物理療法とは
理学療法の治療手段には主に『運動療法』と『物理療法』の二つで構成されています。
「理学療法士及び作業療法士法」第2条には「身体に障害のある者に対し、主としてその基本的動作能力の回復を図るため、治療体操その他の運動を行なわせ、及び電気刺激、マッサージ、温熱その他の物理的手段を加えることをいう」と定義されています。
主に運動療法が理学療法のメインであり物理療法は前処置などの補助的役割が多かったですが、昨今の物理療法の治療効果は運動療法との併用で大幅な治療効果の向上が見込めます。
その効果には痛みの鎮静化,組織伸張性の向上,筋再教育,筋力強化,創傷治癒など幅広い効果が期待できます。
温熱療法(Thermo therapy)
熱、電磁波、超音波などのエネルギーを生体に供給し、最終的に熱エネルギーが生体に加わることで循環の改善や疼痛の軽減などの生理的反応を引き起こす治療法が温熱療法である。温熱療法は、熱の伝わり方から伝導熱、放射熱、エネルギー変換熱に分けられる。伝導熱はホットパックやパラフィン浴のように直接生体に熱が伝導します。放射熱は、赤外線のように物体から放出される熱源が気体などを通してもしくは直接空間を電磁波として生体に加わります。伝導熱や放射熱は生体に直接供給することにより温熱効果が得られるのに対しエネルギー変換熱は超短波や超音波のエネルギーを生体内で熱エネルギーに変換することで温熱効果を得ます。
伝導熱は単純に熱が伝わるので接触面積に大きく左右されます。また比熱や熱伝導率が影響します。放射熱は熱源との距離や照射角度によって熱の吸収が変化します。直接触れないので圧力が加わらないメリットもあります。エネルギー変換熱は生体内での熱変換なので周囲に熱を放射しません。また身体内部で熱が発生するため深達率が高く深部筋が温められます。
寒冷療法(Cryo therapy)
寒冷療法とは、治療の目的で身体あるいは、その一部に寒冷刺激をあたえることです。また寒冷療法を一連の機能回復訓練と組み合わせて身体に適用する方法はとくに寒冷運動療法(cryokinetics)とよばれる。医学の分野では、はるか紀元前の昔から温熱とともに寒冷が痛みの軽減や筋緊張の緩和という治療目的で用いられてきました。
医聖ヒポクラテスが、外傷の急性期には寒冷をすすめていたのに対してGalenは、ぬるめの湯がより適していると述べてこれに対抗する見解を述べています。それ以来、今日まで寒冷と温熱の臨床的有用性に関する議論は続けられてきたが残念ながらこの種の問題は現在でも決定的な結論を出すに至っていません。
ところが近年、寒冷療法に対する生理学的検討が詳細に行われその実態も少しずつ明らかになってきました。寒冷療法は一般に熱伝導の形態により①伝導冷却によるもの②対流冷却によるもの③気化冷却によるものの3つに大きく区別できます。
伝導冷却は伝導熱と同様です。熱エネルギーは高いところから低いところへ移動するので、体温よりも高いか低いかでこの両者は決定されます。主に氷嚢などでが代表的です。
対流冷却に関しては熱拡散によって温度を低減させます。お風呂をかき混ぜて熱を分散させることでぬるくするようなものです。熱伝導が小さくても流体自体が運動しているので早く冷める現象です。
気化冷却は水分が気化した際にその体積が膨張するため気体内の分子の衝突が減少し熱エネルギーを低減させます。手を水にぬらして息を吹きかけると水が蒸発するので涼しく感じるのと原理は同じです。
光線療法 Photo therapy (Light therapy)
紫外線は波長180〜390nmに分布する不可視光線で、強力な光化学効果を有するところから化学線とも称され、昔からさまざまな皮膚疾患の治療に用いられてきた。紫外線は太陽光線に多量に含まれるところから、この太陽光線をそのままの形で治療に利用する日光療法が20世紀初頭まで用いられてきたが、その後人工紫外線療法がこれにとって替わるようになってから多くの皮膚疾患に局所治療として、あるいはくる病などの全身治療の1つとして急速に発展していった。現在では化学療法の発展で紫外線の必要性は以前ほど高くはないが、それでも抗生物質が効果を示さない褥瘡の治療では依然重要な治療手段である。紫外線の効果を治療学的立場からみると紅斑生成、色素沈着、殺菌作用、抗くる病効果、そしてその他の新陳代謝に対する作用をあげることができる。レーザーとは人間のつくりえた唯一の人工光線といわれ、また今世紀三大発明の1つともいわれている。物理療法の範職として用いられるレーザーは,100mW以下であり、このような低出力エネルギーレーザーを低反応レベルレーザー治療(low reactive level lasertreatment:LLLT)と表現する。
水治療法(Hydro therapy)
hydrotherapy(水治療法)という言葉はギリシャ語のhydro(水)とtherapia(治療)という語に由来する。水治療法の概念は古代ギリシャ、ローマ時代からすでに存在し広く用いられていた。西洋医学で治療の一方法としてその価値が認められ、セラピーとして定着してきたのは今世紀の30年代からである。以来、湯治効果が広くヨーロッパで用いられるようになった。日本では「温泉療法」「湯治」の概念から入った。当初は水の静水カ学的効果と温熱を利用したものであったが、これに寒冷が加わり昨今では「水浴」の効果と水中運動の複合治療による相乗効果を目的として、また運動療法の前処置として用いられることが多い。渦流浴、気泡浴等の単独使用は気分転換、運動不足、肥満、ストレス解消を目的に健常人を対象に普及している。
電気療法(Electrical therapy)
電気療法は従来、ファラディゼーション(Faradization)、ガルバニゼーション(Galvani-zation)の愛称で感応電流療、平流療法が用いられてきた。これらは今日、古典的電気療法として位置づけられている。現代では電気療法は低周波、中周波領域の電磁波を用いた刺激療法として多様な発展を示している。なかでも経皮的末梢神経電気刺激法(transcutaneous electrical nerve stimulation : TENS)、高電圧刺激法 (high voltage stimulation : HVS)、干涉電流療法(interferential current therapy : IFC),治療的電気刺激法(therapeutic electrical stimulation : TES), 機能的電気刺激法(functional electrical stimulation : FES),骨電気刺激法などが臨床技法として確立されつつある。
力学的機器を用いた治療法(Treatment using by mechanical equipments)
メカノセラピー(mechanotherapy)にはマッサージや牽引療法それにCPM(持統的他動運動削練)が含まれる。特にCPMは,1970年代以降、整形外科の領域で術後の治療期間を大きく短縮し、かつ効果的に関節可動域訓練を達成できるという点で大きな関心が寄せられた治療法である。機械を用いた治療法は労力の面からは医療従事者にとっては大変便利である。電動マッサージに関しては痙性の一時的な緩和に使用することも可能であり脳卒中の治療にも使用される。
主な力学的治療
・牽引療法
・CPM(持続的他動運動訓練)
・マッサージ
バイオフィードバック療法(Biofeedback therapy)
バイオフィードバック療法は、患者が制御すべき生体反応を光や音などのとらえやすい情報に変換しそれらの情報を意識、認知することにより目的とされる反応を引き出す治療法である。これらの反応には筋収縮力の増大、筋協調性改善、姿勢の調節、筋弛緩などの体性神経系の反応や、血圧、脈拍などの自律神経系の反応の調節さらに脳波の調節などがあげられる。対象が運動系であれば筋電図、関節可動域、足圧力などがバイオフィードバックの指標とされる。自律神経系の反応であれば皮膚温、心拍数、呼吸数などがその指標となりリラクゼーションを目的とした脳波も指標となる。自律神経系のバイオフィードバックは心理学などの分野でも応用されている。
主なバイオフィードバック療法
・筋電図バイオフィードバック療法
・視覚性フィードバック
・その他バイオフィードバック