SIAS

SIASとは

SIAS(Stroke Impairment Assessment Set:脳卒中機能障害評価法)とは、脳卒中によって生じた機能障害を9つの領域・22項目・76点満点で定量化する評価法のことです。千野直一らにより日本リハビリテーション医学会で提唱され、麻痺側運動機能・筋緊張・腱反射・感覚・関節可動域・疼痛・体幹機能・視空間認知・言語機能・非麻痺側機能を、検者一人で約10分程度の短時間で包括的に評価できます。機能障害(impairment)レベルの評価として、日常生活動作を評価するFIMと対になる指標です。

どこでみるのか

回復期リハビリテーション病棟や急性期病棟で、脳卒中患者の入棟時・退棟時・経時的な評価として実施されます。理学療法士・作業療法士・言語聴覚士がチームで共有する初期評価の標準的な選択肢の一つで、患者訴え「動かない」「疲れて動けない」だけでなく、感覚・高次脳機能・非麻痺側まで含めた全体像を数値で捉える場面で用いられます。

何をみているのか

着眼点は、①機能障害の全体像を点数化する視点(運動・感覚・高次機能・非麻痺側を含む)、②各項目が単一のテストで評価できる簡便性、③麻痺側だけでなく非麻痺側機能も評価対象にすること、④筋緊張・腱反射も運動機能と併せて点数化することです。脳卒中患者がリハビリテーションで回復すべき機能を多面的に捉え、チームで共通の言語として共有できることがSIASの設計思想です。

臨床でどうみるか

検者一人で、意識・構音・視野・眼球運動・顔面麻痺などの全身項目から、麻痺側運動機能(上肢近位の膝・口テスト、上肢遠位の手指機能テスト、下肢近位・遠位テスト、体幹テスト)へと進み、筋緊張・腱反射・感覚・関節可動域・疼痛・体幹・視空間認知・言語・非麻痺側機能を順次評価します。運動機能のテストは数回繰り返して最良値を採用する項目が含まれます。評価は入棟時と一定間隔で繰り返し、点数の推移で回復過程を追跡します。

評価で何をみるか

SIASの評価では、得点の構造と向きを正確に理解する視点が重要です。

  • 9領域・22項目・76点満点 - 各項目を0~5点または0~3点で採点する
  • 麻痺側運動機能テスト - 膝・口テスト(0=全く動かない~5=正常)など
  • 筋緊張・腱反射 - 運動機能と併せて得点化し、正常な状態が高得点となる
  • 非麻痺側機能 - 全身能力の下支えとして健側も点数化する
  • 高次脳機能 - 視空間認知・言語を含め麻痺以外の障害を捉える
  • 経時的な推移 - 同一の採点基準で繰り返し、回復過程を追跡する

運動点数はMMT(徒手筋力テスト)とは採点基準が異なり、そのまま読み替えないことが重要です。得点の向き(高得点=正常)を確認し、FIMなどのADL評価と併用することで、機能障害と能力の両面から回復を捉えられます。

臨床でよく出る問題

SIASの実施・解釈には、現場特有の課題があります。

  • 得点の向きの誤解 - 筋緊張・腱反射の採点基準で減点と誤解しやすい
  • MMTとの混同 - 運動項目をMMTの感覚で解釈する
  • 評価者間のばらつき - テストの実施方法で点数がずれる
  • 意識障害・失語・無視 - 指示が通らず一部の項目が評価できない
  • 疼痛・関節拘縮の影響 - 疼痛が運動テストの得点を下げる
  • 実施時間の調整 - 状態が悪い患者では全身評価が一度にできない

これらは相互に影響するため、採点基準の統一と訓練による検者間の合わせが信頼性の要です。評価できない項目は無理に採点せず理由を記録し、可能な項目から順に進める柔軟さが必要です。

起こりやすい要因

SIASの得点に影響する背景要因は以下の通りです。

  • 脳卒中の重症度・病巣部位 - 麻痺・感覚・高次機能の障害度を左右する
  • 意識レベルの変動 - 日内変動で得点が変わりやすい
  • 失語・半側空間無視 - 指示の理解と遂行を妨げる
  • 関節痛・浮腫 - 運動テストの実施を制限する
  • 評価時期の不統一 - 経時比較ができなくなる
  • 体調・疲労 - 評価前の活動量で得点が変わる

評価結果は患者の状態と評価条件の両方で決まるため、得点だけでなく実施時の状況を記録に残すことが解釈の信頼性を支えます。状態変動の大きい患者では評価の時間帯を統一する工夫も有用です。

注意したい症状

評価の実施・解釈で注意すべきサインがあります。

  • 意識レベルの低下 - 評価を中断し医師へ報告する
  • 評価中の疲労・息切れ - 状態に応じて分割して実施する
  • 明らかな疼痛 - 疼痛のあるテストは中止し対応を検討する
  • 転倒リスク - 体幹・下肢テストでは安全を確保する
  • 症状の急変 - 脳卒中の再発の可能性として対応する

評価は患者への負担を伴う介入であり、安全性の確保が前提です。実施前に体調を確認し、中止基準を事前に確認しておくことで、評価そのものが二次的な悪化を招かない設計にします。

対応の基本

SIASの結果は、チームの評価共有と治療設計に活用します。

  • 経時的な評価と記録 - 同一基準で繰り返し回復過程をチームで共有する
  • FIMなどとの併用 - 機能障害とADLの両面から患者を捉える
  • 評価結果の治療への反映 - 弱点の項目に応じてプログラムを構成する
  • 予後予測の補助材料 - 単独で判断せずFIM・年齢・発症前ADLと組み合わせる
  • 患者・家族への説明 - 得点の推移で回復を分かりやすく伝える
  • 検者間の合わせ - 訓練と採点基準の確認で評価の信頼性を保つ

予後予測は「言い切る」ためでなく「準備する」ために行う姿勢が重要です。評価結果を1回の数値で終わらせず、治療計画と目標設定、効果判定のサイクルに組み込むことが最重要です。

ひとことで言うと

SIASとは、脳卒中の機能障害を9領域・22項目・76点満点で定量化し、検者一人で短時間に包括的に評価できる評価法です。FIMなどADL評価と併用し、経時的な点数の推移をチームで共有することで回復過程の把握と治療設計に役立てます。

関連用語

参考文献・出典

関連記事

  • FIMとは
  • 脳卒中とは
  • 片麻痺とは
  • Brunnstromステージとは
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