灼熱痛とは
灼熱痛とは、焼けるような、熱をもったような、ひりつくような痛みを指す表現です。英語では burning pain と表現されます。
ポイントは、灼熱痛は病名そのものではなく、痛みの性質を表す症状の言葉だということです。切り傷や打撲のような痛みとは少し違い、「ジリジリする」「焼ける感じがする」「何もしていないのに熱いように痛む」といった訴えとして現れることがあります。
特に灼熱痛は、神経障害性疼痛でみられやすい表現です。神経が圧迫されたり傷ついたり、脳や脊髄を含む感覚の通り道が障害されたりすると、実際には強い刺激がなくても、異常な痛みとして感じられることがあります。つまり灼熱痛は、単なる炎症の強さだけでなく、神経系の異常な興奮や過敏性を示唆する痛みとして考えることが大切です。
どこでみるのか
灼熱痛は、整形外科、神経内科、脳神経外科、ペインクリニック、リハビリテーション科などでみることがあります。患者さんの訴えとしては、「焼けるように痛い」「熱いものが触れているように痛む」「ヒリヒリする」「ピリピリと熱感が混ざる」といった形で出会います。
よくみられる背景としては、糖尿病による末梢神経障害、帯状疱疹後神経痛、手術後や外傷後の神経障害、椎間板ヘルニアなどによる神経圧迫、脳卒中後の中枢性疼痛などがあります。つまり灼熱痛は、末梢神経でも中枢神経でも起こりうる痛みの表現です。
何をみているのか
灼熱痛でみているのは、単に痛みが強いか弱いかではなく、どのような質の痛みかです。ズキズキするのか、電気が走るようなのか、刺すようなのか、焼けるようなのかで、疑う病態が変わります。
灼熱痛がある場合は、神経の傷みや過敏性が関わっていないかを考えます。特に、軽く触れただけで痛い、冷たい風で痛い、しびれを伴う、感覚が鈍いのに痛い、といった訴えがあるときは、神経障害性疼痛を整理することが重要です。つまり灼熱痛は、痛みの強さよりも痛みの質に注目するきっかけになります。
臨床でどうみるか
臨床ではまず、灼熱痛がどこに、いつから、どのように出ているかを確認します。安静時にもあるのか、触れると悪化するのか、冷えで増えるのか、夜に強いのか、しびれや感覚低下を伴うのかを丁寧に整理します。
そのうえで、痛みの分布が神経の走行と一致しているか、脳や脊髄の病気のあとに出ていないか、皮膚の異常や腫れだけで説明できるかをみていきます。灼熱痛は炎症だけでも表現されることはありますが、アロディニアや痛覚過敏、知覚鈍麻を伴う場合は神経障害性疼痛をより疑います。つまり、灼熱痛そのものだけで判断するのではなく、ほかの感覚異常と一緒にみることが臨床上のコツです。
評価で何をみるか
- 焼けるような痛みがどの部位に出ているか
- 持続的か、発作的か
- しびれ、ピリピリ感、電撃痛を伴うか
- 軽く触れる、衣類が当たる、風が当たるだけで痛むか
- 温度刺激、とくに冷刺激で悪化するか
- 感覚低下や知覚鈍麻を伴うか
- 神経の走行や脳卒中後の麻痺側と一致しているか
- 外傷、手術、帯状疱疹、糖尿病、脳卒中などの既往
- 睡眠、歩行、日常生活への影響
- 必要に応じた画像検査、血液検査、神経伝導検査など
臨床でよく出る問題
- 何もしていなくても焼けるように痛む
- 衣服や布団が触れるだけでつらい
- 冷たい風や冷房で痛みが強くなる
- 痛みと同時にしびれや感覚低下がある
- 一般的な鎮痛薬が効きにくい
- 夜間痛で眠れない
- 痛みが長引き、活動量が低下する
灼熱痛は、見た目に大きな異常がなくても本人の苦痛が強いことがあります。そのため、周囲から理解されにくく、慢性化すると生活の質を大きく下げやすいのが問題です。だからこそ、見た目より痛みの性質を丁寧に拾い上げる必要があります。
起こりやすい要因
灼熱痛は、神経そのものが障害されたり、痛みの処理が異常になったりすると起こりやすくなります。代表的な要因は次の通りです。
- 糖尿病性神経障害
- 帯状疱疹後神経痛
- 手根管症候群などの神経圧迫
- 椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症による神経障害
- 手術後や外傷後の神経損傷
- 脳卒中後の中枢性疼痛
- 脊髄損傷
- 末梢神経障害や多発ニューロパチー
たとえば糖尿病では末梢神経が障害され、足先の灼熱感として出ることがありますし、脳卒中後には視床などの感覚経路の障害によって焼けるような痛みが出ることがあります。つまり灼熱痛は、神経の障害部位によって出る場所や背景が変わるのが特徴です。
注意したい症状
- 急に強い灼熱痛が出てきた
- 痛みと一緒に筋力低下がある
- 排尿・排便障害を伴う
- 広い範囲に感覚低下がある
- 発疹のあとに焼けるような痛みが続く
- 脳卒中や手術のあとから強い灼熱痛が続く
- 夜眠れないほどの痛みが長く続く
このような場合は、単なる筋肉痛や皮膚の痛みではなく、神経障害性疼痛や中枢性疼痛を考える必要があります。特に、急な筋力低下や膀胱直腸障害を伴う場合は、神経の強い圧迫など緊急性の高い病態も考えるため、早めの受診が重要です。
対応の基本
対応の基本は、まず灼熱痛の原因がどこにあるのかを見極めることです。神経の圧迫なのか、末梢神経障害なのか、中枢性の痛みなのかで対応が変わります。
- 原因となる疾患や神経障害を評価する
- 一般的な鎮痛薬だけでなく、神経障害性疼痛に対する薬を検討する
- 必要に応じて理学療法や作業療法を併用する
- 神経ブロックや電気刺激療法を検討することがある
- 神経圧迫が強い場合は手術を検討することがある
- 睡眠障害、不安、抑うつなど心理面も一緒にみる
- 痛みを悪化させる刺激や生活場面を整理する
神経障害性疼痛では、切り傷や打撲の痛みに効く一般的な鎮痛薬だけでは不十分なことがあります。そのため、神経に作用する薬や、痛みの感じ方そのものを調整する治療が必要になります。リハビリでは、痛みを無視して動かすのではなく、悪化因子を避けながら活動性を保つことが大切です。
ひとことで言うと
灼熱痛とは、焼けるような、ひりつくような痛みを表す症状の言葉で、神経障害性疼痛でみられやすい痛みの性質です。