テニス肘

テニス肘とは

テニス肘(tennis elbow、上腕骨外側上顆炎 lateral epicondylitis)とは、肘の外側にある上腕骨外側上顆から起始する前腕伸筋群、特に短橈側手根伸筋の起始部に生じる腱の障害です。テニスの反復動作が代表の一因ですが、実際にはテニスをしない人にも多く、パソコン操作や家事、工具の使用といった日常・職業動作で生じます。

40〜50代に多く、肘の外側の痛みと握ったときの痛みが特徴です。病理は単純な炎症ではなく、腱の変性(腱障害)として捉えられており、治りにくく再発しやすい反面、適切な負荷管理と運動療法で改善が期待できる病態です。

どこでみるのか

整形外科やリハビリテーション科で頻繁に遭遇します。患者さんの訴えは「肘の外側が痛い」「物をつまむと痛い」「コーヒーカップやペットボトルを持てない」「手を握る力が弱い」などです。テニスなどのラケット競技、楽器の演奏、工具やペンを使う仕事の方で生じやすく、症状が長引きやすい点も特徴です。

リハビリの場では、握り動作や手関節の背屈での疼痛をきっかけに評価します。

何をみているのか

評価の中心は「圧痛の部位」と「誘発テスト」です。外側上顆のやや前方・遠位の圧痛を確認し、抵抗性手関節伸展テストや中指伸展テストで疼痛の再現を確かめます。頸部神経根症や橈骨トンネル症候群が同じ部位の痛みを生じ得るため、鑑別が重要です。

さらに、痛みの出る動作(握り・背屈・回外)、日常生活での不便、活動量との関係を整理します。腱障害としての段階(急性〜慢性)を捉えることで、対応の順序が決まります。

臨床でどうみるか

触診で外側上顆とその遠位の圧痛を確認します。抵抗性手関節伸展テストでは、肘伸展位での手関節の抵抗性伸展により痛みが再現されるかを見ます。中指伸展テストでは、肘伸展・手関節中立位での中指の抵抗性伸展で痛みが誘発されるかを確認します。椅子持ち上げテストも実用面の疼痛の指標になります。

超音波検査では腱の低エコー域や肥厚、石灰沈着を確認できます。頸部の神経学的スクリーニングと橈骨トンネル症候群のテスト(圧痛部位の遠位、中指伸展)を必ず組み合わせ、診断の妥当性を確認します。

評価で何をみるか

テニス肘の評価では、痛みの部位と誘発条件を整理します。

  • 圧痛の部位 - 外側上顆のやや前方遠位の圧痛を確認
  • 抵抗性手関節伸展テスト - 肘伸展位での抵抗性伸展による疼痛を確認
  • 中指伸展テスト - 中指の抵抗性伸展での疼痛を確認
  • 椅子持ち上げテスト - 実用動作での疼痛と握力の低下を確認
  • 握力 - 疼痛による低下と左右差を記録
  • 超音波所見 - 腱の低エコー域・肥厚などの変化を確認
  • 鑑別所見 - 頸部の神経所見と橈骨トンネル症候群の所見を確認

これらの所見は治療方針と直結します。圧痛の部位が遠位にあれば橈骨トンネル症候群を、頸部由来の所見があれば頸部の評価へ進むなど、外側上顆炎と決めつけず、所見の矛盾を確認することが大切です。

臨床でよく出る問題

テニス肘がある方では、以下のような問題が生じやすくなります。

  • 握力の低下 - 物が持てず生活動作が制限される
  • 慢性化 - 数ヶ月〜1年以上の経過が長引く
  • 再発 - 症状が軽くなった直後の活動再開で悪化
  • 活動制限 - 仕事・家事・スポーツの継続が難しくなる
  • 治療法の選択の迷い - 注射・装具・運動療法の優先順位が分からない

問題の多くは「痛みを避けて動かない」ことと「痛む動作を続ける」ことの両極端から生じます。腱の修復には適切な負荷が必要であり、完全な安静でも過剰な使用でも改善しません。活動調整と負荷の再構築を組み合わせることが大切です。

起こりやすい要因

テニス肘の背景には、腱への反復性の負荷が関与します。

  • 反復性の使用 - 握り・背屈・回外を含む動作の繰り返し
  • 急な活動量の増加 - スポーツや作業の開始・再開
  • フォーム・道具の問題 - ラケットの硬さや握りの太さ、動作の癖
  • 40〜50代 - 腱の変性が重なる年代
  • 加齢に伴う腱の変性 - 腱障害の背景

つまりテニス肘は、腱の変性という土台に過負荷が重なって生じます。道具やフォームという条件の見直しは、痛みの再発防止に直結するため、運動療法と合わせて確認します。

注意したい症状

以下のような症状では、他の病変を考慮して評価します。

  • 安静時痛・夜間痛 - 感染や腫瘍、リウマチ性疾患の除外
  • 頸部・上腕への放散痛 - 頸部神経根症の評価
  • 圧痛が遠位 - 橈骨トンネル症候群の可能性
  • 指の伸展障害 - 後骨間神経麻痺の評価
  • 腫脹・熱感 - 関節内の病変の評価

テニス肘は慢性の経過をとることが多い一方、上記のような変化は別の病変のサインです。「テニス肘だろう」と片付けず、圧痛の部位と神経所見、全身状態を確認し、画像評価の適応を検討することが重要です。

対応の基本

対応の中心は、活動調整と運動療法を軸に、必要に応じて他の治療を組み合わせることです。

  • 活動調整 - 痛む動作の負荷を減らしながら完全安静を避ける
  • 運動療法 - エキセントリック運動を含む段階的な負荷訓練
  • ストレッチング - 伸筋群の柔軟性改善
  • 装具(肘バンド) - 腱への負荷を分散させる
  • 注射 - 医師の判断によるステロイド注射(多用は避ける)
  • 手術的対応 - 保存療法で改善しない難治例での適応判断

対応の中心は「適切な負荷をかけ直すこと」です。腱は適切な負荷で強くなる組織であり、エキセントリック運動を中心に、痛みを段階的に許容しながら進めます。注射は短期間の症状緩和に有効な反面、多用は再発につながるため、運動療法と組み合わせます。

ひとことで言うと

テニス肘とは、前腕伸筋群の外側上顆への付着部に生じる腱の障害で、肘の外側の痛みと握りにくさが特徴です。腱の変性を考慮した活動調整とエキセントリック運動を中心に、鑑別を確認しながら対応します。

関連用語

参考文献・出典

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