褥瘡

褥瘡とは

褥瘡(Pressure Ulcer / Pressure Injury)とは、骨突出部と体外の硬い表面の間で軟部組織が持続的に圧迫されることで生じる壊死や潰瘍のことです。圧迫だけでなく剪断力(ずれ力)や摩擦も外力として関与し、血流が阻害されて皮膚の発赤から深部組織の損傷まで多様な病態として現れます。いわゆる床ずれと同義で、長期臥床者・脊髄損傷者・高齢者に好発するため、予防と管理は多職種連携の重要課題です。

どこでみるのか

急性期病院から在宅・介護施設まで幅広く遭遇します。長期臥床・車椅子生活・感覚障害(脊髄損傷・脳卒中後)・低栄養の患者で好発し、仙骨部・踵部・坐骨結節部・大転子部など骨突出部に生じます。患者訴えとしては「痛くないのに赤くなっている」「傷が治らない」といった形で現れ、感覚障害がある場合は本人が気づかないことも多いです。リハビリテーションでは、発生予防から治療中の運療、再発予防までセラピストの関与が求められます。

何をみているのか

着眼点は、①発生部位(骨突出部か、医療機器による圧迫か)、②深達度とステージ分類(発赤・皮下脂肪・筋肉・骨まで)、③外力の種類(圧迫・剪断力・摩擦のどれが支配的か)、④リスク要因(活動性・可動性・栄養・湿潤・知覚)、⑤創の状態(滲出液・壊死組織・感染兆候)、⑥周囲皮膚の状態です。深部組織損傷は表面からは判断しにくいため、「発赤が指で圧しても白くならないか」など早期変化を捉える視点が観察の出発点です。

臨床でどうみるか

全身観察で発生リスク(活動性・可動性・栄養状態・知覚)を把握し、局所観察で好発部位の発赤・皮膚損傷の有無を確認します。すでに褥瘡がある場合は、DESIGN-R®などの評価スケールで深達度・滲出液・サイズを記録し経過を追います。リハビリ場面では、訓練時の姿勢・支持面の圧分布、シーティングやポジショニングの適否、車椅子でのずれの有無を観察し、自力体位変換能力の評価を行います。創部への力学的負荷(圧迫とせん断力)をコントロールする物理的アプローチがセラピストの役割です。

評価で何をみるか

褥瘡の評価では、リスクと病態の両面を捉える視点が重要です。

  • リスクアセスメント - ブレーデンスケール(知覚・湿潤・活動性・可動性・栄養・摩擦)で予測する
  • 状態評価 - DESIGN-R®2020の7項目で重症度と治癒過程を評価する
  • 深達度の判定 - 発赤・皮下組織・筋・骨までの損傷の深さを確認する
  • 外力の分析 - 圧迫・剪断力・摩擦のどれが支配的かを推定する
  • 栄養と全身状態 - 低栄養・低蛋白血症・脱水の併存を確認する
  • 自力体位変換能力 - 自分で圧を逃がす能力の有無を評価する

ブレーデンスケールは「できそうか」の予測、DESIGN-R®は「できた褥瘡の程度」の評価と役割が異なります。リスクと状態を別々に評価し、外力の分析結果をポジショニングやシーティングの設計に直結させることが実践の要です。

臨床でよく出る問題

褥瘡を抱える患者では、以下の問題が生じます。

  • 治癒の遅延 - 圧・せん断の除去が不十分で創が治らない
  • 再発の繰り返し - 治っても同じ部位で再発する
  • 訓練と創傷管理の矛盾 - 歩行・座位訓練と除圧の両立の難しさ
  • 感染の合併 - 創からの感染・骨髄炎への進行
  • 拘縮・筋力低下 - 体位変換中心の生活による二次障害
  • 患者・家族の理解不足 - 予防行動が定着しない

これらは相互に影響し合い、管理を難しくします。活動を減らすだけの免荷は廃用を招くため、「力学的負荷をコントロールしながら活動を最大化する」設計を多職種で共有し、患者教育を含めて悪循環を断ち切ることが、評価と介入の両方に直結します。

起こりやすい要因

褥瘡をもたらす背景要因は以下の通りです。

  • 活動性・可動性の低下 - 自力で体位変換できない状態
  • 知覚障害 - 脊髄損傷・糖尿病性神経障害などで不快感に気づけない
  • 低栄養・低蛋白血症 - 組織の耐圧性と修復力の低下
  • 湿潤・失禁 - 皮膚の脆弱化と感染リスクの増大
  • 低血圧・貧血・浮腫 - 組織への酸素供給の低下
  • 医療機器の圧迫 - チューブ・マスクなど機器による損傷

褥瘡の発生は局所の外力だけでなく、全身状態(栄養・循環・知覚)と行動(活動・体位変換)の組み合わせで決まります。局所対策と全身対策を並行して進める包括的なアプローチが改善の近道です。

注意したい症状

褥瘡の経過で見逃せないサインがあります。

  • 圧しても白くならない発赤 - 深部組織損傷の初期所見
  • 創の拡大・滲出液の増加 - 悪化の兆候
  • 炎症の4徴(疼痛・発赤・腫脹・熱感)と発熱 - 感染の兆候
  • 壊死組織の付着・悪臭 - 創傷治癒の遅延
  • 骨が露出する深達度 - 重症化したステージ

感染や深部組織損傷は急速に悪化しうるため、観察で異常を認めた場合は訓練を調整し、直ちに医師・看護師へ報告することが安全確保の要です。

対応の基本

褥瘡への対応は、除圧・体圧分散と活動の両立が軸です。

  • 体位変換・ポジショニング - 定期的に圧を逃がす体位(30度側臥位など)を設計する
  • 体圧分散 - マットレス・クッションの選定とシーティングの工夫
  • 摩擦・ずれの軽減 - 体位変換技術や滑りやすい寝具でせん断力を減らす
  • 栄養・全身管理の支援 - 栄養チームと連携し組織の修復力を高める
  • 活動の最大化 - 廃用を防ぐ運動療法と免荷の両立を設計する
  • 患者・家族教育 - 自力体位変換技術と観察の重要性を共有する

褥瘡ケアは「除圧」と「活動」を矛盾なく両立させる点に工夫の核心があります。セラピストはポジショニング・シーティング・自力体位変換能力の獲得を通じて、予防から治療・再発予防まで貢献することが最重要です。

ひとことで言うと

褥瘡とは、骨突出部への持続的な圧迫・剪断力・摩擦により生じる壊死や潰瘍で、いわゆる床ずれです。リスク評価と状態評価を併用し、体圧分散・体位変換・栄養管理を多職種で組み合わせ、活動を減らさず除圧することで予防と治癒促進を図ります。

関連用語

  • 圧迫
  • 剪断力
  • DESIGN-R
  • ブレーデンスケール
  • 体位変換
  • 体圧分散
  • 骨突出部

参考文献・出典

関連記事

  • 体圧分散とは
  • 体位変換とは
  • 圧迫性壊死とは
  • 低栄養とは
  • 脊髄損傷とは

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