後傾しスウェイバックするような歩き方は歩行訓練として効果が無いと思います。
あくまで前進していく歩行であり重心が後方に振れないようにしましょう。
メリット:単脚支持率を向上、腸腰筋と多裂筋の協調的な収縮で骨盤を起こした歩行を獲得できます。
注意点:体幹が前傾したり、円背では多裂筋の収縮が十分に得られません。
フロントランジ
大股歩きの状態で膝を深く曲げて歩きます。この際に体幹を起こしておけば多裂筋の収縮も得られますし、体幹を前傾すれば前足の方に体重をかける事が出来ます。
大腿四頭筋の筋力強化に有効です。
筋力強化と姿勢制御(側方動揺を抑える)にも使える増すので非常に使い勝手の良い練習だと思います。
メリット:股関節のダイナミックな動きが出来ます。大腿四頭筋の筋力強化も前足への荷重量増加など色々と使い勝手のよい歩行です。
注意点:膝がknee inしやすいので、膝の向きに注意しましょう。また足先の向かう方向に膝を曲げて行いましょう。
後ろ歩き
この歩行は少し特殊です。実際の日常生活上の動きでは中々ない動きだと思いますが、この動きは関節に着目すると前歩きと比較して足関節の可動域が大きいというのが大きな違いです。
通常は踵接地からローディングレスポンスに移行する歩行も後ろ歩きでは逆に足尖接地から足底接地に移行するので足関節の背屈可動域は大きくなります。
また、前歩きよりも中殿筋、大腿二頭筋、大腿直筋、内側広筋、前脛骨筋、腓腹筋の筋活動量が増加します。
またパーキンソン病の方には後方重心を即時的に改善し歩行しやすくする効果も期待できます。
メリット:パーキンソン病の方に対して後方重心の修正に使えます。
注意点:足元を見て歩くと十分な効果は期待できません。出来るだけ身体を起こし前方を向いて下がりましょう。
継ぎ足歩行(タンデム歩行)
支持基底面を小さくし縦に揃える事で側方安定性が要求される歩行練習です。
側方動揺だけでなく足を揃えるということで、下肢のコントロールを向上させます。
高齢になるほど歩隔を広げて歩く特徴があるので、中殿筋などを使う機会が少ないのですが、これは中殿筋の筋力強化にも使えます。
ポイントとして歩行訓練全般に言える事ですが、足元を確認して歩行する場合は視覚性フィードバックが働きますので、前方を見て行うことで足元の不安定性を固有受容器で補うことができれば、転倒リスクは低減します。
早歩き(速歩)
平行棒内を速く歩く練習です。形は普通の前進ですが、ピッチを早くして歩く練習です。
ストライドやケイデンス(歩行率:時間当たりの歩数)を増やす働きがありますが、大股歩行がストライドを延長することに適しているのであれば、この早歩きはケイデンスを高めることに向いています。
高齢者のケイデンスを高めるということは、左右の重心移動を素早く移動させることが出来るメリットがあります。
特に中殿筋や大腿筋膜張筋、及び腸脛靭帯のテンションを高め外側支持機構の反応を高めるのに向いています。
実用歩行としてはストライドを向上させる方が良いと思いますが、ステップ反応を改善させ、転倒予防効果が期待できます。
小刻み歩行(小股歩行)
歩幅を小さくして歩きます。
小刻みとか小股歩行というと悪いイメージがありますが、これも使い方次第です。
小股のためモーメントアームが小さく、殿筋群の筋力をあまり要求されませんので頸部骨折による中殿筋切離後で疼痛がある方などは疼痛を軽減させることが出来ます。
荷重量を確保しつつ殿筋群の筋肉の使用量を低減させることが出来ます。
また早歩きと同様に左右のシフトウェイトを早めることでステップ反応を改善したり、腸脛靭帯の反応を高めることも出来ます。
ただし、膝の屈伸があまり出ないのである期間の間の使用に使います。
実用歩行ではなく、そのケースによって応用的に使いましょう。
外旋歩行
足先を外側に向けて歩きます。
これも使い方によっては便利です。
内反膝(O脚)の場合、運動連鎖では下腿内旋、大腿外旋位で膝が屈曲位となっていますが、下腿を外旋させることで下腿と大腿の回旋格差を減少させることで膝の内側裂隙への損耗を減少させます。
最後に
ここまで読んでいただきありがとうございます(;^ω^)
足りない部分の写真は近日中にアップします。
また応用歩行も少しずつ増えていくと思いますので、読んでいただくと嬉しいです。