プロテインって何?
日本語ではタンパク質という意味で、英語ではプロテイン(protein)と言います。
語源は、ギリシャ語のプロティオス(proteios)で、「最も重要なもの」という意味です。
言葉の意味からも、たんぱく質が私たちの身体にとって大切なものだということがうかがえます。
食品でいうと肉、魚、大豆製品、卵、乳製品などに含まれており普段の食事から摂取できる栄養素ですね。
タンパク質は筋肉だけでなく、内臓や皮膚、髪の毛、爪に加えて、ホルモンやへモグロビンなど様々な形で身体の中に存在しています。
但し、日本ではプロテインと言えばプロテインサプリメントを指すのが一般的なので、ここではプロテインサプリメントについて述べていきたいと思います。
プロテインサプリメントはどんなものがあるの?
形状による種別にはこの様なものがあります
①パウダータイプ(水に溶かして飲むタイプ)
②プロテインバー(スティック状で齧って食べます)
③プロテインゼリー(飲むゼリーやスプーン食べるようなものです。病院ではこのタイプが多いです)
④プロテインドリンク(最初から液体でコンビニ等で売っています)
原材料別のプロテインの種類とは?
この様に大きく分けてプロテインには動物性と植物性の2種類があるのがわかります。
それではここからは順番により詳細に紹介していきたいと思います。
①ホエイプロテイン
ホエイプロテインとは牛乳が原料のたんぱく質です。
別名『乳清』と呼ばれるもので牛乳からカゼインや脂肪分を取り除いた水溶液を指します。
ヨーグルトを静かに放置しておくと上部に液体が溜まる事がありますが、この液体もホエイです。
ホエイプロテインの特徴
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BCAAの含有量が25~26%と多い
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免疫向上に効果のあるホエイペプチドが多い
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吸収が早い(30分~3時間)
BCAAとは、運動時の筋肉でエネルギー源となる必須アミノ酸のことです。
その中でもバリン、ロイシン、イソロイシンの総称を指します。
この3つのアミノ酸は、枝わかれするような分子構造をしているため、BCAA(Branched Chain Amino Acid;分岐鎖アミノ酸)とよばれています。
BCAAとは
Branchedは木の枝や分岐という意味で、Chainは鎖、Acidは酸なので分岐鎖アミノ酸となります。
BCAAはタンパク質の構成成分として15~20%含まれており多くのBCAAは骨格筋などのタンパク質として体内に保有されています。
動物はタンパク質を食べることで多くのBCAAを摂取することができます。体内に取り込まれたBCAAの多くはタンパク質の材料として利用されますが、細胞内外にタンパク質に取り込まれない遊離の状態でも存在します。
BCAAは古くからタンパク質の合成を促進し、分解を抑制することが明らかにされています。特にロイシンは、mTORC1(mammalian target of rapamycin complex 1)を介してタンパク質の合成を促進すると同時に分解(オートファジー)を抑制することが明らかにされています。
また、哺乳動物にとってBCAAは必須アミノ酸であることから、体内に分解系のみ存在しています。
必須アミノ酸とは
体内で合成することが出来ないアミノ酸を必須アミノ酸といいます。そのため、この必須アミノ酸は食事で摂取する必要があります。
近年では、筋タンパク質中に非常に多く含まれていることから、筋にとって非常に重要なアミノ酸となります。
ホエイプロテインは水溶性なので吸収スピードが速いことが特徴です。
吸収速度が速いということは、血中のアミノ酸濃度を上げる素早く上げるということなので運動中の筋分解を抑制し筋タンパク合成を促進します。
また吸収速度の速さから運動後の筋タンパク質分解・合成能が共に高くなっているときに飲むことで、合成能が上回り筋肥大しやすい特徴もあります。
運動や炎症などにより血中のアミノ酸濃度が低下すれば、筋タンパク質を分解し血中にアミノ酸として放出します。
そのため空腹時の運動や慢性炎症は筋肉を痩せさせてしまいます。
しかし、ホエイプロテインは吸収速度が速いので運動中及び運動後の急速なアミノ酸補給に適しています。
また、BCAAの濃度も多いことから筋疲労を起こしにくくする働きもあります。
飲むタイミング
運動中や運動直後に飲みましょう
ホエイプロテインの精製方法による種類とは
ホエイには4つのタイプがあります
この精製方法はそれぞれがフィルトレーション(膜;フィルターでろ過)して過熱して乾燥した粉にします。
➀WPC製法(コンセントレート)
ホエイプロテインコンセントレートは、ウルトラフィルトレーションという膜で濾過することで、ラクトースと脂肪の大部分を除去します。
特徴としてはタンパク変性が少なく、特に免疫を高める成分(GMP等)を変性させません。
通常のホエイプロテインと比較し非常に濃縮されています。コンセントレートは集中という意味で使われ、WPCの場合は「濃縮乳清タンパク質」の略で、乳糖が残りやすい状態になっています。
乳糖不耐症を持つ人にとっては、お腹が張ってごろごろする原因となる場合もありますが、乳清に含まれるビタミンやミネラルをできるだけ多く摂取することができるメリットがあります。
タンパク質含有率が約80%の製品はこの製法で作られていることが多いようです。価格も安いです。
ラクトースは別名、乳糖といいガラクトースとグルコースの2糖からなり、医療用の甘味料などにも使われます。小腸でラクターゼにより分解されます。
乳糖不耐症は日本人の3人に2人いると言われており、分解酵素のラクターゼが少ないことで乳糖(ラクトース)を分解できず下痢を引き起こします。
北欧系以外の人はほとんどがラクトースが不足しており成人では350ml以上の牛乳でお腹がゴロゴロします。
ヨーグルトではあまり起きません。これは中の乳酸杆菌によりラクターゼが産生されるため症状が起きにくいのです。
②WPI製法(アイソレート)
ホエイプロテインアイソレートはマイクロフィルトレーションというウルトラフィルターよりもさらに細かい膜を通してろ過をします。
ホエイやコンセントレートをさらに加工して、より純粋なホエイプロテイン源であるWPIが作られます。
更に、ろ過を経て炭水化物と脂肪の大部分を除去します。
その結果、WPIは通常≥総重量の90%の濃縮タンパク質です。
ホエイプロテインアイソレートは、WPCよりも1回分あたりのタンパク質が多いため、より純粋な形のタンパク質です。
アイソレートは分離という意味で、WPIは「分離乳清タンパク質」の略で、タンパク質以外の成分はほぼ除去されて高濃度のホエイタンパクが作られます。
タンパク質含有率も約90%と高く、お腹の不調になりやすい乳糖の含有率も非常に低いため、乳糖不耐症の方にも適した製法といえます。
乳糖不耐症の方にとっては非常に強い味方であり、ハードトレーニングをするボディビルダーなどは、その筋肉量を保持するために多くのタンパク質を必要としますが、その際に乳糖も多く摂取してしまうことがネックになりますので、このプロテインを選びましょう。ただし価格は高いです。
イオン交換法という方法でもWPIは作ることが出来ますが、イオン交換の過程でタンパク質が変性したり免疫強化に重要なペプチドが失われてしまいます。 なので、イオン交換法のアイソレートはタンパク質含有率が高いだけのプロテインだといえます。
③WPH製法(ハイドロライズド)
WPIよりも更にろ過され、最終的に90~95%の純粋なタンパク質であるタンパク質源が残ります。
ハイドロは水のことを指し、WPIは「加水分解乳清タンパク質」の略で、微生物に含まれる酵素などを使いWPCをペプチド状態(アミノ酸が数十個つながった状態)に分離したものです。
これらのペプチドは消化しやすく、血流にすばやく吸収されます。WPHはタンパク質含有率が約95%と最高濃度となり、吸収スピードも最速となります。
ただし価格は一気に跳ね上がります。
④CFM製法(クロスフロー精密濾過)
イオン交換プロテインよりも総たんぱく質含有率は1〜2%低く、脂肪とラクトースは殆ど含まれません。
イオン交換プロテインと異なり、CFMホエイプロテインは少なくとも99%変性がなく、大切なペプチドも全部保存されています。
CFM製法は、マイクロフィルトレーションにセラミックフィルトレーションという2重の膜を使いろ過することでWPCとWPIの両方の利点を残し、必要な栄養素を残しながら精製するプロテインです。
若干の脂肪や乳糖は残ってしまいますが、ビタミンやカルシウムなどの有益な成分を同時にとりつつ、吸収スピードも速いのが特徴です。
②カゼインプロテイン
カゼインは牛乳に含まれるたんぱく質のうち約8割を担うたんぱく質です。
下の図は牛乳の組成を表しているのですが、牛乳全体の3.3%のみがタンパク質で、ほとんどは水分と脂肪分などだと分かります。
そのため牛乳を飲むよりもプロテインを飲んだ方が如何に効率よくタンパク質を摂取できるか分かりますね。
カゼインプロテインの特徴
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吸収スピードが遅い(約7時間)
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BCAAはやや少なめ(約19%)
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筋肉の分解をおさえる
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ホエイよりも、やや高値
カゼインは吸収速度が遅いのが特徴です。
カゼインは不溶性のタンパクで水に溶けません。
また、カゼインにはカゼインミセルという細かな粒子があり、酸性になると凝固する特徴があります。
ヨーグルトにある乳酸菌が産生する乳酸が牛乳の中のカゼインを凝固させるので固まるのです。
固まるということは消化工程に時間がかかるので、水溶性のホエイに比べ吸収までに時間がかかるのです。
BCAAはホエイに比べ少ないのですが、なぜ筋肉の分解を抑制できるのでしょうか?
それは吸収速度の遅さにあります。
ゆっくり吸収するということは長時間にわたり血中のアミノ酸濃度を高く維持できるので、筋肉を分解する必要がなくなり筋分解を抑制できるということです。
この特徴から睡眠時間の間にゆっくりと血中アミノ酸濃度を高く保ち筋肉の分解から守ってくれるのです。
腹持ちもよく朝食に飲むのも効果的です。
牛乳のタンパクではカゼインがホエイに比べ少ないのでやや割高となります。
飲むタイミング
吸収速度が遅いことから運動前に飲むことや、就寝前、トレーニングの休みの日に飲みましょう。朝食時にも有効です。
牛乳のトリビア
カゼインの話の中で細かい粒子のカゼインミセルがあると書いていましたよね?
あのカゼインミセルが光を乱反射して牛乳は白く見えるのですが、ミセルからミネラルを抜くと分離してミセルが細かくなるのですが、なんと反射が弱くなり、黄緑色になるそうです。
怖ろしいですね(笑)味は一緒です(;^ω^)
③クリケットプロテイン
クリケットプロテインは最近になって出てきた新しい種類のプロテインです。
インセクトプロテインという・・いわゆる昆虫ですね。
クリケットはコオロギです。
苦手な方は飛ばしてもらって結構です。
クリケットプロテインの特徴
BCAAの含有量はホエイやカゼインなど他のプロテインに比較しても最高値をたたき出しています。
クリケットパウダーは、100gあたり牛の約3倍のタンパク質を含み、ビタミンやアミノ酸など、25種の美容成分も入っているとのこと。
健康面もしっかり意識されていますね。
飲むタイミング
ホエイプロテインと同様です。運動中や運動直後に摂取しましょう。
④エッグプロテイン
エッグプロテインは動物性タンパク質で、卵を原料に作られたタンパク質です。
卵の白身の部分は、タンパク質が豊富で筋肉の増強や肥大をしていくために非常に効果的です。
その白身成分をプロテインにしたものとなります。
全卵の方が筋肥大に有利という研究もありますが、脂質などをカットする目的でプロテインなどでは卵白の部分だけを使って作るエッグホワイトプロテインが一般的です。
また、ホエイプロテインに比べて脂質が少ない低脂肪プロテインで、乳糖が含まれていないのが特徴です。
そのため乳糖不耐症の多い日本人には量を摂取しても下痢を起こさないメリットがあります。
また「アルブミン」を多量に含んでいるのも特徴です。
デメリットは溶けにくい、価格が高い、商品数がまだ少ないなどが上げられます。
プロテインは価格との勝負ですからね。
飲むタイミング
動物性タンパク質の特徴である吸収速度も速く、ホエイと同様に筋トレ直後や起床直後に飲むのがお勧めです。
エッグプロテインの特徴
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動物性タンパク質
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タンパク質含有率は約80%
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BCAAやアルブミンが豊富に含まれている
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吸収スピードは速め(1時間~3時間)
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脂質、糖質、コレステロールが少ない
アルブミンとは
アルブミンの名前はラテン語のalbumen(卵白の意味)に由来しています。そのまんまですね。
体内のアルブミン総量の約6割は血管外に分布し、残りの約4割が血液中を循環しています。
血液中のアルブミンは、『血清』と呼ばれる液体成分に含まれるため、血液検査で測定するアルブミンは『血清アルブミン』とも呼ばれます。
アルブミンの役割は、大きく分けて2つあります。
1.血液の浸透圧を調節
2.種々の物質と結合し、それぞれの目的の場所へ運搬します。
そのためアルブミンを摂取することは全身に栄養を運ぶ力を増し健康増進に効果的です。
⑤ビーフプロテイン
原料に牛肉を利用した動物性プロテインです。
アメリカでは通常廃棄されてしまう部位を使って作られています。
そう考えると、これもSDGsと言えますね。
以前までは海外製品ばかりでしたが、最近は日本製も出てきましたが、取り扱いの種類がもとても少なく高値です。
エッグプロテイン同様に乳糖不耐症の方にはお勧めです。
ビーフプロテインの特徴
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一食分でステーキ約20倍のクレアチンを配合
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一般的なプロテインやサプリメントなどよりも遥かに高いアミノ酸レベル
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脂肪、コレステロールともに0%
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牛肉が材料の為、ビタミンB群が豊富
タンパク質の吸収や筋肉の持久力を支えるビタミンB群、血液の生産に欠かせない鉄分、筋繊維の回復や男性ホルモンの活性化に効果的な亜鉛といった栄養素も豊富に含まれています。
牛ステーキなどを食べた場合に消化・吸収にかかる時間は最低でも5時間以上です。
これは肉の線維が消化に時間がかかるためです。
同様に肉の場合はほぼ60%以上が水分ですので、タンパク質の量的にも吸収速度的にもビーフプロテインは牛肉を食べるよりも優れています。
ちなみにビーフプロテインなら、1時間程度で消化・吸収されると言われています。
また、タンパク質を始めとする牛肉の栄養素を効率良く吸収できるだけではなく、脂肪やコレステロールを心配しなくて良いのもメリットのひとつです。
クレアチンとは
筋肉の収縮を行う際のエネルギー酸性回路には解糖系とクエン酸回路以外にクレアチンリン酸系がありましたね?
この経路で使うクレアチンは解糖系以上のエネルギー産生速度を持ち爆発的な力を与えます。
全力疾走した際に約8秒間はこのクレアチンリン酸系を使用します。
クレアチンの主な作用はこの様なものがあります。
- 筋肉が付きやすくなり、基礎代謝が向上
- 高負荷トレーニングへの耐久力向上
- 持久力の向上
- 運動中の筋肉疲労の緩和
- 筋肉疲労の回復力向上
飲むタイミング
運動前の摂取によってクレアチンが補給されパフォーマンスの向上が期待できます。
⑥ソイプロテイン
ソイは大豆なのでソイプロテインは大豆のタンパク質を抽出して粉にしたものです。
植物性タンパクであり動物性タンパクに比べ消化が遅いです。
基本的に乳酸菌や線維でもそうですが、動物性よりも植物性の方が消化に時間がかかります。
ソイプロテインの特徴
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植物性タンパク質
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吸収スピードが遅い(約6時間)
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グルタミンやアルギニンを多く含む
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大豆イソフラボンが含まれる
植物性タンパク質の摂取は動物性タンパク質に比べガンの抑制効果が高いと言われます。
また多くのダイエットプロテインはこのソイプロテインが利用されます。
これは吸収速度が遅く、腹持ちが良く動物性タンパクに比べ脂質が少ないこともあります。
大豆イソフラボンは女性ホルモンであるエストロゲンの構造と似ており、エストロゲンの代替ホルモンとも呼ばれます。
女性の味方でもありますね。
きな粉っぽさがあるのが好き嫌いの分かれ目ですが、個人的には好きですね(;^ω^)
イソフラボンにはLDLコレステロールを低減させる働きがあると言われ、より健康食のイメージがありますね。
参考
Taku K, Umegaki K, Sato Y, Taki Y, Endoh K, Watanabe S. Soy isoflavones lower serum total and LDL cholesterol in humans: a meta-analysis of 11 randomized controlled trials. Am J Clin Nutr. 2007 Apr; 85(4): 1148-56.
飲みタイミング
朝食時や就寝前に飲むか運動前に飲むのも効果的です。
⑦ピーププロテイン
ピーププロテインはエンドウ豆から作られたタンパク質です。
ソイプロテイン同様に植物性タンパク質なので吸収速度は遅いです。
ソイプロテインとの差別化としては同じ豆同士でも大豆アレルギーのある方でも摂取できるということです。
ピーププロテインの特徴
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植物性プロテイン
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低アレルゲン性
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BCAA(必須アミノ酸)が豊富
BCAAの含有量は何とホエイプロテイン並みなのです。
植物性タンパク質の有利点は沢山あります。
日本人には少ないと思いますが、ベジタリアンやヴィーガンにとっては重要なので、植物性プロテインの種類が増えることは世界中のトレーニーにとって大切なことですね。
飲むタイミング
ソイプロテインと同様です。
⑧ライスプロテイン
ライスプロテインとは、お米を粉砕してタンパク質を抽出した植物性のプロテインです。
種類は玄米から作られたプロテインと白米から作られたプロテインに分かれます。
アレルゲンがほぼゼロなので安心して飲める植物性タンパク質です。
飲む以外にもお菓子や料理に混ぜるという使い方もできます。
ライスプロテインの特徴
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米が原料であるのでほぼアレルギーが起きない
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ビタミン・ミネラル・食物繊維などが豊富
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消化しやすく腸にも優しい
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お米なので炭水化物(糖質)は多め
飲むタイミング
栄養価は少なく、朝食時に飲むのがお勧めです。
最後に
ここまで読んで下さってありがとうございます(;^ω^)
本当に色々な種類のプロテインがありますね。
普通はマッチョなビルダーやスポーツマンが飲むイメージですが、健康的なイメージにより最近は一般人の方や女性にも多く飲まれていると思います。
最近はプロテインブームですからね(;^ω^)
この記事からどんどんとプロテインや筋肉についての記事も増えていくと思います。
気になる方は今後も読んでいただけると嬉しいです。