長期臥床とは
長期臥床とは、病気やけが、手術後、全身状態の悪化などにより、長い時間ベッド上で過ごし、起きる・座る・立つ・歩くといった活動が大きく制限された状態を指します。明確に「何日以上」と決まっているわけではありませんが、安静が続くことで身体機能や精神機能にさまざまな二次的障害が生じやすくなる点が重要です。
長期臥床そのものは、元の病気を治すために必要なこともありますが、長く続くと筋力低下、関節拘縮、褥瘡、血栓、起立性低血圧、肺炎、抑うつなどを招きやすくなります。つまり、単に「寝ている状態」ではなく、廃用症候群につながる大きなリスク状態として考える必要があります。
どこでみるのか
長期臥床は、急性期病院、回復期リハビリテーション病棟、療養病棟、介護施設、在宅療養など、幅広い場面でみられます。特に高齢者、重症感染症後、手術後、骨折後、脳卒中後、脊髄損傷後、心不全や呼吸器疾患の増悪後などでは起こりやすくなります。
患者さんの状態としては、「起き上がる機会が少ない」「ベッドから離れない時間が長い」「トイレや食事も臥位中心」「座るだけでふらつく」「歩けていたのに歩けなくなった」といった形で現れます。そのため、長期臥床は病名というより、活動性低下の結果として生じる全身的な問題として捉えることが重要です。
何をみているのか
長期臥床でみているのは、単に寝ている時間の長さだけではありません。実際には、どの機能が低下しているのか、どの合併症が起こり始めているのか、どこまで離床できるのか、そして元の生活に戻るうえで何が障害になっているのかをみています。
長期臥床では、筋骨格系、循環器系、呼吸器系、消化器系、泌尿器系、皮膚、精神面など、全身に影響が出ます。そのため、「筋力低下だけ」「歩行だけ」といった一部分ではなく、全身状態と生活機能をあわせて評価する必要があります。
臨床でどうみるか
臨床ではまず、なぜ臥床が続いているのかを整理します。安静が必要な病態なのか、痛みや恐怖心で動けないのか、離床の機会が少ないのか、すでに廃用症候群が進んでいるのかを確認します。そのうえで、離床に伴うリスクと、離床しないことによるリスクの両方を考えます。
次に、筋力、関節可動域、起立耐性、呼吸状態、循環状態、褥瘡の有無、栄養状態、認知機能、意欲、排泄状況、ADLなどを評価します。長期臥床では、もとの病気そのものよりも、そこから派生する二次障害が回復を妨げることがあるため、全身をみながら早期離床の可能性を探ることが大切です。
評価で何をみるか
- 臥床が続いている期間と理由
- 筋力低下や筋萎縮の程度
- 関節拘縮や不良肢位の有無
- 座位・立位での血圧変化や起立性低血圧
- 呼吸状態や痰の喀出状況
- 褥瘡や皮膚トラブルの有無
- 深部静脈血栓症のリスク
- 食欲低下、便秘、誤嚥リスクの有無
- 排尿障害や尿路感染症の有無
- 認知機能やせん妄、抑うつの有無
- 起き上がり、移乗、歩行などのADL低下
- 離床に対する本人の不安や意欲
評価では、ベッド上でどれくらい動けるかだけでなく、座る、立つ、移る、歩くといった活動へつなげられるかをみることが重要です。長期臥床では、短期間でも筋力や体力が大きく落ちるため、変化を早めに見つける視点が必要です。
臨床でよく出る問題
- 筋力低下で起き上がれない
- 関節が硬くなり動かしにくい
- 座ると血圧が下がってふらつく
- 褥瘡ができる
- 痰がたまりやすく肺炎を起こしやすい
- 便秘や食欲低下が続く
- 深部静脈血栓症のリスクが高くなる
- 意欲低下や抑うつ、せん妄が出る
- もともとできていたADLができなくなる
長期臥床の問題は、ひとつだけで終わらないことが多いです。たとえば、筋力が落ちることで離床しにくくなり、さらに臥床が続くことで褥瘡や肺炎、血栓、便秘が起こりやすくなり、ますます動けなくなるという悪循環に陥りやすくなります。
起こりやすい要因
長期臥床が起こりやすい背景には、次のような要因があります。
- 高齢
- 重症感染症や全身状態不良
- 手術後
- 骨折後や外傷後
- 脳卒中後
- 脊髄損傷後
- 心不全や呼吸不全
- 疼痛や恐怖心による活動制限
- 認知機能低下やせん妄
- 低栄養
特に高齢者では、短い安静期間でも筋力や歩行能力が大きく低下しやすく、元の生活に戻れなくなることがあります。そのため、「少し休ませたほうが安全」という考えが、かえって機能低下を進めることもあります。
注意したい症状
- 急に起き上がれなくなった
- 座るだけで強いふらつきがある
- 足の腫れや痛みが出てきた
- 褥瘡や皮膚の発赤がある
- 息切れや痰、発熱が増えた
- 食事量が落ちている
- 昼夜逆転、せん妄、意欲低下がある
- 入院前できていたことが急にできなくなった
このような症状がある場合は、単なる「安静中の変化」と軽く考えず、廃用症候群や合併症の進行を疑う必要があります。とくに血栓、肺炎、褥瘡、起立性低血圧は見逃すと重症化しやすいため注意が必要です。
対応の基本
対応の基本は、必要以上に寝た状態を長引かせないことです。もちろん原疾患の治療や安静の指示は守る必要がありますが、その範囲内でできるだけ早く身体を動かし、座位や立位、歩行へつなげていくことが重要です。
具体的には、体位変換、関節可動域訓練、ベッド上運動、座位練習、立ち上がり練習、歩行練習、呼吸訓練、栄養管理、褥瘡予防、血栓予防、排泄管理などを組み合わせます。また、長期臥床では予防が何より重要であり、完全に機能が落ちてから回復を目指すより、落とさない工夫を早い段階から行うことが大切です。
リハビリの視点
リハビリの視点では、長期臥床は「動けない結果」でもあり、「さらに動けなくする原因」でもあります。そのため、ただ筋力訓練をするのではなく、離床を妨げている要因を整理しながら、生活へ戻るための身体をつくっていく視点が必要です。
- 早期離床を意識する
- 短時間でも座位や立位の機会を増やす
- 関節拘縮と筋萎縮を予防する
- 呼吸・循環・皮膚トラブルを防ぐ
- 食事、排泄、更衣などADLへつなげる
- 本人の意欲や認知面にも配慮する
- 家族や多職種で方向性を共有する
大切なのは、「寝ていれば安全」と単純に考えないことです。長期臥床は全身に影響するため、病気の治療と並行して、できるだけ早く活動性を回復させることが生活機能の維持につながります。
ひとことで言うと
長期臥床とは、病気やけがなどでベッド上生活が長く続く状態であり、筋力低下、拘縮、褥瘡、血栓、肺炎、意欲低下など全身の二次障害を起こしやすいため、早期離床と予防的リハビリテーションが重要な状態です。
関連用語
- 廃用症候群
- 筋萎縮
- 関節拘縮
- 褥瘡
- 深部静脈血栓症
- 起立性低血圧
- 誤嚥性肺炎
- 早期離床
- ADL低下
- 低栄養
参考文献
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