急性外傷

急性外傷とは

急性外傷とは、外力により身体組織が突然損傷を受けた状態で、発症から時間的に急性期にある外傷です。英語では acute trauma と呼ばれます。

ポイントは、急性外傷が「突発的な外力」による損傷であり、時間軸として「急性期(受傷後数時間から数日)」にあることです。骨折、脱臼、捻挫、打撲、挫傷、切創、頭部外傷、脊髄損傷など多岐にわたります。急性外傷の初期対応は、生命予後、機能予後、後遺症の程度を大きく左右するため、ABCDEアプローチ(気道、呼吸、循環、意識、体表)による系統的評価と、適切な初期治療が不可欠です。また、急性期の炎症反応(腫脹、疼痛、熱感、発赤、機能障害)に対する適切な管理が、その後の回復過程に影響します。つまり「突然の外力による組織損傷の急性期」であり、迅速かつ適切な初期対応が予後を決定する重大な病態です。

どこでみるのか

救急外来、整形外科、外傷外科、脳神経外科、リハビリテーション科、集中治療室でよくみます。患者さんの訴えとしては、「転んで手をついた」「階段から落ちた」「交通事故に遭った」「スポーツで膝を捻った」「重い物が足に落ちた」「頭を打った」「動かすと痛い」「腫れて動かせない」といった形で出会うことがあります。

また、高齢者の転倒、交通外傷、スポーツ外傷、労災事故、高所からの転落などで多くみられます。小児では遊具からの転落、高齢者では骨粗鬆症を背景とした軽微な外力での骨折(脆弱性骨折)が特徴的です。救急搬送される重症外傷から、外来で対応可能な軽症外傷まで幅広いです。

何をみているのか

急性外傷でみているのは、単に「怪我をした」ではなく、生命危機の有無、組織損傷の程度、神経血管損傷の有無、合併損傷の有無、機能予後の予測、早期リハビリテーション介入の適応です。バイタルサイン、意識レベル、画像所見(X線、CT、MRI)、神経学的所見、血管評価を統合的に評価します。

そのため、評価では「生命に危険はないか」「緊急手術は必要か」「神経血管損傷はあるか」「感染リスクはあるか」「いつからリハビリ介入できるか」を統合的にみることが重要です。ここを見逃すと、生命危機、不可逆的な神経障害、コンパートメント症候群、深部静脈血栓症、廃用症候群を招きます。

臨床でどうみるか

臨床ではまず、受傷機転(転倒、交通事故、高所転落、スポーツ)、受傷時刻、疼痛の部位と程度、腫脹、変形、神経症状(しびれ、筋力低下)、出血の有無を問診します。そのうえで、バイタルサイン(血圧、脈拍、呼吸、意識)、視診(変形、腫脹、皮下出血)、触診(圧痛、熱感)、神経血管評価(末梢循環、感覚、運動)、画像検査(X線、CT、MRI)を行います。

急性外傷の初期対応では、RICE処置(Rest:安静、Ice:冷却、Compression:圧迫、Elevation:挙上)が基本です。重症外傷では、ABCDEアプローチに従い、気道確保、呼吸管理、循環管理、意識評価、全身観察を系統的に行います。骨折では整復・固定、開放骨折では緊急手術、神経血管損傷では専門医への速やかな紹介が必要です。つまり、重症度の迅速な評価と、適切な初期治療の選択が臨床上のコツです。

評価で何をみるか

バイタルサイン(血圧、脈拍、呼吸数、SpO2、体温)
意識レベル(GCS、JCS)
受傷機転、受傷時刻
疼痛評価(VAS、NRS、部位、性質)
視診(変形、腫脹、皮下出血、開放創)
触診(圧痛、熱感、クレピタス)
関節可動域(自動、他動)
筋力評価(MMT)
神経学的所見(感覚、運動、反射)
末梢循環評価(脈拍触知、毛細血管再充満時間)
画像所見(X線、CT、MRI:骨折、脱臼、軟部組織損傷)
血液検査(貧血、凝固機能、炎症マーカー)
コンパートメント内圧測定(コンパートメント症候群疑い)
二次的損傷の評価(頭部、胸部、腹部、骨盤)
心理的評価(外傷後ストレス)
ADL評価(受傷前と受傷後の比較)

臨床でよく出る問題

激しい疼痛
腫脹、熱感
関節可動域制限
筋力低下
荷重困難、歩行不能
日常生活動作の制限
精神的ショック、不安
急性期の安静による廃用症候群
深部静脈血栓症のリスク
疼痛による睡眠障害
職場復帰、スポーツ復帰の遅延
後遺障害への不安
経済的負担
急性外傷は、疼痛、機能障害、心理的負担により、患者のQOL、社会生活、経済活動に大きく影響します。だからこそ、迅速な初期対応、適切な治療、早期リハビリテーション介入が重要です。

起こりやすい要因

急性外傷は、様々な外力により発生します。代表的な要因は次の通りです。

転倒・転落(高齢者、小児)
交通事故(自動車、バイク、自転車、歩行者)
スポーツ外傷(接触プレー、ジャンプ着地、急激な方向転換)
労働災害(高所作業、重量物取扱い、機械操作)
日常生活での事故(階段、段差、滑りやすい床)
暴力、喧嘩
自然災害(地震、台風、土砂崩れ)
骨粗鬆症(軽微な外力での骨折)
筋力低下、バランス障害(転倒リスク増大)
視覚障害、認知機能低下
薬剤(抗凝固薬、睡眠薬)
飲酒(転倒、交通事故)
たとえば、高齢者では骨粗鬆症により、軽微な転倒でも大腿骨近位部骨折、脊椎圧迫骨折をきたしやすいです。若年者のスポーツ外傷では、前十字靭帯損傷、足関節捻挫が多いです。交通事故では、多発外傷、重症頭部外傷、脊髄損傷のリスクが高まります。つまり「年齢、活動、環境、基礎疾患により外傷リスクと損傷パターンが異なる」ことが特徴です。

注意したい症状

ショック状態(血圧低下、頻脈、冷汗、意識障害)
大量出血(開放骨折、多発外傷)
意識障害(頭部外傷、脳震盪)
呼吸困難(胸部外傷、肋骨骨折、気胸)
麻痺、感覚障害(脊髄損傷、末梢神経損傷)
末梢循環障害(脈拍触知不能、チアノーゼ)
コンパートメント症候群(激烈な疼痛、腫脹、感覚障害)
開放骨折(骨の露出、感染リスク)
脊椎損傷の可能性(頸部痛、背部痛、神経症状)
多発外傷(複数部位の損傷)
脂肪塞栓症(長管骨骨折後の呼吸困難、意識障害)
急性腎不全(挫滅症候群)
このような場合は、生命危機状態、重症頭部外傷、脊髄損傷、コンパートメント症候群、多発外傷、ショックなどを考える必要があります。特に、バイタル不安定、意識障害、麻痺、末梢循環障害がある場合は、緊急治療が必要であり、速やかな専門医への紹介と集中治療が不可欠です。

対応の基本

対応の基本は、まず生命危機の評価と、組織損傷に対する適切な初期治療です。重症外傷では救命が最優先、軽症外傷では機能予後の最適化が目標です。

ABCDEアプローチ(重症外傷)
RICE処置(Rest、Ice、Compression、Elevation)
疼痛管理(鎮痛薬、神経ブロック、冷却)
固定(副子、ギプス、装具)
整復術(骨折、脱臼)
手術療法(開放骨折、血管神経損傷、不安定骨折)
感染予防(開放創の洗浄、抗菌薬、破傷風予防)
深部静脈血栓症予防(早期離床、抗凝固療法)
早期リハビリテーション介入
関節可動域訓練(固定部位以外)
筋力維持訓練(等尺性収縮)
段階的荷重訓練
ADL訓練、復職・復学支援
心理的サポート(外傷後ストレス障害の予防)
多職種連携(医師、看護師、PT、OT、MSW)
リハビリでは、「安静による廃用」と「過負荷による損傷悪化」のバランスを取りながら、可能な限り早期から介入します。

リハビリの視点

リハビリでは、急性外傷を「どう二次的障害を予防するか」「どう機能回復を促進するか」「どう社会復帰を支援するか」という視点が重要です。急性外傷後は、疼痛と腫脹により活動性が低下し、廃用症候群(筋力低下、関節拘縮、心肺機能低下、深部静脈血栓症)のリスクが高まります。

急性期リハビリの原則は、「損傷部位の保護」と「非損傷部位の機能維持」の両立です。骨折部位は固定し安静を保ちますが、固定されていない関節は積極的に動かします。たとえば、下腿骨折でギプス固定中でも、股関節・足趾の運動、等尺性大腿四頭筋訓練は可能です。これにより、筋萎縮と関節拘縮を最小限に抑えます。

また、早期離床は深部静脈血栓症予防、呼吸機能維持、精神的安定に有効です。可能な限り座位、立位、歩行(免荷または部分荷重)を早期に開始します。疼痛管理も重要であり、適切な鎮痛により、リハビリの質と量を確保できます。

高齢者の急性外傷では、受傷前ADLへの復帰が困難なことが多く、早期からの包括的リハビリと退院支援が不可欠です。若年者のスポーツ外傷では、スポーツ復帰を見据えた段階的プログラム、再発予防トレーニングが重要です。単に「安静にする」だけでなく、「損傷を保護しながら、いかに機能を維持・回復させるか」がリハビリの本質です。

ひとことで言うと

急性外傷とは、突発的な外力により身体組織が損傷を受けた急性期の状態で、迅速な初期対応が予後を左右します。

関連用語

RICE処置
ABCDEアプローチ
骨折
脱臼
捻挫
打撲
コンパートメント症候群
開放骨折
多発外傷
廃用症候群
深部静脈血栓症
外傷後ストレス障害

参考文献

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