老人性難聴とは
老人性難聴は加齢により内耳の有毛細胞や聴神経が変性し、聴力が低下する疾患である。加齢性難聴とも呼ばれ、65歳以上の約3人に1人が該当する。高音域から聴力低下が始まり、徐々に中音域・低音域へ進行する。両側性で左右対称に進行し、男性に多い傾向がある。会話の聞き取りが困難になり、特に騒音下での言葉の理解が難しくなる。本人が気づきにくく、周囲が異変に気づくことが多い。認知症のリスク因子としても注目されている。
どこでみるのか
病変部位は内耳の蝸牛、特に高音域を担当する基底回転部の有毛細胞である。聴神経や脳の聴覚中枢の変性も関与する。臨床では耳鼻咽喉科で純音聴力検査と語音明瞭度検査を実施する。リハビリテーション場面ではコミュニケーション能力、会話理解度、社会参加の状況を評価する。日常生活での聞き返しの頻度、テレビの音量、電話での会話の困難さを観察する。言語聴覚士が聴覚リハビリテーションを担当する。
何をみているのか
聴力レベルと語音の聞き取り能力を評価する。純音聴力検査で周波数別の聴力閾値を測定し、難聴の程度を判定する。語音明瞭度検査で言葉の理解度を確認する。補聴器の適応と効果を評価する。コミュニケーション障害の程度と社会的孤立の有無を把握する。認知機能への影響を評価する。生活の質の低下と心理的影響を確認する。
臨床でどうみるか
問診で聞こえにくさの自覚、いつ頃から症状が始まったか、会話の聞き返しの頻度を聴取する。家族からテレビの音量が大きい、呼びかけに反応しないなどの情報を得る。耳鏡検査で外耳道と鼓膜の状態を確認する。純音聴力検査で125Hzから8000Hzまでの聴力を測定する。語音明瞭度検査で言葉の理解度を評価する。必要に応じてABR検査やMRI検査を追加する。補聴器の試用と効果判定を行う。
評価で何をみるか
- 純音聴力検査(125Hz~8000Hz)
- 聴力レベル(軽度、中等度、高度、重度)
- 語音明瞭度検査
- 語音了解閾値
- ABR検査(聴性脳幹反応)
- 鼓膜の状態
- 外耳道の状態
- 補聴器装用効果
- 会話理解度
- コミュニケーション頻度
- 社会参加の状況
- 認知機能(MMSE、HDS-R)
- 抑うつ症状(GDS)
- QOL評価
- 家族の介護負担
- 聞き返しの頻度
- テレビ・電話の使用状況
- 日常生活動作への影響
臨床でよく出る問題
- 会話の聞き取り困難
- 聞き返しの増加
- コミュニケーション障害
- 社会的孤立
- 家族関係の悪化
- 抑うつ状態
- 認知機能の低下
- 電話での会話困難
- 外出や社会参加の減少
- 補聴器への抵抗感
- 補聴器の不適切な使用
- 危険音の聞き逃し
起こりやすい要因
- 加齢による内耳の変性
- 有毛細胞の減少
- 聴神経の変性
- 遺伝的素因
- 騒音暴露の既往
- 高血圧
- 糖尿病
- 脂質異常症
- 喫煙
- 耳毒性薬剤の使用
- 動脈硬化
- 男性
注意したい症状
- 急激な聴力低下
- 片側のみの難聴
- 耳鳴りの増悪
- めまいの合併
- 耳痛
- 耳漏
- 顔面神経麻痺
- 会話の完全な理解不能
- 危険音への無反応
- 著しい社会的引きこもり
対応の基本
根本的な治療法はなく、補聴器による聴覚補償が主体である。早期から補聴器を装用することで脳の音声処理能力の低下を防ぐ。補聴器は耳鼻咽喉科専門医や補聴器相談医の指導のもとで選定する。言語聴覚士による聴覚リハビリテーションを併用する。コミュニケーション方法の工夫として、対面での会話、ゆっくりはっきり話す、低い声で話すなどを指導する。騒音環境を避け、静かな場所で会話する。家族への理解促進と支援が重要である。
リハビリの視点
言語聴覚士による聴覚リハビリテーションが中心となる。補聴器の適合調整と使用訓練を行う。聴覚認知訓練により音の聞き分け能力を向上させる。読話訓練で視覚情報を活用した理解を促進する。コミュニケーション訓練で実際の会話場面を想定した練習を行う。環境調整として静かな環境の確保、視覚情報の活用、筆談やジェスチャーの併用を指導する。社会参加を促し、認知症予防の観点からも積極的な介入が重要である。
ひとことで言うと
老人性難聴は加齢により高音域から聴力が低下する疾患で、コミュニケーション障害と社会的孤立をもたらす。補聴器と聴覚リハビリテーションにより生活の質の改善が可能である。
関連用語
- 加齢性難聴
- 感音性難聴
- 純音聴力検査
- 語音明瞭度検査
- 補聴器
- 聴覚リハビリテーション
- 有毛細胞
- 蝸牛
- 読話
- コミュニケーション障害
- 社会的孤立
- 認知症リスク
- 言語聴覚士
参考文献
- 老人性難聴の仕組み - なべ耳鼻咽喉科
- 老人性難聴 - 加古川医師会
- 加齢性難聴 - 東京都健康長寿医療センター
- 加齢性難聴 - 済生会
- Age-Related Hearing Loss - NIDCD NIH
- 高齢者難聴リハビリで改善 - 東京新聞
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