類上皮細胞とは
類上皮細胞とは、マクロファージが変化した上皮細胞様の形態を持つ細胞で、慢性肉芽腫性炎症の特徴的な構成要素です。英語では epithelioid cell と呼ばれます。
ポイントは、類上皮細胞が通常のマクロファージとは異なり、貪食能が低下する代わりに分泌能が高まり、サイトカイン産生や抗原提示機能が増強された特殊な細胞であることです。結核、サルコイドーシス、クローン病、真菌感染症などの慢性肉芽腫性疾患で形成される類上皮細胞肉芽腫は、これらの疾患の診断において重要な病理学的所見です。類上皮細胞は多数集簇して類上皮細胞肉芽腫を形成し、しばしば中心部に乾酪壊死(結核)や非乾酪性壊死を伴い、周囲にリンパ球、Langhans型巨細胞を配置します。つまり「難分解性抗原への組織化された免疫応答の担い手」であり、慢性炎症性疾患の病態理解と診断に不可欠な細胞です。
どこでみるのか
呼吸器内科、感染症内科、消化器内科、リウマチ科、病理診断科、リハビリテーション科でよくみます。患者さんの訴えとしては、「長引く咳が治らない」「発熱が続く」「リンパ節が腫れている」「息切れがする」「体重が減ってきた」「下痢が続く」「腹痛が繰り返す」「皮膚に結節ができた」といった形で出会うことがあります。
また、結核患者、サルコイドーシス患者、クローン病患者、非結核性抗酸菌症患者、真菌感染症患者、ベリリウム症などの職業性肺疾患患者で、生検組織や細胞診で類上皮細胞が確認されます。画像検査で肺や縦隔リンパ節の腫大、肺野の粒状影がみられた際に生検が行われることが多いです。
何をみているのか
類上皮細胞でみているのは、単に「細胞の形態」ではなく、慢性肉芽腫性炎症の存在、原因疾患の鑑別、病変の活動性、治療反応性、予後予測です。組織生検での類上皮細胞肉芽腫の有無、乾酪壊死の有無、抗酸菌染色、真菌染色、血液検査(ツベルクリン反応、IGRA、ACE、リゾチーム)、画像所見を統合的に評価します。
そのため、評価では「肉芽腫形成疾患のどれに該当するか」「結核か非結核性抗酸菌症か」「サルコイドーシスか過敏性肺炎か」「治療反応性はあるか」「リハビリテーション介入の時期と強度は適切か」を統合的にみることが重要です。ここを見逃すと、診断遅延、不適切な治療、感染拡大、呼吸機能低下、ADL低下を招きます。
臨床でどうみるか
臨床ではまず、症状の持続期間(慢性経過)、発熱、咳嗽、喀痰、呼吸困難、体重減少、リンパ節腫脹、皮膚病変、消化器症状、結核接触歴、職業歴、免疫抑制状態を問診します。そのうえで、血液検査(CRP、ACE、リゾチーム、ツベルクリン反応、IGRA)、画像検査(胸部X線、CT、PET-CT)、組織生検(気管支鏡、リンパ節生検、皮膚生検)を行います。
類上皮細胞肉芽腫が確認された場合、次に乾酪壊死の有無を評価します。乾酪壊死があれば結核を強く疑い、抗酸菌染色、PCR、培養を行います。乾酪壊死がなければ、サルコイドーシス、クローン病、過敏性肺炎、真菌感染症などを鑑別します。つまり、組織所見と臨床所見、微生物学的検査の統合的評価が臨床上のコツです。
評価で何をみるか
- 組織生検(類上皮細胞肉芽腫の有無、乾酪壊死の有無)
- 抗酸菌染色(Ziehl-Neelsen染色、蛍光染色)
- 真菌染色(PAS染色、Grocott染色)
- 結核菌PCR、培養
- ツベルクリン反応、インターフェロンγ遊離試験(IGRA)
- 血清ACE(アンジオテンシン変換酵素)
- 血清リゾチーム
- 血清カルシウム、尿中カルシウム(サルコイドーシス)
- CRP、赤沈(炎症マーカー)
- 画像所見(胸部X線、CT:両側肺門リンパ節腫大、粒状影)
- PET-CT(炎症活動性、全身検索)
- 呼吸機能検査(肺活量、拡散能、拘束性換気障害)
- 気管支肺胞洗浄液(BAL)分析(CD4/CD8比)
- 内視鏡検査(クローン病:縦走潰瘍、敷石像)
- 疼痛評価(胸痛、腹痛)
- 呼吸困難評価(mMRC、Hugh-Jones分類)
- ADL評価(Barthel Index、FIM)
- QOL評価(SF-36、SGRQ)
臨床でよく出る問題
- 長引く咳、喀痰
- 呼吸困難、息切れ
- 発熱、寝汗、体重減少
- 倦怠感、易疲労性
- リンパ節腫脹
- 皮膚結節、紅斑
- 眼症状(ぶどう膜炎)
- 消化器症状(腹痛、下痢、血便)
- 呼吸機能低下(拘束性換気障害)
- 運動耐容能低下
- ADLの低下
- 長期治療による精神的負担
- 感染リスク(結核の場合)
類上皮細胞肉芽腫を形成する疾患は、慢性経過をたどり、呼吸機能、消化機能、全身状態、ADLに影響を与えます。だからこそ、早期診断、適切な治療、包括的リハビリテーションが重要です。
起こりやすい要因
類上皮細胞肉芽腫は、難分解性抗原や持続的な免疫刺激に対する組織反応として形成されます。代表的な要因は次の通りです。
- 結核菌感染(最も頻度が高い)
- 非結核性抗酸菌感染(MAC、M. kansasii)
- 真菌感染(アスペルギルス、クリプトコッカス、ヒストプラズマ)
- サルコイドーシス(原因不明の全身性肉芽腫性疾患)
- クローン病(消化管の慢性肉芽腫性炎症)
- 過敏性肺炎(有機塵、カビ、鳥抗原)
- ベリリウム症(職業性肺疾患)
- 異物反応(シリカ、タルク、縫合糸)
- 薬剤性(メトトレキサート、抗TNF-α製剤)
- ウェゲナー肉芽腫症(血管炎症候群)
- リンパ腫(肉芽腫反応を伴う)
- 免疫抑制状態(HIV、ステロイド長期使用)
たとえば、結核菌は細胞内寄生菌であり、マクロファージに貪食されても生き残るため、マクロファージが類上皮細胞に変化し肉芽腫を形成して封じ込めようとします。サルコイドーシスでは、原因不明ながら全身臓器に非乾酪性類上皮細胞肉芽腫が形成されます。つまり「難分解性抗原や持続的免疫刺激への組織化された防御反応」が形成要因です。
注意したい症状
- 血痰、喀血
- 高熱が続く(結核、播種性真菌感染症)
- 著しい体重減少(10%以上)
- 呼吸困難の急激な悪化
- 意識障害(結核性髄膜炎、サルコイドーシスの中枢神経病変)
- 高カルシウム血症症状(サルコイドーシス)
- 腸閉塞、穿孔(クローン病)
- 眼症状の悪化(視力低下、失明リスク)
- 心伝導障害(サルコイドーシスの心病変)
- 多臓器不全の兆候
- 免疫抑制患者での急速進行
- 接触者への感染拡大(結核)
このような場合は、重症結核(粟粒結核、結核性髄膜炎)、播種性真菌感染症、サルコイドーシスの臓器障害(心、中枢神経、眼)、クローン病の合併症、悪性リンパ腫などを考える必要があります。特に、呼吸不全、中枢神経症状、高カルシウム血症、心伝導障害がある場合は、速やかな集中治療が必要です。
対応の基本
対応の基本は、まず原因疾患を特定し、疾患ごとの標準治療を行うことです。結核であれば抗結核薬、サルコイドーシスであればステロイド治療が中心となります。
- 結核:抗結核薬多剤併用療法(HREZ療法)
- 非結核性抗酸菌症:マクロライド、リファンピシン、エタンブトール
- サルコイドーシス:ステロイド治療(重症例、臓器障害例)
- クローン病:5-ASA製剤、ステロイド、免疫抑制薬、生物学的製剤
- 過敏性肺炎:抗原回避、ステロイド治療
- 真菌感染症:抗真菌薬(アムホテリシンB、アゾール系)
- 栄養管理(体重減少、低栄養への対応)
- 呼吸リハビリテーション(呼吸困難、運動耐容能低下)
- 感染対策(結核の場合:隔離、接触者検診)
- 長期フォローアップ(再燃、後遺症の監視)
- 心理的サポート(長期治療、社会的隔離)
- 多職種連携(医師、看護師、薬剤師、栄養士、PT、感染管理)
リハビリでは、疾患の活動期は安静を優先し、治療により炎症が沈静化してから段階的に運動療法を開始します。特に呼吸器疾患では、呼吸リハビリテーションが重要です。
リハビリの視点
リハビリでは、類上皮細胞肉芽腫性疾患を「どう呼吸機能を維持・改善するか」「どう全身状態を保つか」「どう社会復帰を支援するか」という視点が重要です。これらの疾患は慢性経過をたどり、呼吸機能低下、筋力低下、倦怠感、栄養障害により、ADL・QOLが著しく低下します。
結核や非結核性抗酸菌症では、治療により菌が陰性化し炎症が落ち着くまで、感染拡大防止のため隔離が必要です。この間、廃用症候群予防のため、病室内での関節可動域訓練、呼吸訓練、軽い筋力訓練を行います。菌陰性化後は、段階的に歩行訓練、有酸素運動を進め、呼吸筋力、運動耐容能を回復させます。
サルコイドーシスでは、肺病変により拘束性換気障害をきたすため、呼吸リハビリテーション(呼吸法指導、呼吸筋訓練、有酸素運動)が中心となります。ステロイド治療中は、筋力低下、骨粗鬆症リスクが高まるため、レジスタンストレーニング、転倒予防も重要です。
クローン病では、消化器症状、栄養障害、疼痛により活動性が低下します。栄養士と連携した栄養管理と、症状に応じた運動療法で、筋力・持久力を維持します。単に「訓練をする」だけでなく、「疾患の特性を理解し、感染管理と機能回復を両立させる」がリハビリの本質です。
ひとことで言うと
類上皮細胞とは、マクロファージが変化した細胞で慢性肉芽腫性炎症の特徴的構成要素であり、結核やサルコイドーシスなどの診断に重要です。
関連用語
- マクロファージ
- 肉芽腫
- 乾酪壊死
- Langhans型巨細胞
- 結核
- サルコイドーシス
- 非結核性抗酸菌症
- クローン病
- 慢性炎症
- 免疫応答
- 組織生検
- 病理診断
参考文献
- PMC: Histopathologic review of granulomatous inflammation
- PubMed: Epithelioid cell granulomatosis of the lung
- Pathology Outlines: Granulomatous inflammation
- Frontiers: In the Thick of It: Formation of the Tuberculous Granuloma
- NEJM: The Granuloma in Tuberculosis — Friend or Foe?
- PMC: The sarcoid granuloma: 'epithelioid' or 'lymphocytic'
- UpToDate: Clinical manifestations and diagnosis of sarcoidosis
- 胃と腸: 類上皮細胞肉芽腫
- 検査と技術: 類上皮細胞肉芽腫
- 日本サルコイドーシス学会: 病理像
- 日本サルコイドーシス学会誌: 病理から見たサルコイドーシスの鑑別診断
- 難病情報センター: サルコイドーシス
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