感覚障害

感覚障害とは

感覚障害(sensory disturbance)とは、感覚の伝導路(受容器から末梢神経、脊髄、大脳まで)のいずれかが障害され、感覚の低下・消失・過敏・異常が生じる病態です。感覚は表在感覚(触覚・痛覚・温度覚)、深部感覚(位置覚・運動覚・振動覚)、複合感覚(二点識別覚・立体覚)に分類され、障害部位により末梢神経・脊髄・脳でそれぞれ特徴的なパターンを示します。感覚障害は運動障害がなくても転倒・外傷・ADL障害を招くため、リハビリテーションでは運動評価と同様に重要な評価項目です。分布と種類から障害部位を推定することが臨床判断の基本となります。

どこでみるのか

神経内科・整形外科・脳神経外科・リハビリテーション科・糖尿病内科などで日常的に遭遇します。臨床現場では、①手足のしびれ・感覚低下を主訴とする外来、②脳卒中後の麻痺側の感覚障害、③糖尿病性ニューロパチーの足の感覚低下、④脊髄症・脊髄損傷の感覚レベルの確認、⑤火傷・外傷の既往がないのに傷が増える例への対応などの場面で感覚障害が問題となります。患者訴えは「しびれる」「感覚が鈍い」「物がつかみにくい」「足の裏がはわない」「熱いのに気づかない」などで、感覚低下は本人に自覚が乏しいことも多いため、観察と検査で確実に捉える視点が求められます。

何をみているのか

着眼点は、①障害の種類(表在感覚・深部感覚・複合感覚のどれか)、②障害の分布(手袋・ストッキング型、髄節性、半側性)、③感覚レベルの有無(脊髄病変の推定)、④解離性感覚障害(温痛覚と触・深部感覚の乖離)、⑤感覚過敏・異常感覚の有無、⑥左右差・遠近位差、⑦合併する運動障害・反射の変化、⑧感覚障害による機能への影響です。末梢神経障害は遠位から進む対称性の障害、脊髄障害は感覚レベルと解離性、脳障害は半側性の障害が特徴で、分布パターンが障害部位の鑑別を最もよく示します。

臨床でどうみるか

具体的には、閉眼・左右比較を原則に、各感覚を検査します。触覚は綿棒や毛筆で、痛覚はピンで、位置覚は指を動かして答えさせ、振動覚は音叉で、二点識別覚はコンパスで評価します。セムズワインモノフィラメントは触覚の閾値を定量的に判定できる検査です。複合感覚の検査は表在感覚・深部感覚が正常であることが前提となるため、検査の順序に注意します。鑑別では、手足の先から進む対称性の感覚低下は末梢神経障害、乳頭線以下の感覚障害は脊髄病変、半身の感覚低下は脳病変を示唆します。神経伝導検査・MRI・血液検査を組み合わせて原因を確定します。

評価で何をみるか

感覚障害の評価では、種類・分布・影響を確認します。

  • 触覚 - 綿棒・毛筆での軽触の認知
  • 痛覚・温度覚 - ピン刺激・温冷の判別
  • 位置覚・運動覚 - 関節の動きの認知
  • 振動覚 - 音叉での振動の認知
  • 複合感覚 - 二点識別・立体覚の確認
  • 障害の分布 - 手袋型・レベル・半側性
  • 機能への影響 - バランス・ADL・安全

これらは相互に関連します。感覚の種類ごとの結果と分布パターンを組み合わせて障害部位を推定し、転倒リスクとADL障害から介入の優先順位を決めることが、評価を正確にする核心です。

臨床でよく出る問題

感覚障害に関連して臨床で生じやすい問題は以下の通りです。

  • バランス障害・転倒 - 深部感覚障害の影響
  • 火傷・外傷の気づき遅れ - 痛覚低下の影響
  • 褥瘡・潰瘍の進行 - 保護感覚の低下
  • 巧緻運動の低下 - 手指の感覚障害
  • 着衣・ADL障害 - 物のつかみにくさ
  • 感覚性運動失調 - 視覚なしのふらつき

これらは相互に影響します。深部感覚の低下は姿勢制御を損ない転倒を招き、転倒への恐れが活動低下と筋力低下を増幅する悪循環が生じます。痛覚低下がある例では視覚による保護が唯一の防御となるため、感覚障害の有無を確認せずに安全を判断しないことが、問題整理の核心です。

起こりやすい要因

感覚障害をきたしやすい背景には以下があります。

  • 糖尿病 - 対称性の末梢神経障害
  • 脳卒中 - 半側性の感覚障害
  • 脊髄疾患 - 脊髄症・脊髄損傷・腫瘍
  • 末梢神経障害 - 薬剤性・アルコール性
  • 外傷 - 神経の挫滅・切断
  • 加齢 - 感覚閾値の上昇

これらは重複して感覚障害を増強させます。糖尿病患者では深部感覚と保護感覚がともに低下し潰瘍リスクが高く、脳卒中患者では半側感覚障害が麻痺側の使用をさらに減らします。基礎疾患と障害パターンを組み合わせて捉えることが、病態判断の鍵です。

注意したい症状

感覚障害を示唆する見逃せないサインがあります。

  • 急激な感覚障害の出現 - 血管性病変の確認
  • 感覚レベルの存在 - 脊髄病変の緊急評価
  • 膀胱直腸障害の合併 - 脊髄圧迫の徴候
  • 無自覚な火傷・潰瘍 - 保護感覚の低下
  • 運動失調・ふらつきの進行 - 後索障害の確認
  • 感覚過敏・激しい痛み - 神経障害性疼痛

これらはさらに精査と早期対応に直結します。急激な感覚障害や感覚レベルの出現は脊髄・血管病変の緊急評価を要し、無自覚な外傷は二次的潰瘍に進行しやすいためです。感覚障害の変化を経過とともに追い、緊急度を切り分けることが、安全確保の基本です。

対応の基本

感覚障害への対応は、評価・代償・再教育の三層で組みます。

  • 感覚検査の実施 - 種類ごとの定量評価
  • 障害部位の推定 - 分布パターンの解釈
  • 安全確保 - 転倒・火傷・褥瘡の予防
  • 視覚代償 - 視覚による情報補完の指導
  • 感覚再教育 - 反復刺激による再学習
  • 環境調整 - 保護具・住環境の工夫

感覚障害は運動障害と異なり回復が遅く、代償と再教育を並行して進めることが重要です。感覚の低下を前提に安全を設計し、視覚を活用した動作指導で転倒と外傷を防ぎながら、残存感覚を活かした機能維持を図ることが、最も重要な実践です。

ひとことで言うと

感覚障害とは、感覚の伝導路の障害で感覚の低下・消失・過敏が生じる病態です。種類と分布から障害部位を推定し、転倒や外傷を防ぎながら代償戦略を進めることが基本です。

関連用語

  • 表在感覚
  • 深部感覚
  • 複合感覚
  • 解離性感覚障害
  • セムズワインモノフィラメント
  • 感覚性運動失調
  • 脊髄後索

参考文献・出典

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  • 脊髄圧迫とは
  • 糖尿病性ニューロパチーとは
  • 歩行障害とは
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