痛風とは
痛風(Gout)とは、血中尿酸値の上昇(高尿酸血症)により、尿酸ナトリウム結晶が関節内および周囲組織に沈着し、急性の炎症性関節炎を引き起こす代謝性疾患です。プリン体の代謝産物である尿酸が体内で過剰に産生されるか、腎臓からの排泄が低下することで血中尿酸値が上昇します。尿酸値が7.0mg/dL以上で高尿酸血症と定義され、この状態が持続すると関節内に針状の尿酸結晶が形成され、好中球による貪食反応を介して激烈な炎症が惹起されます。好発部位は第1中足趾節関節(足の親指の付け根)であり、「風が吹いても痛い」ほどの激痛を特徴とすることから痛風と呼ばれます。
どこでみるのか
痛風発作は全身のあらゆる関節に起こりえますが、最も好発する部位は第1中足趾節関節(MTP関節)であり、全体の約70%を占めます。その他、足関節、膝関節、手関節、肘関節にも発症します。発作は通常、単関節に発症し、急激な発赤・腫脹・熱感・激痛を呈します。慢性化すると痛風結節(トフス)が耳介、肘頭、アキレス腱周囲などの皮下組織に形成されることがあります。
何をみているのか
痛風では、尿酸ナトリウム結晶の関節内沈着とそれに対する炎症反応をみています。結晶が関節液中に遊離すると、好中球やマクロファージが貪食し、インターロイキン-1β(IL-1β)などの炎症性サイトカインが放出されます。これにより急性の滑膜炎が生じ、関節周囲の軟部組織にも炎症が波及します。慢性期には結晶が蓄積して痛風結節を形成し、関節破壊や変形を来すこともあります。また、高尿酸血症は腎機能障害、尿路結石、心血管疾患、メタボリックシンドロームとも関連しています。
臨床でどうみるか
痛風発作は夜間から早朝に突然発症することが多く、24時間以内に症状がピークに達します。罹患関節は著明な発赤・腫脹・熱感を呈し、触れることすら困難なほどの激痛を伴います。発作は1〜2週間で自然軽快しますが、治療しなければ再発を繰り返します。確定診断には関節液中の尿酸結晶の同定が必要ですが、臨床的には高尿酸血症の既往、特徴的な臨床症状(急性単関節炎、第1MTP関節の発赤腫脹)、24時間以内のピーク、治療への反応性などから診断可能です。超音波検査ではダブルコンターサイン(関節軟骨表面の尿酸沈着像)が特徴的所見です。
評価で何をみるか
- 疼痛の部位・性質・発症時期・持続時間の問診
- 罹患関節の視診(発赤、腫脹、熱感)
- 関節可動域の評価
- 痛風結節の有無(耳介、肘頭、アキレス腱周囲)
- 血液検査(血清尿酸値、CRP、白血球数)
- 尿検査(尿酸排泄率、尿pH)
- 関節液検査(偏光顕微鏡による尿酸結晶の同定)
- 画像検査(X線、超音波:ダブルコンターサイン)
- 腎機能評価(クレアチニン、eGFR)
- メタボリックシンドロームの評価(体重、血圧、血糖、脂質)
- 食事・飲酒歴の聴取
- 既往歴(尿路結石、心血管疾患)
- 服薬歴(利尿薬など尿酸値に影響する薬剤)
- 日常生活動作・歩行能力の評価
臨床でよく出る問題
- 発作時の激痛により歩行・立位が困難になる
- 発作の繰り返しにより関節変形・可動域制限が進行する
- 痛風結節が増大し、皮膚潰瘍や感染を合併する
- 高尿酸血症の放置による腎機能低下・尿路結石の発症
- 生活習慣の改善が継続できない
- 服薬アドヒアランスの低下(発作がないと服薬を中断する)
- 発作時に不適切な運動を行い症状を悪化させる
起こりやすい要因
痛風発作のリスク要因として、高プリン体食(レバー、魚卵、干物など)の過剰摂取、アルコール(特にビール)の多飲、肥満、脱水、激しい運動、外傷、手術、感染症、ストレス、利尿薬・低用量アスピリンなどの薬剤使用が挙げられます。また、遺伝的素因、腎機能低下、メタボリックシンドロームも発症リスクを高めます。男性に多く、女性は閉経後にリスクが上昇します。
注意したい症状
痛風発作は通常、数日から2週間で自然軽快しますが、以下の症状がある場合は速やかな医療介入が必要です:38度以上の発熱を伴う場合(化膿性関節炎の除外)、複数の関節に同時発症した場合、症状が2週間以上持続する場合、頻回に発作を繰り返す場合。また、痛風結節の増大・潰瘍形成、腎機能の急激な低下、尿路結石による血尿・排尿困難などにも注意が必要です。
対応の基本
急性発作時は、罹患関節の安静・挙上・冷却を行い、NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)やコルヒチンで炎症を抑えます。発作が鎮静化した後、尿酸降下薬(アロプリノール、フェブキソスタットなど)による長期的な尿酸コントロールを開始します。生活習慣の改善も不可欠であり、適正エネルギー摂取、プリン体・果糖の制限、十分な水分摂取(1日2L以上)、禁酒または節酒、体重管理が基本となります。尿をアルカリ化する食品(野菜、海藻、きのこ)の摂取も推奨されます。
リハビリの視点
痛風発作中は激痛のため運動は禁忌であり、安静が最優先です。発作が鎮静化した後は、関節可動域の維持・改善を目的とした穏やかなモビリティエクササイズから開始します。足関節の底背屈運動、足趾の屈伸運動、ストレッチングなど低負荷の運動が推奨されます。発作間欠期には、軽度から中等度の有酸素運動(ウォーキング、水泳、サイクリング)が血中尿酸値の低下と炎症軽減に有効であるとされています。ただし、激しい無酸素運動は逆に尿酸値を上昇させるため避けます。運動前後の十分な水分補給、サポーティブシューズの着用、体重管理も重要です。理学療法士は発作後の関節機能回復と再発予防のための運動指導を担います。
ひとことで言うと
痛風は「風が吹いても痛い」激烈な関節炎であり、高尿酸血症の管理と生活習慣の改善が再発予防の鍵です。発作時は安静、発作間欠期は適度な有酸素運動で尿酸値をコントロールしましょう。
関連用語
- 高尿酸血症(Hyperuricemia)
- 尿酸結晶(Monosodium Urate Crystal)
- 痛風結節(Tophus)
- 第1中足趾節関節(First Metatarsophalangeal Joint)
- プリン体(Purine)
- コルヒチン(Colchicine)
- 尿酸降下薬(Urate-lowering Therapy)
参考文献
- 日本整形外科学会 - 痛風
- Hinge Health - Exercises for Gout: Staying Active Post-Flare
- PMC - The Effect of Low and Moderate Exercise on Hyperuricemia
- 高尿酸血症・痛風の生活習慣改善について
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