ウォーミングアップの目的とは
ウォーミングアップとは『準備運動』とも言われ、その目的はパフォーマンスの向上と障害の予防です。
つまり目的とする運動に対して身体的・心理的によい状態で臨むための運動を指します。
身体的な変化想像がつきますが、ウォーミングアップには心理的効果もあります。それは試合の前の緊張感を適度に調整し集中力を高める効果です。集団戦においては試合前のチームの一体感を作る働きもあり、試合本番の前の重要な役割を果たします。選手によっては試合の際に気持ちが乗ってこない人もいるかもしれません。特に日本人はスロースターターな人が多いと言われています。
実は緊張状態と心拍数には相互関係があり、ウォーミングアップにより適度な心拍数に保つことは心理的に適度な緊張感を保つことになるのです。
ウォーミングアップの生理学的変化とは
心拍数の増加
ヒトは安静時に比べ運動をすると筋収縮のためのエネルギーを作るために血液中の酸素を必要とします。そのため、呼吸数や心拍数が上昇し血流を増大させる反応が生じます。
このような全身のエネルギー代謝が急激に生じると心臓や肺、血管の負担が大きくなってしまうために軽めの運動でゆっくりと反応させる『ウォーミングアップ』が必要となるのです。
また、この機序によりメインとなる運動の前に心肺機能に適度な負荷がかかりエネルギー代謝の効率が上昇しパフォーマンスの向上に繋がります。
筋温の上昇
筋収縮を繰り返すことで筋血流が増加すると筋のエネルギー代謝の活性化や筋の粘性の低下が生じます。筋の粘性が低下すると筋収縮の際の筋線維の滑走が滑らかになり、効率的に筋出力を発揮する事が可能となります。
また肉離れなどの筋損傷は筋線維の硬い部分と軟らかい部分の境界で滑走性が均一でない部分で生じると言われています。
そのためウォーミングアップは筋温を上昇させ滑走性を向上する事で筋損傷の予防に繋がります。
また筋温上昇は筋収縮時だけでなくストレッチを行った際にも生じるので運動とストレッチを組み合わせることで効果的に筋の柔軟性を高める事が出来ます。
関節可動域の増大や関節周囲の軟部組織の柔軟性の向上
体温や筋温が上がると、関節内の滑液の分泌が促進されると言われています。
つまりは関節自体の動きも滑らかになりスムーズな関節運動が可能となります。
また関節運動により軟部組織の伸展性が増大し、関節内の副運動(アクセサリームーブメント)もスムーズに動くことで捻挫などの外力に対する関節周囲の靱帯損傷の予防に繋がります。
大脳の興奮水準を高める
大脳の興奮水準を高めるとはいうなれば『火事場の馬鹿力』のことで、大きな声を出したりすると普段よりも強い力を発揮する事が出来ます。
覚醒度の低い患者さんは強い力を発揮する事は困難です。
これは健常の人も同様で、寝起きや眠たい時のパフォーマンスが低下するのは自然なことですね。
そのため、覚醒度を引き上げる為に寝ている時間が多い方は座位姿勢を保持し、起立を促すことで頭部位置が高くなる事で網様体賦活系が働き覚醒度が向上します。
そのため、リハビリ中の適度な会話もこの興奮水準を高めることを助けますので、無言のリハビリよりもパフォーマンスを上げやすいかもしれません。
また、大脳の興奮水準といえばイメージトレーニングも関与します。イメージトレーニング根拠は運動学習に基づいており、認知段階、連合段階、自動化段階に分けられ、時期に応じて前頭前野、頭頂連合野、補足運動野、小脳などが働くと言われています。
なかでも補足運動野は記憶学習に基づく連続運動の実行機能を有しており、小脳には意図した運動と実際の運動とのズレを調整する機能があります。
このように実際に行いたい運動をイメージしたり、模倣することで動作の正確性や再現性が向上します。
脊髄レベルの反射・反応速度が増大する
筋には筋の長さを検知する筋紡錘という器官があり、筋が伸長されると、脊髄への求心性神経にインパルス(信号)が伝達され、α運動ニューロンという遠心性神経のインパルスにより筋肉を収縮させます。
一般的に脊髄反射と呼ばれる反応ですが、この反射機構を利用して意図的にこの反射を反復することで神経インパルスの速度上昇や神経レセプターの感度上昇し反射反応速度が向上します。
このようなメカニズムを利用したウォーミングアップにバリスティックストレッチングというものがあり、ある程度速く反動をつけたストレッチをすることでスポーツの際に必要な反射速度を確保する事が出来ます。
最後に
ここまで読んで下さりありがとうございます(;^ω^)
実はウォーミングアップにも色々な方法がありますので次回はウォーミングアップの方法などもう少し詳しく書いていきたいと思います。
病院でのリハビリにウォーミングアップという考えは使われているでしょうか?
競技ではないので心拍数を上げてから挑むということは少ないかもしれませんが、アクティブストレッチで動的可動域を確保すると歩行練習に活かせると思います(;^ω^)