老人性うつ

老人性うつとは

老人性うつは65歳以上の高齢者に発症するうつ病である。抑うつ気分、意欲低下、興味や喜びの喪失を主症状とし、身体症状の訴えが強いことが特徴である。若年者のうつ病と比較して、頭痛、めまい、疲労感、食欲不振などの身体症状が前面に出やすく、心気的訴えが多い。認知症との鑑別が重要で、見当識は保たれ、記憶障害に対する自覚が強い。配偶者の死、退職、身体機能の低下など喪失体験が発症の契機となることが多い。

どこでみるのか

精神症状と身体症状の両面から評価する。臨床では問診により抑うつ気分、自責感、希死念慮の有無を確認する。身体症状として訴えられる頭痛、倦怠感、不眠、食欲低下を把握する。認知機能検査で認知症との鑑別を行う。リハビリテーション場面では日常生活動作の遂行状況、活動性、対人交流、表情、発語量を観察する。家族からの情報収集も重要である。

何をみているのか

抑うつ症状の程度と認知機能の状態を評価する。Geriatric Depression Scale(GDS)で抑うつの有無と重症度を判定する。見当識、記憶、注意、実行機能を認知機能検査で確認する。身体疾患の合併、服薬内容、栄養状態、社会的孤立の程度を把握する。自殺リスクの評価として希死念慮、自殺企図歴、具体的計画の有無を確認する。ADL能力と生活の質の低下の程度を評価する。

臨床でどうみるか

抑うつ症状の持続期間と程度を聴取する。「気分が沈む」「何もやる気が起きない」「楽しいと感じない」などの訴えを確認する。身体症状として「頭が重い」「体が痛い」「疲れやすい」などの訴えを聴く。睡眠パターン、食欲、体重変化を把握する。GDS-15やCES-Dなどの評価尺度を使用する。認知症との鑑別のためMMSEやHDS-Rを実施する。血液検査で甲状腺機能低下症など身体疾患を除外する。

評価で何をみるか

  • 抑うつ気分の程度と持続期間
  • 意欲低下と興味の喪失
  • 希死念慮と自殺リスク
  • 自責感と罪責感
  • Geriatric Depression Scale(GDS-15)
  • CES-D(うつ病自己評価尺度)
  • Hamilton Depression Rating Scale
  • 睡眠障害(入眠困難、中途覚醒、早朝覚醒)
  • 食欲と体重変化
  • 身体症状(頭痛、めまい、倦怠感)
  • 認知機能(MMSE、HDS-R)
  • 見当識の保持
  • ADL能力(Barthel Index)
  • IADL能力
  • 社会的交流の頻度
  • 家族のサポート状況
  • 服薬状況
  • 栄養状態

臨床でよく出る問題

  • 活動性の著しい低下
  • 社会的引きこもり
  • 自殺企図のリスク
  • 認知症との誤診
  • 身体症状への過度な心配(心気症)
  • 食欲不振と体重減少
  • 不眠による生活リズムの乱れ
  • ADL能力の低下
  • 廃用症候群の進行
  • 家族の介護負担増加
  • 服薬コンプライアンスの低下
  • 仮性認知症

起こりやすい要因

  • 配偶者や親しい人との死別
  • 退職による役割喪失
  • 身体疾患の罹患
  • 身体機能の低下
  • 慢性疼痛
  • 社会的孤立
  • 経済的困窮
  • 脳血管障害の既往
  • 家族関係の問題
  • 住環境の変化
  • うつ病の既往歴
  • 神経伝達物質の変化

注意したい症状

  • 希死念慮の表明
  • 自殺をほのめかす発言
  • 急激な体重減少
  • 著しい食欲低下
  • 重度の不眠
  • 強い罪責感や無価値感
  • 妄想(貧困妄想、罪業妄想、心気妄想)
  • 引きこもりの増悪
  • 自己管理能力の著しい低下
  • 意識障害の出現

対応の基本

抗うつ薬による薬物療法が基本である。選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)や選択的セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)を少量から開始する。高齢者は副作用が出やすいため慎重な投与が必要である。精神療法として認知行動療法や支持的精神療法を併用する。規則正しい生活リズムの確立、適度な運動、日光浴を勧める。家族への心理教育とサポート体制の構築が重要である。

リハビリの視点

作業療法では活動と参加の促進を図る。興味のある作業活動を通じて達成感と自己効力感を高める。グループ活動により社会的交流を促進する。理学療法では軽度から中等度の有酸素運動を実施し、抑うつ症状の軽減と身体機能の維持を図る。日常生活動作訓練により自立度を高める。デイケアやデイサービスの利用により活動性と社会参加を促す。家族への介護指導と心理的サポートも重要な役割である。

ひとことで言うと

老人性うつは高齢者特有のうつ病で、身体症状の訴えが強く認知症と鑑別が必要である。適切な治療とリハビリテーションにより改善が期待できる。

関連用語

  • 老年期うつ病
  • 抑うつ状態
  • Geriatric Depression Scale
  • 仮性認知症
  • 心気症
  • 希死念慮
  • 認知行動療法
  • SSRI
  • SNRI
  • 喪失体験
  • 社会的孤立
  • 廃用症候群
  • 作業療法

参考文献

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