逆流性食道炎とは
逆流性食道炎とは、胃酸や胃内容物が食道へ逆流し、その刺激で食道の粘膜に炎症が起こった状態です。広い意味では胃食道逆流症(GERD)の一部として扱われ、胸やけや呑酸(酸っぱいものが上がる感じ)などの症状を伴うことがあります。
「胃酸が少し上がるだけ」と思われがちですが、実際には食道炎、びらん、潰瘍、狭窄、Barrett食道などにつながることがあり、慢性的な咳、嗄声、胸痛、睡眠障害の背景になっていることもあります。臨床では、単なる胸やけとして片づけず、生活習慣、食事、体位、薬剤、肥満、食道外症状まで含めて考えるのが大切です。
どこでみるのか
内科、消化器内科、耳鼻咽喉科、救急外来、一般外来、在宅医療、リハビリテーションの場などでみられます。患者さんの訴えとしては、「胸が焼ける感じがする」「食後に酸っぱいものが上がる」「横になると苦しい」「のどがイガイガする」「咳が続く」といった形で現れます。
リハビリや介護の場では、食後すぐに臥位になる、腹圧がかかりやすい、更衣や移乗で前かがみが多い、肥満や円背がある、嚥下障害や咳反射低下がある、といった背景の中で問題になることがあります。特に高齢者では典型的な胸やけよりも、食欲低下、慢性咳嗽、嗄声、胸部不快感として気づかれることもあります。
何をみているのか
逆流性食道炎でみているのは、単に「胃酸が多いか」だけではありません。胃内容物が逆流しやすい条件があるか、逆流でどの程度症状や粘膜障害が起きているか、そしてそれが生活機能にどう影響しているかをみています。
具体的には、胸やけ、呑酸、食後や臥位での悪化、夜間症状、嚥下時の違和感、慢性的な咳、嗄声、咽頭違和感、非心臓性胸痛などを確認します。また、症状があっても内視鏡で炎症がはっきりしないタイプもあるため、症状の出方と誘因を丁寧に聞き取ることが重要です。
臨床でどうみるか
臨床では、まず症状の時間帯ときっかけを整理します。食後、前かがみ、就寝時、飲酒後、脂っこい食事のあとに悪化するなら、逆流との関連を考えやすくなります。逆に、労作時の胸痛や息切れが中心なら、心疾患など別の病態も考える必要があります。
また、逆流性食道炎は消化器症状だけでなく、咳、嗄声、咽頭違和感、喘息様症状、睡眠の質低下など、食道外症状として現れることがあります。リハビリの視点では、食後の体位、腹圧のかかる動作、体幹前屈姿勢、円背、呼吸パターン、嚥下機能、食事内容、活動時間帯との関係を見ると、症状悪化の場面が整理しやすくなります。
評価で何をみるか
- 胸やけ、呑酸、胸部不快感の有無
- 食後、臥位、前かがみ、夜間で悪化するか
- 咳、嗄声、咽頭違和感、口臭、睡眠障害の有無
- 嚥下困難、つかえ感、疼痛の有無
- 体重増加、肥満、腹圧上昇の背景
- 食習慣(過食、脂肪食、夜食、飲酒、カフェイン)
- 喫煙、ストレス、服薬状況
- 食道裂孔ヘルニアの有無
- 必要に応じた上部消化管内視鏡、pH検査、食道機能検査
- 警告症状の有無(体重減少、吐血、黒色便、進行性嚥下困難など)
臨床でよく出る問題
- 胸やけで食事や睡眠の質が落ちる
- 食後や就寝前に不快感が強くなる
- 慢性的な咳や嗄声が続く
- 口まで酸が上がる感じで不安感が強くなる
- 食欲低下や食事量低下につながる
- 嚥下時の違和感で食べることを避けるようになる
- 慢性化すると食道狭窄やBarrett食道のリスクが出てくる
リハビリや在宅では、食後すぐの臥位、腹圧の高まる動作、便秘、コルセットやきつい衣服、円背姿勢などが症状を悪化させることがあります。症状そのものだけでなく、生活動線や介助方法が関係していることも少なくありません。
起こりやすい要因
逆流性食道炎は、下部食道括約筋の機能低下、腹圧上昇、食道裂孔ヘルニア、胃排出遅延などが重なって起こりやすくなります。代表的な要因は次の通りです。
- 肥満、体重増加
- 食道裂孔ヘルニア
- 脂っこい食事、過食、夜食
- アルコール、カフェイン、チョコレート、刺激物
- 喫煙
- 食後すぐに横になる習慣
- 前かがみ姿勢や腹圧上昇
- 妊娠
- 一部の薬剤(カルシウム拮抗薬、硝酸薬、抗コリン薬、NSAIDsなど)
- ストレスや不規則な生活
つまり、胃酸の量だけでなく、「逆流しやすい体の条件」と「逆流を起こしやすい生活パターン」が合わさって起こる病態と考えると理解しやすくなります。
注意したい症状
- 食べ物がつかえる、飲み込みにくい
- 飲み込むと痛い
- 体重が減ってきた
- 吐血や黒色便がある
- 強い胸痛があり、心疾患との区別が必要
- 貧血や慢性的な出血を疑う
- 薬を使っても改善しない、または再発を繰り返す
これらは単純な逆流症状だけではなく、重度食道炎、食道狭窄、消化管出血、悪性疾患、心疾患などを考える必要があるサインです。特に胸痛では、まず急性冠症候群などを除外する視点が重要です。
対応の基本
対応の基本は、生活習慣と体位の見直し、薬物療法、必要時の精査です。まずは逆流を起こしやすい条件を減らし、そのうえで症状や炎症の程度に応じて治療を進めます。
- 食べ過ぎを避け、少量ずつ食べる
- 就寝前2~4時間は食事を避ける
- 体重管理を行う
- 症状を悪化させる飲食物を減らす
- 禁煙、節酒を行う
- ベッド頭側を少し高くする
- 腹圧のかかりすぎる衣服や姿勢を見直す
- 必要に応じてPPIやH2受容体拮抗薬を用いる
- 難治例では内視鏡検査や手術適応を検討する
リハビリの場面では、食後すぐの臥位を避ける、前かがみ動作のタイミングを調整する、排便時のいきみや便秘を減らす、円背や体幹屈曲姿勢を見直すなど、生活動作の工夫も症状軽減に役立ちます。
ひとことで言うと
逆流性食道炎は、胃酸や胃内容物の逆流で食道に炎症が起こり、胸やけや呑酸、咳、のどの違和感などを生む病態です。
関連用語
参考文献・出典
- NCBI Bookshelf: Gastroesophageal Reflux Disease (GERD)
- Merck Manual Professional Edition: Gastroesophageal Reflux Disease (GERD)
- NHS: Heartburn and acid reflux
- Mayo Clinic: Gastroesophageal reflux disease (GERD) - Symptoms and causes
- Mayo Clinic: Gastroesophageal reflux disease (GERD) - Diagnosis and treatment
- American Journal of Gastroenterology: ACG Clinical Guideline for the Diagnosis and Management of GERD
- American College of Gastroenterology: Acid Reflux/GERD