凍結肩とは
凍結肩(frozen shoulder)とは、明らかな外傷や感染などの原因なく、肩関節の疼痛と運動制限(拘縮)が徐々に進行する疾患で、肩関節周囲炎・五十肩と呼ばれます。40〜50代を中心に中年以降に多く発症することから四十肩・五十肩の名があり、関節包や周囲組織の炎症と拘縮が主体と考えられています。経過は炎症期・拘縮期・回復期の3期に分かれ、1〜3年かけて自然に回復に向かうのが特徴です。ただし腱板損傷や頚椎疾患など鑑別すべき疾患が多く、病期の見極めと時期に合った対応が治療とリハビリテーションの要となります。
どこでみるのか
整形外科・リハビリテーション科・内科などで、最も高頻度に遭遇する肩の疾患の一つです。臨床現場では、①肩の痛みを主訴とする外来、②脳卒中後や骨折後の安静に伴う拘縮、③糖尿病や甲状腺疾患を背景とする発症、④術後の可動域制限、⑤高齢者の更衣動作・ADL障害などの場面で問題となります。患者訴えは「夜中に痛くて目が覚める」「髪をとかせない」「下着や上着の着脱が困難」「ポケットに手が届かない」などで、単なる肩こりと見誤らず、可動域制限の範囲と疼痛の性質を捉える視点が求められます。
何をみているのか
着眼点は、①病期の判定(炎症期・拘縮期・回復期)、②他動可動域の制限パターン(外旋・内旋制限が特徴的)、③疼痛の性質(安静時痛・夜間痛か動作時痛か)、④関節運動の質(滑り運動の減少・カクつき)、⑤肩甲帯の代償(肩甲骨の過剰な動き)、⑥腱板機能と他動・自動可動域の乖離、⑦基礎疾患(糖尿病・甲状腺疾患)、⑧発症様式と経過です。凍結肩は他動でも自動でも可動域が制限される点が腱板損傷と異なり、病期によって痛みと制限の関係が変わるため、この二軸で経過を読む視点が最重要となります。
臨床でどうみるか
具体的には、疼痛の程度、自動・他動の肩関節可動域を測定し、肩甲上腕関節の副運動を評価します。炎症期は夜間痛が著明で可動域制限は軽度ですが、拘縮期には痛みが和らぐ一方で外旋・内旋を中心とした制限が進行し、回復期に徐々に改善します。鑑別としては腱板損傷、石灰化性腱板炎、肩鎖関節障害、頚椎疾患を確認します。治療は病期に応じ、炎症期には三角巾での安静と消炎鎮痛剤、拘縮期以降にはホットパックなどの温熱療法と可動域訓練が用いられ、保存治療で改善しない場合にはマニピュレーションや手術も検討されます。
評価で何をみるか
凍結肩の評価では、疼痛・可動域・機能を確認します。
- 疼痛の評価 - 安静時・夜間・動作時の程度
- 自動可動域 - 屈曲・外転・内外旋の範囲
- 他動可動域 - 外旋・内旋制限の確認
- 副運動 - 肩甲上腕関節の滑り運動
- 肩甲帯の代償 - 肩甲骨の過剰な動き
- 機能評価 - 更衣・洗顔・後頭部への手
- JOA score - 日本整形外科学会の判定基準
疼痛と可動域を病期ごとに整理し、副運動の減少と肩甲帯代償を組み合わせて拘縮の程度を捉えることが、評価を正確にする核心です。
臨床でよく出る問題
凍結肩に関連して臨床で生じやすい問題は以下の通りです。
- 夜間痛による睡眠障害 - 炎症期の主要な問題
- 更衣・ADL障害 - 背中への手が届かない
- 可動域制限の残存 - 拘縮期の外旋・内旋制限
- 不活動による筋力低下 - 長期の使用回避
- 頚肩部の二次的疼痛 - 代償動作の蓄積
- リハ継続の中断 - 痛みによる訓練回避
これらは相互に影響します。夜間痛が睡眠を損ない、活動低下と筋力低下、さらに拘縮の進行へとつながる悪循環が生じます。疼痛期に安静のみを続けると拘縮を助長し、拘縮期に動かさないと回復が遅れるため、病期を見極めた訓練量の調整が核心です。
起こりやすい要因
凍結肩をきたしやすい背景には以下があります。
- 加齢 - 40〜50代を中心とした発症
- 糖尿病・甲状腺疾患 - 膠原線維の代謝異常
- 長期の不動化 - 骨折後・術後・脳卒中後の安静
- 肩の過使用・姿勢 - 肩甲帯周囲の緊張
- 対側既往 - 一側発症後の対側発症リスク
- 自律神経の関与 - 血流・代謝の変化
これらは重複して発症リスクを高めます。糖尿病を背景とする症例は経過が長く制限が残りやすく、脳卒中後や骨折後の不動化は無自覚に拘縮を進行させます。基礎疾患と不動期間の両面から捉えることが、病態判断の鍵です。
注意したい症状
凍結肩を示唆する見逃せないサインがあります。
- 夜間痛・安静時痛の持続 - 炎症期の指標
- 他動可動域の全方向制限 - 拘縮の確認
- 外旋・内旋制限の進行 - 関節包拘縮の徴候
- 麻痺・感覚障害の合併 - 頚椎・神経疾患の鑑別
- 発熱・全身症状 - 感染・悪性腫瘍の除外
- 構成物の裂傷を示す所見 - 腱板損傷の確認
これらはさらに精査と対応の見直しに直結します。痛みと可動域制限をすべて五十肩と決めつけると腱板損傷や頚椎疾患を見落とし、発熱や著明な夜間痛では腫瘍・感染を鑑別すべきです。所見の変化から緊急度を判断することが、安全確保の基本です。
対応の基本
凍結肩への対応は、病期・評価・訓練の三層で組みます。
- 病期の見極め - 炎症期・拘縮期・回復期の判定
- 疼痛管理 - 安静・薬剤・物理療法の選択
- 温熱療法 - ホットパック・入浴での前処置
- 可動域訓練 - コッドマン体操・伸張訓練
- ADL指導 - 代償動作と姿勢の工夫
- 鑑別の徹底 - 腱板損傷・頚椎疾患の確認
凍結肩は1〜3年の自然回復が見込める一方、病期に合わない対応は回復を遅らせます。炎症期に無理な牽伸をかけず、拘縮期以降に温熱と可動域訓練を段階的に進め、疼痛に合わせて強度を調整することが重要です。
ひとことで言うと
凍結肩とは、原因なく肩関節の疼痛と拘縮が進行する疾患で、炎症期・拘縮期・回復期の3期を経て回復に向かいます。病期を見極め、時期に合った疼痛管理と可動域訓練を行うことが基本です。
関連用語
- 肩関節周囲炎
- 拘縮
- 可動域訓練
- 腱板損傷
- 夜間痛
- コッドマン体操
- 温熱療法
参考文献・出典
- 五十肩(肩関節周囲炎)(日本整形外科学会)
- 肩関節周囲炎 理学療法診療ガイドライン(理学療法掲載論文)
- シリーズ13 肩関節周囲炎(日本理学療法士協会)
- (いわゆる)五十肩(日本肩関節学会)
- 凍結肩(肩関節周囲炎)(日経メディカル)
- 肩関節の評価(MSDマニュアル プロフェッショナル版)
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