浮腫・むくみとは?
浮腫とは一般的に言われる『むくみ』のことです。
何らかの原因で細胞と細胞の間の水が異常に増加し体外に十分に排泄されずたまった状態のことをいいます。
サードスぺース(third space)という細胞と血管のすきまに水分が溜まると言われることもありますが、最近は、サードスペースは解剖学的には無いと言われており徐々に使われなくなってきました。
概念的には血管やリンパ管、もしくは細胞間の間に水分が全身もしくは局所的に水がたまることです。
多いときは数キロの体重増加を伴うこともありますが、体の脂肪分が増える肥満とは異なり主に水分のみが増えた状態です。
炎症を伴う動脈血の増加ではなく、静脈血の増加が浮腫となります。
浮腫は心臓、腎臓、肝臓、甲状腺などのさまざまな疾患と関わりがあり、また薬剤の副作用による場合やリンパの流れが悪くなって発症している場合、乳がん・婦人科がんの術後の影響による場合もあるため症状が気になれば放置せずに検査を受けることが大切です。
原因
浮腫の原因疾患として多いのは腎臓病であり、ネフローゼ症候群(血液中のアルブミンというタンパク質が尿へたくさん漏れ出て起こる病気)や腎不全などが挙げられます。通常は尿がでればそんなに浮腫は起きないのですが、血中成分が多く成れば浸透圧で水分が血管内に溜まるので浮腫が起きやすいです。
心不全や肝不全などの全身疾患、甲状腺機能低下などえも浮腫は生じます。心不全は血流の阻害による全身性浮腫が起きますし、肝不全なども同様に血液中の不要な物質を分解する働きがありますので浸透圧の影響で静脈に水分が貯留し浮腫の原因となります。
同様に利尿ホルモンの影響なども受けます。いずれにしろ血液が体外に排出されないなどによるイン・アウトのバランスが崩れインが多くなりすぎた状態です。
症状
浮腫部分を10秒以上強く指で押すと、へこみができて元に戻らなくなります。
腎臓病が原因となって生じる浮腫は体の左右両側にこのような症状が表れ、最初は足部に生じ、その後全身にむくみが広がります。
ひどい場合は体重が数キロから10キロ近く増えることもあります。この場合は利尿薬によりほぼ同量の尿が排出されます。
朝よりも夕方のほうが体重が増えていることが多く、尿の量が少なくなるのも特徴です。
むくみが肺にも達すると呼吸困難を起こすこともあります。心不全、肝不全、甲状腺機能低下症、薬剤性浮腫の場合も同じく両方の足に症状が出ます。
甲状腺機能低下症の場合は指で押さえても跡が残らないむくみが出るのが特徴です。
治療
浮腫の原因となっている病気の治療が主体となります。上述したもの以外にも沢山あるので、ここでは書ききれませんが浮腫そのものの治療としては、利尿剤を使って体にたまった過剰な水分を排出する方法などがあります。期間は症状や病気によって、短期間のみの場合もあれば長期間続ける必要がある場合もあり様々です。
大動脈瘤と全身性浮腫が併発している場合などは大変リスクが高いのでまずは浮腫の改善として利尿剤を出すことが多いと思います。
理学療法士が浮腫に対して可能なことはドレナージなどの圧迫や挙上ですね。
部位や原因によって治療は異なりますが筋ポンプ作用を利用するために足関節の底背屈運動などを行うことも有効です。
また、軽度であれば入浴も有効です。これは血管ポンプ作用も期待できます。
勿論、血管拡張だけで血管収縮が無いので温冷交代浴などの血管に直接影響を与える治療が必要ですが、あくまで健常人の軽度の浮腫は入浴だけでもかなり改善します。
入浴では静水圧といって水圧が血管をポンプでするのでこれも血流改善に有効です。
交代浴については⇒こちら
腎臓や肝臓が原因で血液中のタンパク質が少なくなっている場合は、それに対する治療を中心的に行っていきます。
このように自宅で運動やマッサージ、ストレッチなどを取り入れてむくみを生じにくくしたり、姿勢や生活習慣を改善したりすることも有効です。
弾性包帯や医療用圧迫ストッキングを使用した圧迫療法は最も簡便かつ効果が期待できる治療として有用です。睡眠を邪魔しないような睡眠時用の弾性ストッキングも売っていますので試してみるといいと思います。
浮腫の予防
むくみは長時間同じ姿勢を取ることによって生じやすくなります。
歩行が出来る方は出来るだけ座りっぱなしや立ちっぱなし、寝っぱなしなどの同姿勢は避けましょう。
足を上げて休ませるなどのセルフケアを行ったり、椅子に座った状態の時もつま先を上げ下げしたり、ふくらはぎをマッサージしたりして意識的にむくみの改善を図ることが大切です。
むくみが気になる場合は、就寝時には足を少し高くして寝るようにしてみましょう。枕やタオルを置くのもいいですが、寝ている間に足元からなくなってしまう人が多いようです。
膝下付近のシーツの下に布団幅の毛布や座布団を入れて、足元全体をかさ上げするのが効果的です。
今回のお話は浮腫に関してのお話でした。
もう少し理学療法と接点のある話もしたいですし、浮腫についても色々書きたいことがあるので第2弾も書きたいと思います(;^ω^)