内部疾患

浮腫シリーズ第5弾【リンパ浮腫について知ろう】

リンパ浮腫って何?

リンパ浮腫とは多くはガンの手術などにより合併する症状です。ガンの転移を防ぐためにガン細胞付近のリンパ節を一緒に取る場合があり、その後の術後合併症などによりリンパ管の流れが悪くなり浮腫が生じます。

全身循環の中で毛細血管を透過して組織間へ流出した水のほとんどは静脈へ再吸収されますが、吸収されずに残された水と一部の蛋白はリンパ管を経由して吸収されます。

このとき、リンパ管の閉塞があったり外科手術による多数のリンパ節の除去がなされていた場合にはその吸収が障害され、蛋白は組織間に残存することになります。

こうした蛋白により組織間液の膠質浸透圧が上昇し、さらに水の貯留を促進して浮腫を作りだします。膠質浸透圧については浮腫シリーズで読んでみて下さい(*'▽')​

そもそもリンパってなに?

毛細血管から浸出した一般にアルカリ性の黄色の漿液性の液体をさします(漿液は黄色いドロッとした体液です)

血漿成分から成り、リンパ液とも呼ばれます。漢字で書くと「琳巴」・・・・使わないですが。

細胞間を流れる細胞間質液(間質リンパ)とリンパ管の中を流れるリンパ液はその濃度が違いますが中身は同じものです。

タンパク質の含有量は血管内のほうが多く、膠質浸透圧は血管内で約28mmHg、血管外では約8mmHgと圧差があり、(血管の部位により程度はばらつきます)細胞間質液(間質リンパ)中の水分はこの圧差によって静脈に水分、電解質、血液ガスが戻り、筋肉の動きにより分子量の大きなタンパク質やウイルスなどの異物等がリンパ管に吸収され管内リンパとなります。

浸透圧は半透膜(細胞膜)を隔てて濃度の異なる水溶液に対して水分子が移動して濃度を等しくする働きです。

この図で分かるように血管内の浸透圧が大きいので血管内に水分を引き込む力が大きいというふうに考えます。半透膜は水だけ通れる膜です。

リンパ液は先ほど述べたようにドロッとした漿液で、間質液やリンパ管の中を行き来し、更に血液循環系に運ぶ役割をもちます。

リンパ管は、静脈と似た構造をもち、逆流を防ぐ弁がところどころにあります。リンパ液の組成は細胞外液の組成とほぼ等しいが、多数のタンパク(リンパ球)を含んでおり、そのため浸透圧が高いです。

また、リンパ節(リンパ腺)は網状内皮細胞からなり、リンパ液に入った細菌や異物を濾過、貪食、除去するフィルターの役割を果たします。

そのためリンパ液というのは毛細血管で静脈から血液を取り込み、リンパ節で濾過、貪食してキレイにして再び血管に戻すことで全身の血液を浄化していると言えます。

『はたらく細胞』を見ると理解が早いかもしれません。

リンパの機能を更に詳しく

1時間でののリンパ流量は安静時で120mℓほどであり、血液量の30万mℓ(300ℓ)/hに比べると非常に少ないですが、その機能は極めて重要であるといえます。(正確には体重で異なります)

①間質液中の水分と蛋白質の回収

②小腸からのリンパによる脂肪の吸収

③細菌や異物の処理と生体防衛機能

腎臓以外のすべての毛細血管から濾出する分は、成人でおよそ20ℓ/日であるとされる。それに対して静脈系毛細血管への再吸収は17ℓ/日とされ、組織液中に残される3ℓの水分が基本的にリンパ系を介して血管に戻されます。

また、毛細血管から濾し出された一部蛋白質も同様にしてリンパ系へ回収され、静脈に戻されている。細胞間の移動は大きいですがリンパ液の流量は1日で約2~4リットル(左右静脈角に戻る流量の和:上記の3ℓはこれ)

リンパ球の働き

血液成分に含まれ、ウイルスや細菌などを死滅させ免疫機能に働く細胞を指します。内容としてはTリンパ球(T-細胞)Bリンパ球(Bー細胞)NK細胞があります。

B細胞(Bリンパ球)は白血球のおおよそ20〜40%の割合を占めている免疫細胞です。

侵入した異物(抗原)が危険であるかどうかを判断し、ウイルスなどを排除する働きがあります。このB細胞が成熟すると、形質細胞となります。

形質細胞は、ヘルパーT細胞と協力をして、抗体(ウイルスなどの抗原が体内に入ってきた際に攻撃をするタンパク質)を作り、放出する役割を持ちます。

このように、抗原と戦ったB細胞の一部はメモリーB細胞となって次回の感染に備えます。メモリーB細胞は、一度侵入したことのある抗原の情報を記憶しておくことができ、次回の感染時により早く対応できるようになります。

T細胞(Tリンパ球)は、血液中に存在するリンパ球のうち、おおよそ60〜80%の割合を占める細胞です。

 

ヘルパーT細胞は、樹状細胞(皮膚や血液中に存在する免疫細胞)から抗原の情報を伝達してもらい(抗原掲示)、キラーT細胞に指示をしたり、B細胞やマクロファージを活性させたりします。

マクロファージは全身に広がっている免疫細胞で、体内に侵入した抗原を食べて消化、殺菌することで、細菌感染を防ぐ働きを持ちます。

さらに、キラーT細胞は、ヘルパーT細胞から指令を受け、ウイルスなどに感染してしまった細胞を壊します。

そして、働く細胞が過剰に働きすぎないようにコントロールするのが制御性T細胞です。各細胞に攻撃の終了を指示することで、免疫異常を防いでくれます。

 

ナチュラルキラー細胞(NK細胞)は血液中に存在するリンパ球の約10〜30%を占めています。

殺傷能力の高い免疫細胞で、全身を巡回し、がん細胞やウイルスなどを見つけたら直ちに攻撃するという特徴があります。また、生まれつき体に備わっている免疫細胞(自然免疫)に分類されます。

なおNK細胞には、レセプター(受容体)と呼ばれる、抗原を調べるためのアンテナのようなものが2種類備わっています。これらをうまく使い分けることで、ウイルスなどに感染した細胞と健康な細胞を見分けています。

リンパ浮腫の進行とそれに伴う弊害など

リンパ浮腫の病期(International Society of Lymphology の分類)

0

潜在機または無症候性の病態。
リンパ管シンチなどでリンパ管の閉塞はみられるが、臨床的には浮腫を認めません。

1

比較的タンパク成分が多い組織間液が貯留していますが、まだ初期であり、四肢を上げることにより改善されます。圧痕が見られることもあります。

毛細リンパ管が拡張して、真皮層に浮腫の変化が現れやすい。

2

四肢の挙上だけではほとんど組織の腫張が改善しなくなり、圧痕がはっきりとします。

慢性炎症細胞や組織球の浸潤がみられます。

2期後期

組織の線維化がみられ、圧痕がみられなくなります。

3

圧痕がみられないリンパうっ滞性象皮症のほか、表皮肥厚、脂肪沈着などの皮膚変化みられるようになります。

真皮内に組織球の浸潤が著名となります。真皮内の線維芽細胞の増生の増加がみられます。
皮下組織に脂肪組織の増加がみられる。

2期以降からは炎症による結合組織の増加や皮下組織・筋膜の線維化が進行し組織の硬化を促進すると考えられています。

線維化が強くなると皮下組織の弾力性が損なわれ、さらにリンパ流を障害して浮腫を悪化させます。

また、炎症を繰り返すことで正常なリンパ管が消失してリンパ節も線維化してきます。

このように浮腫を放置すると浮腫による可動域の制限だけでなく、組織の線維化による拘縮の進行も生じます。

また、浮腫により足底への荷重感覚の鈍麻や、浮腫による下肢の重量増加(2~4㎏)によっても活動性は低下してしまい、理学療法を提供するうえでも非常に厄介な症状だと言えます。

浮腫の評価(PT)

①ピッティングエデマ

指で浮腫のある部分を押すことでどの程度の時間で戻るかで判断します。

40秒以内であればファストエデマ(fast edema):低アルブミン血症

40秒以上であればスローエデマ(slow edema):心不全・腎不全など

ノンピッティングエデマ:甲状腺機能低下症、蜂窩織炎など

②Figure-eight法(8の字法)

手部の8の字法

写真は同僚の手を借りております。

足部の浮腫に対しての8の字法

外果→舟状骨結節→第5中足骨底→内果→アキレス腱→外果で回してみましょう。

浮腫に対する理学療法

①挙上:心臓よりも30cm程度高く保持することで重力で浮腫が改善します。

②圧迫:弾性包帯や弾性ストッキングを使用してリンパ及び静脈血を還流させます。心臓の拡張期血圧を越えない圧力が良いとされています。リンパは強く圧迫すると停滞するので靴下などで締め付ける部分があると逆効果となります。

③マッサージ(リンパドレナージ):心臓に向かって圧迫するかさすり上げることで還流を促します。流速は自然速度の約5~10倍になると言われています。停滞することが多いので大面積が浮腫しているときは大腿部→下腿→足部の順番で行うと比較的スムーズに還流します。リンパ管は逆流を防ぐ弁があるので末梢を圧迫しても還流できますが皮膚の伸長などを考えると疼痛が少ない方法で近位部から先に行うと良いでしょう。

④運動療法:圧迫下での下肢のペダリングで有意に浮腫の体積減少がみられる。また圧迫下での踵上げ(カーフレイズ)や軽めのスクワットも浮腫の改善に有効です。

参考文献

信州医誌,48⑸:305~318,2000

日本フットケア学会雑誌:2017,15(3)116-123

慶応義塾大学学術情報リポジトリ『浮腫の圧迫下での運動療法の効果と最適な運動様式の指針の作成に関する研究』

シンプル病理学:南江堂

病理学(疾病のなりたちと回復の促進):医学書院

医療系学生のための病理学:講談社サイエンティフィク

病気がみえる:メディックメディア

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