テノデーシスアクションとは
テノデーシスアクション(tenodesis action)は、「腱固定作用」または「腱固定様効果」とも呼ばれ、手関節の他動的または能動的な背屈・掌屈運動に伴い、手指屈筋・伸筋腱が受動的に張力変化を起こし、手指が自動的に屈曲・伸展する現象を指します。具体的には、手関節を背屈すると手指が屈曲し、手関節を掌屈すると手指が伸展するという腱の長さの相対的変化によって生じる連動運動です。この現象は正常な手においても観察されますが、特に脊髄損傷者や神経筋疾患により手指屈筋が麻痺している患者において、残存機能を活用した機能的な把持動作を実現するための重要な代償メカニズムとして臨床的意義があります。
どこでみるのか
- 手関節の可動域:背屈・掌屈の可動性
- 手指屈筋・伸筋腱:腱の滑走性と張力変化
- 手関節伸筋群:長橈側手根伸筋・短橈側手根伸筋など残存筋力
- 手指関節:MP・PIP・DIP関節の受動的屈伸運動
- 脊髄損傷レベル:C6〜C7レベルでの機能残存状況
- 手内在筋:虫様筋・骨間筋の機能低下の有無
- 手指屈筋腱:浅指屈筋・深指屈筋の走行と張力
何をみているのか
テノデーシスアクションでは、腱の相対的な長さ変化による受動的な手指運動を観察しています。手関節の位置変化により、手関節をまたぐ長い指屈筋腱・伸筋腱が受動的に伸張または短縮されることで、手指関節に対して牽引力が発生します。これによって手関節伸筋群の活動によって物品の把持が可能になる機能的代償機構を評価します。また、腱の滑走性、関節拘縮の有無、残存筋力の程度、手指と手関節の協調性などを同時に観察することで、機能的把持能力の再獲得や装具適応の可能性を判断します。
臨床でどうみるか
- 手関節背屈時の手指自動屈曲の程度:腱張力と把持力の評価
- 手関節掌屈時の手指伸展の程度:物品リリース能力の評価
- 残存筋力:手関節伸筋群の筋力レベル(MMT)
- 腱滑走性:腱の癒着や拘縮の有無
- 関節可動域:手関節・手指関節のROM
- 機能レベル:ASIA分類による脊髄損傷レベル(C6〜C7)
- 感覚機能:手掌部の触覚・圧覚の残存
- 日常生活動作:実際の物品把持・操作能力
- 装具の必要性:テノデーシス効果を増強する装具の適応判断
評価で何をみるか
- ASIA機能評価尺度(AIS):脊髄損傷の運動・感覚レベルの分類
- MMT(徒手筋力検査):手関節伸筋群の筋力レベル
- ROM測定:手関節背屈・掌屈、手指屈曲・伸展可動域
- 腱滑走テスト:手関節肢位変換時の手指屈伸の滑らかさ
- 把持力測定:握力計やピンチメーターによる把持力
- テノデーシスグラスプテスト:手関節背屈位での機能的把持の可否
- リリーステスト:手関節掌屈位での物品開放能力
- ADL評価:食事、整容、書字などの実用性評価
- 感覚検査:ライトタッチ、ピンプリック、二点識別覚
- 装具適合評価:手関節駆動式把持装具(RIC型など)の効果判定
- X線評価:手関節・手指の骨構造と変形の有無
- 機能的動作評価:コップ、ペン、スプーン等の把持・操作の観察
臨床でよく出る問題
- 手関節伸筋筋力不足:十分な背屈力が得られず把持力が弱い
- 手指屈筋の痙性:過剰な筋緊張により手指の伸展が困難
- 手指関節の拘縮:長期固定により関節可動域が制限される
- 腱癒着:外傷や手術後の腱滑走不全
- 手内在筋の麻痺:鉤爪様変形(claw hand)の出現
- 感覚障害:物品の把持感覚が乏しく落下しやすい
- 装具への依存:装具なしでは把持動作が困難
- 実用性の限界:細かい操作や重量物把持が困難
- 二次的な疼痛:代償動作による手関節や前腕の疲労・疼痛
- 皮膚損傷リスク:感覚低下により圧迫や摩擦に気づきにくい
起こりやすい要因
- 頸髄損傷(C6〜C7レベル):手指屈筋麻痺で手関節伸筋が残存
- 末梢神経損傷:正中神経・尺骨神経損傷による手内在筋麻痺
- 脳卒中片麻痺:手指選択的運動障害と痙縮
- 腱損傷・腱断裂:屈筋腱損傷後の腱修復術後
- 長期固定後:手関節・手指の拘縮や腱癒着の発生
- 関節リウマチ:手指変形と筋力低下
- 筋ジストロフィー:進行性の筋力低下
- ギラン・バレー症候群:急性の筋力低下と麻痺
注意したい症状
- 手指の過伸展:手関節掌屈時に手指が過度に伸展し疼痛が生じる
- 手関節背屈時の疼痛:腱や関節への過負荷
- 手指の鉤爪様変形:MP関節過伸展、IP関節屈曲の固定
- 手掌部の褥瘡:感覚低下と持続的圧迫
- 把持物の突然の落下:筋疲労や感覚フィードバック欠如
- 前腕の疲労感・疼痛:代償的筋活動の過剰使用
- 手指の浮腫:運動不足や血行不良
- 手関節の不安定性:支持性低下による動揺
対応の基本
- 手関節伸筋の筋力増強訓練:長橈側・短橈側手根伸筋の強化
- 関節可動域訓練:手関節・手指関節の柔軟性維持・改善
- 腱滑走訓練:屈筋腱・伸筋腱の滑走性改善
- 装具療法:手関節駆動式把持装具(RIC型装具など)の処方と適合
- 機能的動作訓練:日常生活で実用的な把持動作の反復練習
- 痙縮管理:ストレッチ、物理療法、必要に応じて薬物療法
- 感覚代償訓練:視覚的フィードバックの活用
- 環境調整:自助具や把持しやすい物品形状の工夫
- 患者教育:テノデーシス動作の原理と効果的な使用法の指導
- 二次障害予防:皮膚管理、過用症候群の予防
リハビリの視点
テノデーシスアクションは、脊髄損傷や神経筋疾患において残存機能を最大限に活用した機能的把持を実現するための中心的な代償メカニズムです。理学療法士・作業療法士は、手関節伸筋の筋力強化と関節可動域維持を基盤とし、装具療法と動作訓練を組み合わせて実用的なADL能力の獲得を目指します。単なる機能回復だけでなく、患者自身がテノデーシスアクションの原理を理解し、日常生活の中で効率的かつ安全に活用できるよう指導することが重要です。また、長期的には腱癒着や関節拘縮、過用症候群などの二次障害を予防し、生涯にわたる手の実用性を維持するための継続的なフォローアップと自主管理指導が求められます。
ひとことで言うと
テノデーシスアクションとは、手関節の背屈・掌屈運動に伴って手指が受動的に屈曲・伸展する腱固定作用であり、手指屈筋麻痺がある患者が残存する手関節伸筋を活用して機能的な把持を実現するための重要な代償メカニズムです。
関連用語
- 頸髄損傷(C6〜C7)
- ASIA機能評価尺度(AIS)
- 長橈側手根伸筋(ECRL)
- 手内在筋
- 鉤爪様変形(claw hand)
- 手関節駆動式把持装具
- RIC型把持装具
- 腱滑走訓練
- 機能的把持
- 代償動作
参考文献
- Dynamic Tenodesis of the Finger Extensors to Improve Hand Function - PMC
- How to Use Tenodesis Grasp to Boost Independence After Spinal Cord Injury - Flint Rehab
- Tenodesis grasp - Wikipedia
- 頸髄損傷者のtenodesis-like actionによる把持動作の検討 - 医書.jp
- テノデーシス効果とは?手関節と手指の連動を解説 - f-medapp
- テノデーシスアクション(腱固定作用)って何だ? - PhysioApproach
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