二分脊椎

二分脊椎とは

二分脊椎(Spina Bifida)とは、胎生期の神経管閉鎖障害により、脊椎が正常に形成されず左右に二分している先天性疾患です。妊娠初期(4週頃)の神経管形成時に閉鎖不全が起こり、脊髄や神経根が障害されます。原因として母体の葉酸不足が指摘されており、妊娠前からの葉酸摂取が予防に有効です。大きく開放性(顕在性)二分脊椎と閉鎖性(潜在性)二分脊椎に分類されます。開放性では脊髄が体表に露出し、重度の運動・感覚障害、排泄障害、水頭症を合併します。閉鎖性では皮膚に覆われ症状は軽度ですが、成長とともに症状が出現することがあります。リハビリテーションは生涯にわたる包括的支援が必要です。

どこでみるのか

病変部位は腰仙部(L4-S1)が最も多く(約70%)、次いで胸腰椎部、頸胸椎部の順です。開放性二分脊椎では背部に髄膜瘤(脊髄髄膜が嚢状に突出)や脊髄披裂が視認できます。閉鎖性では背部皮膚に色素沈着、多毛、皮膚洞(dimple)、血管腫などの皮膚異常が診断の手がかりとなります。臨床では障害レベル以下の運動・感覚機能、下肢の筋力・可動域・変形、排尿排便機能、水頭症の有無(頭囲・大泉門の状態)、シャント機能(水頭症治療)、股関節・膝関節・足関節の変形や脱臼、褥瘡リスク部位、脊柱側弯、キアリ奇形に伴う嚥下・呼吸障害などを包括的に観察します。

何をみているのか

神経学的レベル(障害高位)、運動機能(筋力・麻痺の程度・筋緊張)、感覚機能(表在感覚・深部感覚・痛覚)、反射(腱反射・病的反射)、排尿機能(神経因性膀胱・残尿・尿失禁)、排便機能(便失禁・便秘)、水頭症の有無と程度(頭囲・意識レベル・認知機能)、シャントの機能不全徴候、下肢の変形(股関節脱臼・内反足・外反足・尖足)、脊柱変形(側弯・後弯)、ADL能力(移動・移乗・セルフケア)、認知機能・学習能力、社会適応能力、二次的合併症(褥瘡・尿路感染・腎機能障害・拘縮)、補装具・車椅子の適合性、心理的適応状態などを評価します。

臨床でどうみるか

まず障害レベルを特定します。徒手筋力テスト(MMT)で各筋の筋力を評価し、国際基準に基づき神経学的レベルを判定します(例:L4レベルでは股関節屈曲・膝伸展は可能だが足関節背屈は不能)。感覚評価では各デルマトームの触覚・痛覚を確認します。排泄機能は排尿日誌、残尿測定(導尿または超音波)、尿流動態検査(可能であれば)で評価します。水頭症はシャント術後の場合、シャント機能をチェックし(頭痛・嘔吐・意識変容・易刺激性等の症状)、頭部CTやMRIで脳室拡大を確認します。整形外科的評価では股関節X線(脱臼の有無)、脊柱全長X線(側弯角度)、足部の変形を評価します。ADL評価はFIM(Functional Independence Measure)やWeeFIM(小児用)を用い、移動能力は歩行可能レベル、車椅子レベル、移乗レベルに分類します。成長に伴う変化(係留脊髄症候群:tethered cord syndrome)の徴候(腰痛・筋力低下の進行・排尿障害の悪化・足変形の進行)も注意深く観察します。

評価で何をみるか

  • 神経学的レベル(障害高位の特定)
  • 徒手筋力テスト(MMT、特に股関節・膝・足関節)
  • 感覚評価(デルマトーム毎の触覚・痛覚・深部感覚)
  • 腱反射・病的反射(Babinski徴候等)
  • 関節可動域(ROM、特に股関節・膝・足関節)
  • 下肢変形(股関節脱臼・内反足・外反足・尖足・膝屈曲拘縮)
  • 脊柱側弯角度(Cobb角)
  • 排尿機能(残尿量・尿失禁の有無・導尿の必要性)
  • 排便機能(便失禁・便秘・浣腸の必要性)
  • 水頭症の有無(頭囲・大泉門・意識レベル)
  • シャント機能(機能不全の徴候)
  • 認知機能(WISC・K-ABC等の発達検査)
  • ADL能力(WeeFIM・Barthel Index)
  • 移動能力(歩行レベル・歩行距離・補装具の種類)
  • 褥瘡リスク(Braden Scale)
  • 腎機能(クレアチニン・BUN・尿検査)
  • 尿路感染の有無
  • 係留脊髄症候群の徴候
  • 心理社会的適応(QOL評価)
  • 補装具・車椅子の適合性

臨床でよく出る問題

  • 運動麻痺(両下肢の弛緩性麻痺または不全麻痺)
  • 感覚障害(障害レベル以下の感覚脱失・鈍麻)
  • 神経因性膀胱(排尿困難・尿失禁・尿閉・残尿)
  • 神経因性直腸(便失禁・便秘)
  • 水頭症(脳室拡大による頭蓋内圧亢進)
  • シャント機能不全(感染・閉塞・離断)
  • 股関節脱臼・亜脱臼
  • 足部変形(内反足・外反足・尖足)
  • 脊柱側弯・後弯
  • 関節拘縮
  • 褥瘡
  • 尿路感染症(反復性)
  • 腎機能障害(水腎症・腎不全)
  • 係留脊髄症候群(成長に伴う症状悪化)
  • キアリ奇形に伴う嚥下・呼吸障害
  • 認知機能障害・学習障害
  • 二次的な肥満
  • 心理社会的問題(自尊心低下・いじめ等)

起こりやすい要因

先天性疾患であるため、胎生期の要因が主です。母体の葉酸不足(妊娠初期)、遺伝的素因(家族歴)、母体の糖尿病、肥満、抗てんかん薬(バルプロ酸等)の使用、高熱、放射線被曝などが発症リスクを高めます。二次的問題の発生要因としては、不適切な排泄管理(尿路感染・腎障害)、シャント管理不足(感染・機能不全)、不十分なリハビリや補装具使用(拘縮・変形の進行)、褥瘡予防不足、肥満(活動量低下)、心理社会的サポート不足などが挙げられます。

注意したい症状

水頭症悪化の徴候(頭痛・嘔吐・意識変容・易刺激性・傾眠・大泉門膨隆)、シャント感染(発熱・シャント経路の発赤腫脹)、係留脊髄症候群の徴候(腰痛・筋力低下の進行・排尿障害の悪化・足変形の急速な進行・側弯の悪化)、尿路感染症(発熱・混濁尿・腰背部痛)、腎機能障害(浮腫・高血圧・尿量減少)、褥瘡の発生・悪化、呼吸障害や嚥下障害の出現、骨折(感覚障害により気づかれにくい)、深刻な精神的問題(自殺念慮等)などは、速やかに医師へ報告し精査・治療が必要です。

対応の基本

包括的な多職種チームアプローチが不可欠です。出生直後は開放性病変の閉鎖術、水頭症に対するシャント術を行います。整形外科的には股関節脱臼・足部変形に対する矯正手術を適宜実施します。排泄管理は清潔間欠導尿(CIC)の導入と指導、排便管理プログラム(浣腸・坐薬・食事管理)を確立します。リハビリテーションでは、障害レベルに応じた理学療法(筋力訓練・ROM訓練・歩行訓練)、作業療法(ADL訓練・巧緻動作訓練)を実施します。装具療法(長下肢装具・短下肢装具・靴型装具)により歩行を支援し、必要に応じて車椅子を処方します。褥瘡予防は除圧マットレス、体位変換、皮膚観察の徹底が重要です。教育支援では特別支援教育や学習支援を提供し、心理的サポート(自己受容・自立支援)も並行します。成人期への移行支援(トランジションケア)として、自己管理能力の獲得、就労支援、性教育も含めた包括的な支援を行います。

リハビリの視点

二分脊椎のリハビリテーションは生涯にわたる長期的支援です。乳幼児期は発達促進と変形予防、学童期は歩行能力の獲得と維持、ADL自立、学校適応、思春期以降は自己管理能力の確立と社会参加支援が目標となります。障害レベルにより予後は大きく異なり、L4以上の高位損傷では車椅子主体、L5-S1レベルでは装具歩行または独歩が可能なことが多いです。重要なのは「できること」を最大限に伸ばし、QOLを高める視点です。排泄管理の自立は社会参加の鍵であり、CICや排便管理の習得支援は最優先課題です。二次的合併症(尿路感染・腎障害・褥瘡)の予防は生命予後に直結するため、患者・家族への教育が不可欠です。成長に伴い係留脊髄症候群による機能低下が起こりうるため、定期的な神経学的評価が必要です。心理社会的側面では、障害受容、自尊心の育成、ピアサポート、就学・就労支援が重要であり、多職種連携により包括的に支援します。

ひとことで言うと

二分脊椎は胎生期の神経管閉鎖不全による先天性疾患で、運動・感覚・排泄障害を呈し、生涯にわたる包括的支援が必要です。

関連用語

  • 神経管閉鎖障害
  • 開放性二分脊椎
  • 閉鎖性(潜在性)二分脊椎
  • 脊髄髄膜瘤
  • 水頭症
  • シャント術
  • 神経因性膀胱
  • 清潔間欠導尿(CIC)
  • 神経因性直腸
  • 係留脊髄症候群
  • キアリ奇形
  • 股関節脱臼
  • 脊柱側弯
  • 葉酸
  • トランジションケア

参考文献

関連記事

  • 神経因性膀胱の管理と清潔間欠導尿(CIC)の実際
  • 水頭症とシャント管理の注意点
  • 二分脊椎児の発達段階別リハビリテーション
  • 係留脊髄症候群の早期発見と対応
  • 二分脊椎患者の褥瘡予防と皮膚管理
  • トランジションケア:小児から成人医療への移行支援

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