血圧の疫学を知ろう
120/80mmHgを超えて血圧が高くなるほど脳心血管病、慢性腎臓病などの罹患リスクおよび死亡リスクは高くなります。
日本における高血圧に起因する脳心血管病死亡者数は年間約10万人と推定され、脳心血管病死亡の要因として最大となります。
脳心血管病死亡の約50%が、120/80mmHgを超える血圧高値に起因するものと推定されます。
血圧指標のなかでは収縮期血圧が脳心血管病リスクをより強く予測し、他の危険因子の合併により脳心血管病リスクはさらに高くなります。
また日本の高血圧者数は約4300万人と推定され、そのうち3100万人が管理不良であると言われています。
このうち、自らの高血圧を認識していない者1400万人、認識しているが未治療の者450万人、薬物治療を受けているが管理不良の者1250万人と推計されています。
高血圧ガイドライン2019より引用,作図
日本の人口は約1億2000万人程度なので約3人に一人は高血圧ということになります。
ここまでくると個人的には果たして高血圧の基準はこれでいいのか考えてしまいますね(;^ω^)
実際に120/80という血圧は至適血圧なので、若者以外のほとんど多くの方はこの数値を越えてしまうと思います。
高血圧には塩分感受性高血圧というものもありますが、日本の食塩摂取量は依然として多く食塩摂取量を減らずことは国民の血圧水準を低下させるうえで重要です。
また肥満に伴う高血圧が増加しています。
確かに血圧の管理は我々の寿命を延命し、今後の健康に関しても血圧は他の合併症のリスクも上げるので血圧管理の重要性は非常に重要です。
ただし、気を付けなければいけないのは、これらの数値はあくまで疫学としての数値ですので、個人因子として考えるには数値がタイト過ぎますね(>_<)
ここでの120/80はあくまで保険事業でのポピュレーションアプローチとしての必要な数値だと考えましょう。
また塩分の摂取量が日本人が多くなる理由としては味噌、醤油の使用が多いことも挙げられます。
また高齢になるほど味蕾の数も減少し味付けが濃くなる傾向にあるので更に塩分摂取が増加します。
塩分を抑えるには減塩味噌汁をカリウムの摂取によりナトリウムの排泄を補助する必要があります。
また出汁を積極的に使用することで塩分の摂取量を減少させることも可能です。
健康日本21(第2次)では、食生活・身体活動・飲酒などの対策推進により、国民の収縮期血圧平均値を10年間で4mmHg低下させることを目標としています。
これにより脳卒中死亡数が年間約1万人,、動脈疾患死亡数が年間約5千人減少すると推計されます。
このように国民全体に向けたポピュレーションアプローチは非常に多くの人間の健康寿命や平均寿命を延ばすことが出来ます。
このように脳卒中や心疾患の減少には高血圧、脂質異常症、喫煙、糖尿病の改善が必要です。
そして、それを支えるのは生活習慣の改善です。
見てもらうと分かるのですが、降圧剤だけでは効果は弱いです。
栄養・食生活の改善、そして運動が非常に重要なウェイトを占めることが分かります。
それでは次に血圧の分類を知っていくととしましょう。
成人における血圧値の分類
家庭血圧と診察室の血圧は数値が異なります。
病院では心理的緊張もあり基本的に血圧は高く出ます。
成人の本態性高血圧患者において,家庭血圧を指標とした降圧治療は,診察室血圧を指標とした治療に比べ,推奨できるか?
という高血圧ガイドライン2019より変遷した内容の回答は次のようになります。
家庭血圧を指標とした降圧治療の実施を強く推奨する。
推奨の強さ1:強く推奨する
エビデンスの強さ B:中程度の確信
そのため今後の患者さんや利用者さん、もしくは健康教室などで助言する際には自宅での血圧測定を推奨し、その記録をとると、医師の診断やPTの介入の目安になると思います。
自宅で血圧を測定することが少ないとは思いますが、年々自宅での血圧測定も増えているとのことなので今後は、徐々に家庭血圧の管理が当たり前になっていくのかもしれません。
最後に
今日の高血圧の疫学についてはここで終了です。
続きは今後少しずつ書いていきますので読んでくれると嬉しいです(;^ω^)
血圧だけでなく、生活習慣病やフレイルなどの公衆衛生や、実際に罹患した後でのハイリスクアプローチについても書いていきます。
少しずつ記事が増えれば、相互に関係するものも増えていくと思います(*^^)v
少しずつ成長していくと思いますのでお待ちください。